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二ヶ月ぶりの面会

約二ヶ月ぶりに洋子との面会が叶った。ちょうど午後三時過ぎ隔離病棟のホールにおやつを食べに集まっていらっしゃる患者さんたちを押し分けるようにナースに付き添われて脚をずりながらも歩いて面会室に。「洋子ちゃん!」やや大袈裟に声をかけてもやはり反応は薄いのだ。じっと瞳を視て探す。どこかにいる筈だと祈るように凝視することはいけないのかな。「ウゥ〜ゔぅ〜」と唸り声が返答であるのか。またいつかの哀しみが僕を襲う。いかんいかん修行が足りんこんなことでは。(修行もしていないのに)ホール中に自分探しの迷える魂の声が聴こえたような気がした。哀しいものでは無いと肝に命じる。病院といっても治薬などない、経年の収容施設かもしれないが、日々お世話してくださるスタッフの方々の労苦を思えば感謝しかない。ほんとうにありがたいことです。妻も僕も等しく大きな愛を受けていると思えるのです。綺麗に爪切りしてもらった可愛い洋子の手を握りしめて、「新しい衣服買い求めてまたすぐくるからね洋子」と。
いつものお店で珈琲とすこぶる優しい味のプリンをいただいて、元気もらって帰路に着いたことでした。
#大場章三
#二ヶ月ぶりの面会

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