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ライターになった経緯と仕事の取りかた
フリーライターをしています。
と言うと、よくクラウドソーシングの話を振られることが多いのだけど、ざんねんながらそういうサービスは使ったことがない。
仕事依頼のページに載っている仕事がわたしのすべて。すべて記名で、ありがたいことに指名をいただいて記事を書いている。
「すごいですね!」と言っていただけることもあるけども、ぶっちゃけぜんぜん稼げていない。生計が立っていないので、まったくすごくない。単に仕事の取りかたがちがう、というだけだ。
稼げてないのにえらそうに書くのもどうなのよ?とは思いつつ、こういう仕事の取りかたが気になるかたもいると思うので、書きます。まぁ話のタネだとか参考までにどうぞ。
・ライターってなに?
まず、ライターの定義ってなんだろう。
いろいろあると思うんだけど、個人的には「仕事として請け負って書く」というのがライターだと思っている。例えば、新聞記者はあくまでも記者だし、会社員が仕事としてホームページやブログの文章を書くこともあるけど、それはライターって言うとちょっとちがうんじゃないかなぁ、という感じだ。
インターネット上には寄せ書きサイト(※後述)もあるけど、対価が発生しない以上、納品する原稿のクオリティに責任も発生しないでしょ、というのが個人的な思いなので、これに投稿するのもライターとは言わないかなぁ、という気がする。
・ライターになる前のこと
わたしは、2017年の11月にブログを始めた。文章を書くようになってから、じつはまだ2年も経っていない。
もともと、おもしろサイトが好きだった。インターネットにはデイリーポータルZ、オモコロという2大巨頭があるが、わたしはデイリーの影響がつよい。
ブログ開設までの考えかたはこちらに書いてあるので、もし気になったら読んでほしいのだけど、ともかく、自分が「おもしろい」と思う企画やレポートを中心にブログを始めた。
ブログ当時の代表作は「集えおかき!煎餅の楽園が新潟にあった」「「寿司クロワッサン」は本当に流行るのか」「鶴見線ツアーへようこそ。」など。どれも読んでもらえればわかると思うんだけど、いまCRAZY STUDY(クレスタ)で書いている記事とおなじような「おもしろ」や「役に立たない知識」を意識している。媒体が変わっただけで、やってることは変わってないのだ。
デイリーには「自由ポータルZ」という読者投稿コーナーが毎週金曜日にある。この3作はすべて掲載され、一部でちょこっとした話題になったり、ならなかったりした。
そこからCRAZY STUDY(クレスタ)を立ち上げたばかりのじきるうさんに声をかけてもらい、5人目のメンバーとして、ほぼほぼメディアのスタート時から加入することになったのだ。
・クレスタというサイト
クレスタは「おもしろライターが少しだけ稼ぎやすい世のなかをつくる」をミッションに、2018年の1月くらいにできたサイトである。
クレスタは、当時「寄せ書きサイト」だった。
寄せ書きサイトとは、一言で言うと編集長の運営の元、複数名の寄稿者がいるブログのことだ。おもしろウェブメディア界隈では有名なハイエナズクラブや、最近では素人の研究社、ひざかけちゃーはん2、ナンセンスダンスといったサイトも次々生まれ、群雄割拠なような和気藹々のような感じである。各々のおもしろを書く傾向にあり、小型のデイリーやオモコロみたいな感じのイメージをしてもらえばいいと思う。基本的に原稿料は出ない。
ウェブメディアとは何が違うの?って感じだけど、個人的には原稿料の有無で判断している。1000円でも100円でも原稿料が出ればウェブメディアかな、と。上に挙げた寄せ書きサイトの内情を詳しく知ってるわけじゃないので、「うちは原稿料出してるぞ!」ってサイトがあったらごめんなさい。
※これはあくまでわたしの定義であって、クレスタはもちろん、デイリーやオモコロも含めて寄せ書きサイトと扱うかたもいます。
クレスタの場合は2018年の12月から、編集長のじきるうさんが身銭を切るというかたちで原稿料が出るようになった。「基本報酬は安いが、記事公開後一定期間のPVに応じてインセンティブを付ける」という、サイトが賑わえば賑わうほど、編集長の生活が苦しくなるウェブメディアの誕生である。
