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入院3日目〜情熱の薔薇〜

昨日の夜は37.1度と微熱があったが、朝には熱は引いていた。だが、気だるさは続く。

それにしても、病院の夜は長い。

9時に寝て、鼻から垂れる血が口に入ったり、鼻から血が垂れたりと、時々起きて血の痰を吐いたり、鼻に入れる綿球を変える作業をする。
何よりずっと寝ているため、腰が痛くなる。深夜バスに乗ったようななんとも寝心地が悪い感じが続く。スマホの時計を見て、まだ2時。

たまらん。

その後、うつらうつらと寝ていたのだが、今度は自分のいびきで目を覚ました。鼻で呼吸できないし、痰も入るため、いびきが大きくなってしまうのかもしれない。自分のいびきで目覚めることに驚いた。また、周りに迷惑かけて申し訳ない気持ちになる。だが、しばらくするとまた自分のいびきで起きる。その繰り返し‥

何時だ?

まだ3時半か‥

長いな〜。

もうしばらく経ち、日が差してきたのが分かる。

朝8時。
今朝からは1日半ぶりの食事。匂いがしないので、味はほぼ分からないが、モノを食べられることが嬉しい。

12時にはラーメン。
病院食でラーメンも出してくれるんだな。僕の一番好きなものはラーメン。麺がやわらかろうが、匂いがしなかろうが、それでも嬉しい。美味しくいただく。

僕の斜めに寝ている人も、どうやら僕と同じ副鼻腔炎の手術をしたっぽい。おそらく高校生で、僕の後に手術を受けたのだろう。鼻呼吸ができずに苦しいと看護師さんに嘆いていた。
カーテン越しに会話は聞こえてくるのだ。
朝食の後、栄養士さんに「ご飯食べられました?」という質問に対してその子は、「鼻から呼吸できなくて、食べづらくて半分以上残しちゃいました」と答えていた。
気持ちはわかる。鼻が塞がれて、口を閉じながらご飯を食べることができないのだ。

だが、僕は今までの経験値が違う。なにより、退院してすぐに仕事を入れてしまった。なんとかしなければならないのだ。回復するため、僕は残さず食べた。嫌いなメロンだって食べた(味がしない分、逆に食べれる)。

だから僕は、栄養士さんに「ご飯食べられました?」と聞かれた時、

「はい!食べました!」

元気よく答えた。

そう、その子に聞こえるように。

さらに、

「これからも残さず食べます!」

僕は勝ったと思った。カーテンの奥にいる顔も知らない、だが、鼻にガーゼを入れているであろう彼にマウントを取ってしまった。
お前とは覚悟が違うんだぞって。

病院では、小さな喜びが幸せに感じる。

こうして僕はなるべく小さな幸せを集めて生きている。ブルーハーツの「情熱の薔薇」を思い出した。
鼻に突っ込んだ綿球を取る時の血の色は、「情熱の薔薇」の色だと思うと、少しテンションが上がる。

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