トップ・オブ・ザ・カワイイ
『カワイイ』
皆さんはなにをみて、またはどういう時にそう思うのだろう。
異性をみて、子供をみて、動物をみて‥
様々あるだろう。
その中で僕は動物をみてカワイイと思う感情が欠如している。人はカワイイと思うが、動物に関してはただの動物。
それ以上でもそれ以下でもない。きっと、カワイイと思う脳みそが萎縮してるのだろう。
落語家という職業柄、おじいちゃん(師匠方)によく会う。特に入門してから4年間の修行期間中は毎日寄席に通い、ほぼ隔離状態。四方八方おじいちゃんたち。寝ても覚めてもおじいちゃんたち。
さらに動物をカワイイと思わないのだから、人よりカワイイの摂取量は圧倒的に少なかった。
僕にとって恐怖の瞬間がある。
「ほら見て〜、この猫の動画カワイイでしょ」
これだ。この会話で5,6人が盛り上がってたら、銃口を向けられているのと同じだ。
「ね、昇りんさん、カワイイでしょ」
パキューン!!
脳内では銃声がなってる。
「え、あ、はい」
一応そう答えるが、見せてくる画像そして「カワイイでしょ」と言ってくる人含め、かわいくない。気持ちとしては血だらけで倒れている。むこうはそんなつもりはないだろうが、本当にダメなのだ。
「兄さん、豚はカワイイですよ」
そんな話をしたら、後輩の女性の前座さんに言われた。話を聞くと小さくてカワイイ豚、マイクロブタというのがいるらしい。
そして、それを愛でるカフェがあるとのこと。
その名も「mipig Cafe」
初めてのことはなるべく断らないようにしている。よって行くことに。
だが、そのカフェは目黒にあるとのこと。
現在地は上野。電車で約30分。
まーまー遠いな。
駅から歩いて15分。
まーまー歩くな。
まーでも、しょうがない行くか。
乗った。
歩いた。
着いた。
豚、見た。
俺の負けだよ。
カワイイ。そりゃカワイイ。まいったぜ。
あいつらは鳴き声が二つある。まずは定番の「ブヒブヒ」
もう一つは、「キュイーン」と鳴くのだ。
低音の「ブヒブヒ」高音の「キュイーン」
低音・高音で攻められたら、そりゃカワイイに決まってる。
大満足だ。帰りに後輩さんとは、焼きとんも食べちゃった。
かわいかった、いや、おいしかった。
と、ここまで長々語ってきたが、これがメインディッシュではない。豚は前菜だ。メインディッシュはここからだ。
『トップ・オブ・ザ・カワイイ』
に出会った。
水森亜土展へ行ってきたのだ。
水森亜土って、誰?知らない、というあなた。
僕も知らなかった。
僕は竹久夢二美術館へ行きたかったのだ。竹久夢二も知らないというあなた、僕はちょっと前に知りました。
サイトを見ると、竹久夢二美術館には弥生美術館が一緒にあって、そこでは水森亜土展をしている。同じチケット代で観れる。
じゃあ、行こうか。
水森亜土さんは現在80歳。イラストレーター、ジャズ歌手、画家、とにかくいろんなことをやっている人らしい。
なんにも知らなかった。
1階と2階に展示室があり、正直、他の大きな美術館と比べれば展示室はだいぶ小さい。その小さな展示室に、デザインされたイラストのTシャツ、グラス、ハンガー、カバンなど様々。そして絵画。そのどれもがカワイイ。カワイイでいっぱいなのだ。カワイイの三密状態。空気もカワイイ濃度が高くて酸素が少ない。
ちょっと換気したほうがいい。
絵画もセクシーでキュートで、もうカワイイすぎてクラクラする。もうバカになっちゃう。
もちろん、グッズもたくさん買った。
ね?画像見て「ホントだ、カワイイ」って思ったでしょ。これが目の前にいっぱいあったら最高でしょうよ。
カワイイの濃厚接触も終わり、外へ。
そこで気付いた。脳内がカワイイズハイになってるのだ。萎縮していた部分が肥大化している。見るもの全てがかわいのだ。散歩するワンちゃん、野に咲く花。そして街中にあるそろばん塾の古びたポスター。
ボロボロもカワイイ。
最終的には自転車で通り過ぎたおじいちゃんまでカワイイ。今こうやって書いてる僕もなんかカワイイ気がしてきた。
かわいすぎてクラクラする。まさに、
『トップ・オブ・ザ・カワイイ』
そんな水森亜土展は10月25日まで。
今行こうかなと思った。
そんなあなたもカワイイ‥。
ちょっと気持ち悪いと思ったあなた、間違いじゃない。
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