社会人さん


2年前くらいの話になるが、田舎町に引っ越してきてから趣味のダンスをする機会が減ってしまって困っていた。
東京に出ればたくさん機会はあるけど、平日休みということも相まってなかなか思うようにできずにいたところ、近くでダンススタジオがあるのを知った。

体験から始めて、講師の人とも仲良くなり、月に1回程の頻度で通うようになった。
年齢制限は設けてないクラスだったけど、まだまだダンスというものが浸透していない場所ということもあって生徒は皆小学生〜中学生くらいのキッズたち。
そこに僕1人、大人が混じっているという感じだった。

キッズの子たちと交流することはとくになく、挨拶だけ交わす必要最低限のコミュニケーションだったが、講師の人が気遣ってくれてか、たまにキッズの子達に僕のことを紹介してくれた。
それから僕はいつしかキッズたちに「社会人さん」というあだ名で呼ばれるようになった。

「社会人さん、久しぶり!」
「社会人さん、こんばんわ!」

あだ名を得たことで、それまでより少し会話する機会も増えた。

それから、住む場所も少し変わりより距離が出たことや、生活スタイルの変化からそのスタジオにはしばらく行けていないでいる。
ただ、急にふと「社会人さん」と呼んでくれた女の子のことが思い出されて懐かしくなり、あのとき感じたなんともいえない温かさを忘れないでおこうと思って、日記にしたためた次第。

今までついたあだ名って何がある?とたまに聞かれることがあるが、その時はこのエピソードとともに「社会人さん」、と答えてみたい。

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