編集長の生活は心配だが、ライターのやる気創出や、いまやライターに必須のスキルであろう拡散の努力、ウケそうなネタ探しなど、そういう能力を育むという点ではインセンティブはありがたいと思う。もちろんPV数だけで記事の良し悪しは測れないということも記しておく。
編集長にそれとなく聞いたところ、クレスタは基本的には広告収入がメインと言いつつまったく収益化できていないらしいので、みなさまにおかれましては、ぜひ掲載されている各ライターのいろんな記事を読んで、「クレスタおもしろい~!」とTwitterやnoteで吹聴していただければ幸いである。
あとは年に1回くらいイベントに出たりもするので、そのときにグッズを買っていただけたらうれしいです。わたしの貴重な寄稿先を守る活動にどうかご協力ください。
・クレスタからライターに
「「エモい文章」とは何か。文体を変えて検証してみた」という記事がクレスタで最初の記事になるが、これはブログをじきるさんが編集のうえで転載したもの。
はじめて書き下ろしで寄稿したのが架空飲み会こと「「経費で飲む」ために架空の会社を設立してみた」という記事。手前味噌で恐縮なんだけど、かなり読まれた。
最終的にPVは1万5000くらいだったらしい。よそのサイトと比べるとそこまで大したことはないかもしれないけど、半年前に立ち上がったばかりの寄せ書きサイトにしてはよくやったと思う。自画自賛ですみません。じきるうさんが「Bさん、やりましたよ!!!」と興奮して連絡をくれたあの日のうれしさを、いまでも覚えている。さいきんでは20万PVを獲得した記事もあるけど、正直メディアパワーの強さのおかげだったりもする。反響や、覚えた興奮は、この記事がいちばんだった。
ちなみに、寄せ書きサイト時代だったため、この記事にはいっさい原稿料が出ていない。
この記事をきっかけにフォローしてくれたのがサンポーの編集長・ヤスノリさん。たまたま友人が出展するイベントにサンポーも出ている、ということでご挨拶にうかがったところ、「うちで書いてもらえませんか?」とオファーをいただき、秒でOKをしたのでした。
サンポーはこれマネタイズどうなってんだと心配になるんだけど、広告もなしに良質な散歩記事を週2本というハイペースで提供しているサイト。
寄せ書きサイトでたまたま1本話題になっただけ、しかも散歩なんぞぜったいしていないであろうと一目でわかる体型のわたしに、ウェブライターとしても一般的な原稿料(これは後でわかったことだけど)という、未経験者には破格の待遇で迎え入れてくれたのだ。しかも、イベントで購入させていただいた散歩同人誌やフリーペーパーの出来がめちゃめちゃすばらしくて、「これはとんでもないところにお声がけいただいたぞ」と、それはもう身の震える想いがしたのでした。
サンポーはよくイベントに出ていますが、本やカードゲームはこちらからも購入できますのでみなさまぜひ。
同人誌「あたらしいさんぽのていあん2」にはわたしも寄稿しているし、当時いただいたフリーペーパーは大幅追記の上に「型から生まれる あたらしい信仰」という本になっています。めちゃめちゃおすすめのやつです。
わたしの貴重な寄稿先を守る活動にどうかご協(以下略)
・ライターとして仕事を取るために
自分語りが多くなってしまったけど、わたしが自分の定義する「ライター」になったのは、2018年8月にサンポーで最初の記事がリリースされた日だ。
その後はダメです.、Rettyグルメニュース、ねとらぼ交通課、ジモコロ、SPOT……と、ありがたいことにお話をいただいたり、営業をかけたりしてお仕事をさせていただいている。
わたしは元々ライター志望だったわけじゃないんだけど、結果的によかったのは書いていたものとメディアの親和性が高かったことだ。
先にも書いたけど、クレスタの記事はブログで書いていたこととおなじような内容だ。サンポーも「散歩から街のおもしろさを伝える」メディア。基本的にはおもしろ記事との相性がいい。だから、ヤスノリさんに声をかけていただいたんだと思う。たぶん、最初にブログを始める段階でエッセイを選んでいたら、こうはならなかったはず。そう考えると、おそろしさすらある。
