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30年前の少年院(7)


今回は夏の事情についてです
当時まだ木造の寮でした
わたしが退院する頃には敷地内で工事をしていて、翌年くらいからは新しい寮ができるようでした
トイレも洋式の水洗になるんだという話だったのでそれは少し羨ましかったです
でも掃除などでそれはそれで不快な事もあったかもしれないなと今は想像します
当時は汲み取りだったのでそれよりはましかもしれません

そして今回は夏の事情ということで前の記事に出てきた歯磨き粉が活躍します


自衛隊との交流


少年院では自傷というものも処罰対象です
そしてその中にはムダ毛処理も含まれます
刃物などはもちろん持ち込めないのでそこで歯磨き粉を使います
わたしは出てからの方が大切なので特に何もしてなかったけど、年頃女子しかいない環境なので中にはとても気にする子がいました

余暇の時間を使って彼女達がせっせとしていたのは、歯磨き粉を指につけて滑り止めにしての眉毛と脇の処理です

バレると困ったことになるので細心の注意を払いつつ、せっせと抜いていきます
とはいえ、そこそこの長さまで育てないと掴めないのでもうほっとけばいいのにと思ったり

それが唯一カミソリでの処理を許される日があります
それはプールの日
そう何度もはなかったと思うけど、プールに入れる日が確か2回くらいあったような?
わたしはどちらも行ってないので細かくは覚えていません
でも何故かその日だけ脇の処理を許可されます

風呂場に行きカミソリを渡されます
流れ作業の様に慌ただしく脇を剃り、傷の有無を先生に見せて完成です

そして翌日、自衛隊のプールに行きます
恐らく少年院側も緊張感のある行事ではないでしょうか?
その時にも脱走事件が起こりました
未遂には終わったけど別の寮の子達が複数で企てていたようで、同室の子達が興奮気味に見た事を教えてくれました

そもそも1,2年程度なのに脱走してどうするのか、失敗すれば延びるだけだし成功したところでその日まで我慢した事が無駄になっていつかは捕まるのに不思議でした
刑期20年くらったとかなら気持ちはわかるけど意味わからん、そうわたしが言った時に同室の子が言いました

「ばっかおめぇ…我慢できねーからここにいんだろよ」

そうでしたー!と笑ったけど色んな事から逃げた人間の集まりなので全然他人事じゃなかったです

自衛隊のプールに行くというので脇を処理、このルール未だによくわかりません
外で草刈りをしているとフェンスの向こうで自衛隊もまた草刈りしてるところに遭遇したりします
会話できるほどの距離ではないけど、向こうが会釈したりするのが見えるくらいの距離です
そうするとイケメンだったかどうかで後でみんなでギャーギャー言います
本当に女子寮という感じでそういう時は騒がしいです

それぞれ地元に男を待たせていたり一緒に逮捕されたり、中には子供がいたりそれぞれの事情を抱えています

わたしは逮捕時にはもう別れていたけど事件当時付き合っていた彼氏がいました
そして彼も共犯として逮捕されています
でも取り調べの中で刑事を通じて渡した手紙で彼は真実を話し、起訴猶予となりました

そんな事も含めてみんなそれぞれの事情などをよく話し、それは少年院という場所とは思えないくらい楽しい時間でした

外での連絡先交換等は固く禁止されていて、それがバレれば退院が遅れます
でも中で色々な事を共有して24時間一緒に生活する中で親友となる事があります
わたし達はどこかに書き残す事ができないので互いの電話番号を必死に覚えました
語呂合わせにしてみたり、電話の番号配置を指で覚えたり、更には保険をかけて住所を覚えたり、とにかく記憶に頼って連絡先を交換しました
薬でバカになってる子も、とにかく必死に覚えて帰ったものでした


余談ですがプールは交流ではなく借りてるだけでしたが自衛隊とは敷地が隣なのかとにかく近くだったので他にも交流がありました
それはクリスマスの慰問です
音楽隊が来てくれて演奏してくれます
とにかく少年院は行事がそれなりに多くて、中には子供時代に学校にろくに行かせてもらえなかった子などもいるのでそこそこ盛り上がります
楽しみがそれしかないとも言いますけど


今のような暑さではなかったけど扇風機だけで過ごした夏の少年院は作業もそれなりに大変で、そして色んなケアができないので臭かったりもします
外ではオシャレが好きだった子などは石鹸を軽く塗ったり、ヘアピンで髪をカールしてヘアピンパーマと呼んでいたりある物だけでも可愛くいようと頑張っていました
髪の結び方はある程度決まっているけどその中でも努力していて微笑ましかったですが、夏の汗で全て台無しになることもしばしばありました

今は思いっきりオシャレを楽しんでくれてればいいなと思います


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