72'souvenir
1 972年春先、小雪舞うチューリヒの小路のオメガ専門時計店のジェネラルアイテムケースに陳列され、長く留まっていたワタシを、ルッツェルンへの電車旅からやっとの思いで、夕暮れのこの街に帰りついた若いボンビーなヤーパンが見つめていた。じつはワタシを手に入れてしまうと、彼はこの先の旅が厳しく、帰国の運賃すら捻出できるか予測がつかないらしい。
だが、むこうみずな持ち主は決断し、
その夜から、その腕に装着され、海を渡って、極東のこの島国に遥々やって来たのだ。
いろいろ大変だったが、な