そうだ、あの夜の話をしよう。

ハロー、あのころのわたし。聞こえますか。

空気が読めない。でしゃばりでうっとおしい。自分勝手でわがまま。幼稚。そんなふうに見られて、周囲からいじめられて孤立していた、あのころのわたし。そして、きっとわたしなんかよりも、はるかにすてきなひとなんだろうとおもうけど、いじめられて、つらい思いをして、もう死んでしまいたいとおもっている画面の向こうのあなた。こんばんわ。


思えば、あれから長いこと時間が経ちましたが、いまでもわたしは、行方不明になりたいとおもうことがあります。面倒なことはぜんぶ辞めて、連絡手段を残さずに。すっと、いなくなりたい。でも、「死にたい」っておもうことはなくなりました。

そうそう、きっかけはあの夜のことでした。

わたしは、いつものように泣いていました。たしか、2学期のことだったから、このあと1ヶ月くらい先の出来事だったとおもいます。

学校に行きたくない。行ったらまた嫌われる。いじめられる。キモい。ウザい。そんな、ことばのナイフを突き立てられる。どうして?どうしてわたしばっかりこんな目に遭うんだろう。わたしがもし、あの子だったら、こんな思いをしなくてもいいのにな。なんでわたしは、わたしなんだろう。

月が、きれいでした。

この家が1階でさえなければ、このままベランダから飛び降りて、やさしい月の光に照らされたまま、明日の朝まで誰にも気づかれることなく、ひとりで人生を終えることができるのに。死ぬなら誰にも気づかれない夜がいいな。みんなが気持ちよく眠っていて、夢の世界にいるこの時間に、人生を終えたいな。そんなことをおもっていたとき、ふとひとつの思いがあたまをよぎったのでした。

わたしをいじめているあいつらも、きっといま、たのしい夢をみているんだろうな。って。

ハッとしました。そうだ、なんで?おかしくない?いじめられていて、つらい思いをしているわたしが、なんでこんなに寝れない夜を過ごしているの?あいつらはいびきをかいて寝ているのに。ふざけんな。冗談じゃない。なんでこっちばっかりそんなにいやな思いをしなきゃいけないんだ。あいつらばっかり、ずるい。

その瞬間に、悩んでいるのがばかばかしくなりました。ひとりの時間を、なんでわたしはあいつらのために使っているのかと。わたしだって、たのしい夢を見てやるんだ。その資格が、あるんだって。そうかんがえたら、ほんの少しだけ、気持ちが楽になりました。

逃げたっていい。でも、追い詰められたらだめだよ。あなたのたいせつな時間を、あいつらのために使わないで。あいつらはあなたのことなんか、なんともおもっちゃいない。もったいない時間を過ごさないで、自分のすきなことだけかんがえていよう。自分の居場所がなければ、さがせばいい。いまのあなたのまわりにあるものだけが、すべてじゃない。だから、きっとだいじょうぶ。


空気が読めない。でしゃばりでうっとおしい。自分勝手でわがまま。幼稚。たしかにちょっと、いや、かなりこまった子だったかなぁ、と、いまになって、そう振り返ったりします。でも、わたしはあのころのわたしのことがきらいではありません。あのころ悩み、憎み、妬んで望んだものは、たぶんほとんど手に入っていません。でも、あなたが色々かんがえて、思い悩んだから、きっといまのわたしがあります。立派なおとなにはなっていません。いまでもよく悩むし、失踪したくなることもあります。でも、それなりに人生をたのしく生きているおとなになっています。失踪した先で、やっぱり生きていたいなっておもえています。あなたのおかげです。ありがとう。

生きててくれて、ありがとう。

#日記 #エッセイ #人間関係 #いじめ #死にたい #8月31日の夜に

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少年B
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