3番目に書いたダメです.はおもしろ系ではないけども、この直前にたまたまnoteを始めていたので、それを元に「書きたいです」と営業をかけた。
「タイミングがよかった」の一言に尽きるんだけど、それまではおもしろ記事しか書いていなかったから、たぶんこのnoteを書いていなければ採用されなかっただろう。
なお、ダメです.には当時まだ2記事しかなかったnoteだけを送った。たとえどんなにおもしろかろうが、メディアの色に合わない記事を送っても無駄だと思ったからだ。結果的には、それでも書かせていただくことができた。
その後、Rettyとジモコロはお声がけいただき、ねとらぼ交通課とSPOTは売り込みをした。お声がけはありがたいが、正直運だ。吉玉サキさんやヤスノリさんを通じて、たまたま編集さんがお声をかけてくださった。ここでは応募に絞って書きたいと思う。
ねとらぼ交通課はサイトで募集を見つけて、これなら書けそうだと応募した。2つの採用課題が出たが、本業も編集長でSEO記事にも詳しいじきるうさんに課題の出来を見てもらったりして、なんとか採用された。
SPOTは募集自体はしていなかったが、問い合わせフォームから「書きたい」と送った結果、採用された。こちらは元々複数の友人たちがライターデビューをしていた媒体なので、ある程度いけるだろうという勝算もあった。
応募をする場合、大事なことは3つ。
まずは実績になる作品数を絞ること。編集さんもヒマじゃない。3記事もあれば、ある程度の実力は判断できる。10個も20個もあっても、あなたが編集さんなら見ないでしょう。
そして、先にも書いたけど、親和性のあるものを持って行くこと。企画記事を求められているサイトにエッセイを持っていっても無駄。小説の募集に短歌を送るようなもの。
最後に、もし採用されたなら、どういうものを書くかを提案することだ。
「ウェブライター」という職業は、個人的には企画立案、構成、アポ取り、取材、写真……そこまでが含まれていると思っている。わたしはだいたい1年で40本くらいの記事を書いたけど、編集さんから企画をもらって書いたのは2本だけだ。あなたがどういうひとで、なにが好きで……そんなものはどうでもいい。「どれだけのものを書けて」「どういう記事が提案できるか」が全てだと思う。
ここまで読んでわかっていただけたと思うけど、更新頻度は正直関係がない。例えば、吉玉サキさんやサトウ カエデさんのような飛びぬけた実力があって、「こういった作品を毎日更新しています」と一言添えるならアピールになるだろうけど、そうじゃなければ一球入魂の記事をとにかく3つ書いたほうがよっぽどいい。最初から定期連載になるなんてことは稀だから、とにかく単発で熱のこもった記事を書くのがいいと思う。
・とにかく実績をつくる
わたしの場合は、最初は自由ポータルに立て続けに入選したこと。続いて「架空飲み会」のバズだった。その後はしばらく停滞していたけど、Retty・ねとらぼ・ジモコロと立て続けに「知名度のある」メディアで書かせていただいたこと自体が実績になった。「あのメディアで書いているなら」という信頼感だ。
特に、架空飲み会の記事は参加者さんはもちろん、はじめてのクレスタ記事ということもあって、編集長のじきるうさんや、他のライターさんも拡散に協力してくれた。つまり、個人のブログでは、ぜったいにリーチしない層にも読んでもらえたということ。
そういう意味で、なんらかの賞に応募したり、寄せ書きサイトで書くというのは間違いなくメリットがある。特に、寄せ書きサイトなんて、原稿料もらってるかそうでないかなんて、傍から見たらわかんないんだから、「こういうメディアで書かせていただいてます」くらいに言っちゃったっていいと思う。
おすすめはひいき目もあるけどクレスタとか。ナンセンスダンスはエッセイもOKなので、表現の自由度が高いです。
賞レースは岡田 悠さんやしりひとみさんが賞を取ったオモコロ杯とか、ナ月さんやねおみのるさんが選ばれたハイエナズクラブ自由研究もあります。自由ポータルは毎週あるのでおすすめです。
・エッセイ、仕事に向かんくない?
