
文学における性はエロなのか
文学ではエログロが必要不可欠
性教育の曖昧さが文学離れを生んだ
「子供が性に興味を持ち始めた」
そんなときに、誰よりもうろたえるのは両親かもしれません。
「ウチの教育方針」が決まっているご家庭にとっては、問題のないことかもしれませんが、多くのご家庭ではこの問題は回答がありません。
どのように教えるか、どの程度まで理解させるか。
そうした線(ライン)がしっかりと明確に見えないのが、一番難しい点なのかもしれません。
このように中途半端な性教育を受けてきたのは、私も該当しますしあなたも該当するのではないでしょうか。
性は良いことか悪いことか。
という判断基準を持たない人や、判断基準がバラバラな人同士で、性について話をしなくてはいけない場面が出てきます。
いま話題の、元アイドルの性加害問題などですね。
このように「過剰な性癖は犯罪なのだ」という知識だけで、性というものを理解してしまうと、それこそ「自分は大丈夫か?」という自問自答を繰り返すことになります。
その結果「なんとなく危ういな」と、自分の性癖を判断する人が多くなり、その結果「他人には明かさない性への知識」を持ち続けることになります。
おそらく、そうした「自分の中だけに秘めた個人的な事情」をもつことは、内なる自我をおしとどめることにつながるのではないでしょうか。
そのような秘め事を持てば持つほど、「自分の秘密を打ち明ける人物」が必要になります。
しかし、プロであってもそうした「個人的な異常性」を打ち明けるほどの人を探し当てるのは難しいでしょう。
考え付くのは、それを『自分よりも下の立場の人間に押し付ける』ことです。それがまるごと、事件化したのが今をにぎわしているニュースの元凶であるように思います。
こんなことをニュースとして目にしては、「自分は大丈夫か」と自分の立っている場所を確認することを繰り返していると、性やエロを想像すること自体が悪いことであるように捉えるほうが安全であるような気がしてきます。
より安全に、より健全に生きているほうが、人として評価が高い。
それを実践しているように見せかけることが、自分を守ることであり、自分が胸を張って生きることができる姿そのものであるわけです。
すると、文学作品を読んでいるときに出てくる性描写やエロティシズムなどを、「読んでいる自分も異常性を疑われるのではないか」といった疑念がわいてきます。
これが、長期的に見た、文学離れの原因であるように思うのです。
文学において性やエロは必要な表現
文学において、一番メッセージ性が強いのは、生きることの意味です。
人は、生きていることに悩んでいます。
なぜ、自分は生きているのか。
なぜ、自分は明日に向かっているのか。
どんなことでも、意味を見出したいのが、人間の性(さが)なのです。
そうした意味を考えると、なぜ生まれてなぜ死ぬのかという疑問に当たります。
人が生きる、死ぬことを考えたとき、必ず性の問題が浮かび上がってきます。
なぜなら、人は男女が交わって生まれてきているからです。
その事実は、決して変えることができない。
多様性やジェンダーレスをいくら叫んだところで、男女が交わることを失くしてしまっては、人間は生まれてこないのです。
今は、セックス失くしても、体外受精などで人間を生み出すことができます。
それを可能にしている以上、『必ず男女の交わりが必要』だとはいえないのかもしれません。
しかし、自然の摂理としては、その事実があったからこそ、人類は発展してきたのです。
それを消し去ることはできない。
だからこそ、生きることと、性の問題は直結してしまうのです。
どのようなごたくを並べても、最終的には、エロくてグロいところからしか、人間は生まれないのだということを知ることになるのです。
このように、人は性の問題を切り離すことができないのです。
それは、好きな人が同性であっても、それがマジョリティ(多数派)になっても、目を背けることはできないのです。
文学における性の描写は、いわゆる性教育の延長線上ではなく、必要不可欠な人間の営みとしての性の表現であり、それは生きることを肯定するためには重要な位置を占めているのです。
文学を読むなら、性をいかがわしく捉えず、日常の必要なものと同じように、いやそれ以上に捉えると、美しく見えるのではないかと思うのです。
いいなと思ったら応援しよう!