この実績、noteで言うとコンテストが実績になると思うんだけど、個人的にエッセイや小説は仕事につながりにくいと思うのです。もちろん好きで書いてるぶんにはぜんぜんいいんだけど、仕事のために書くのであれば、やっぱり企画が強い。書いてみたいメディアを想定して、そこで自分ならどんなものを書くか?と考えてみるのがいいような気がします。せっかく自分のブログ(note)で書いてるんだから、いろんな方法やテーマ、切り口で書いてみる、というのもいい。
エッセイの話に戻ると、noteでエッセイを書いてる身で言うのもなんだけど、結局メディアにおけるエッセイってまず「あんた誰?」ってことになっちゃうので、まず読まれない=採用されない。有名なウェブメディアの記事を見ても、エッセイはインフルエンサーみたいなつよつよのひとが書いてますよね。
わたしはエッセイも書いてみたかったけど、「一般人のエッセイより、おもしろ企画のほうが需要あるやろ」と思ってブログを始めて、ライターになったタイミングでnoteでエッセイを書き始めました。「おもしろライターの頭のなか」なら少しは興味を持ってもらえるかな?と思って。エッセイのためにおもしろを踏み台にしたわけじゃなく、どっちも書きたいけど、需要のあるほうを先にという気持ちだったけど、個人的にはいい判断だったなと思います。
どうしてもエッセイで仕事をしたい!というかたは、ライターと読者の属性が統一されている場合……たとえばダメなひと向けの「ダメです.」とか育児メディアの「Conobie」とかなら、そのテーマで書けるひとはワンチャンあるかもしれません。でも、自分がその属性に合うかどうか、そもそも自分の属性に合うメディアはあるのか、はちゃんと調べたほうがいいと思います。
・最終的には読者目線
結局のところ、仕事を取るためには「編集部目線」と「読者目線」という客観視ができているのが大事だと思うのです。
営業をするときに大事なのが編集部目線なら、記事の文章は読者目線。
どういうひとに届けたいのか、どう思ってもらいたいのか。別になにをどう書こうが自由なんだけど、もし仕事にしたいなら。そして、たくさん読まれたいなら、その視点ってたぶん必要な気がします。
わたしのブログは「デイリーっぽいもの」を目指していたのでデイリーの読者とおなじようなひとたちを想定していて、このnoteはTwitterのフォロワーさんを想定していました。このnoteが思いのほか読んでいただけているのは想定外だけども。
だから、noteに企画ものは書かないし、ブログにエッセイは書かない。告知だけはどっちもやるけど、だいたいの場合文章がちがうのもそういう理由です。ブログのほうが、わたしを知らないひとにも読んでもらえるように書いてる感じですね。今後はちょっと使いかたを変えるかもしれないけど。
あとは、内容を漠然と考えるんじゃなくて、自分の興味や好きなものを因数分解して整理しておくといいような気がします。
おもしろいものを書きたいと思っていても、自分がなにをおもしろいと思うのかがわからないと、たぶんいいものって書けませんよね。思いつくままにだらだら書く文章とは、どうしても差が出てくると思うのです。
・まとめ
・営業するなら「作品数を絞って」「親和性のあるものを提出し」「採用されたらどういうものを書くか提案」する
・更新頻度よりも「作品のクオリティ」という意識が大切
・賞に応募したり、寄せ書きサイトに寄稿するのは実績として有効
・エッセイや小説は「仕事を取る」には不向き
・読者目線を意識するとちょっといい文章が書ける
基本的なことなんだけど、個人的にはこういうことを考えて、「わたしの文章」として記事を書いています。仕様に合わせて書くよりも、自分のスキやおもしろいをベースに文章を書くのが好きなので、おなじ「ライティング」でも、たぶんこういう仕事のほうが向いてるんだろうなぁ。
ちょっと書く仕事に興味があるな、とかクラウドソーシング以外で仕事を取ってみたいってかたは参考にしてやってください。そいで、もしいいお仕事があったら教えてやってくださいね。
ちょっと突っ込んだところまで書いてしまったので、いっそもっと突っ込んで書いて有料に……とも思ったんですが、このまま公開します。もし気が向いたらサポートでもしてやってくれたらよろこびます。たぶん、アイスを買います。
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