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落語家のこだわり−紅花染めの着物−
着物は商売道具だし、衣装だし、そりゃ好きなものを着たい。だいたいの落語家がそうだと思う。
やっぱり、お気に入りの着物を着たらテンションが上がるし、いろいろと凝り出してくる。
少し前だが、りんごの紋をつくった。
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このへんは、意外と落語は自由である。基本的には一門の師匠の紋であったり、実家の紋なのだが、好きなものだっていい。僕は実家がりんご農家だから、りんごの紋である。師匠だって、クラゲのようにフラフラ生きたいということで、クラゲの紋である。
また僕は、山形出身。
山形は紅花が特産品ということもあり、地元の後援会の方々から、紅花染めの着物をいただいたこともある。
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江戸時代は、赤の染料というのが紅花しかなかった。山形で紅花を生産し、それを北前船で京都まで運んだ歴史があり、それで山形は財を成したのだ。僕の地元中山町に国の重要文化財である旧柏倉家住宅があるが、こちらもそうである。
今でも、旧柏倉家住宅の前には紅花畑があり、そこをNPOが管理している。そこで摘んだ紅花で、着物を染めていただいたのだ。
せっかくなので、僕も紅花摘みを体験させてもらった。
詳しくはこちらを読んでほしい。
自分が使う着物はどのように作られるものなのだろうか。
ふと、疑問に思ったことがある。
じゃ、お願いして見学してみようということになり、山形の呉服店『とみひろ』さんの工房に見学させていただいたこともあった。
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こちらは、手織りをしているところであった。また、こんなものもあった。
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こちらは紅餅と言われるもの。紅花を摘んで、この紅餅に加工する。保存が効くということと、赤い色素が多く抽出できるからだとか。
そして、こちらを見ていただきたい。
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草木染めの資料である。
基本的には、草木であれば染料として使えるとのことで、りんごの枝でも染まるのだ。他にもたくさん実験の資料があり、とても興味深い。
例えば、ナスの漬物なんかは紫色の汁がでるが、そうように草木から何かしら色が抽出できるのだ。ただ、色が落ちやすかったりするため、なかなか使えないものも多いとのこと。資料をみると、草木に鉄など何を合わせるかによっても、色が変わっていくのだ。化学の実験のようで、面白い。
先日、新しく紅花染めの着物を仕立てた。
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たまたま、通りかかった着物屋さんに入り、足袋だけ買って帰ろうと思ったのだが、ついでに反物を見させてもらったらいい反物があった。いい色だなと思い注文したのが、たまたま紅花染めであった。
紅花染めだが、黄色。
合わせる金属によって変わるのであろう。
紅花染めの着物が二つあるというのは嬉しいものである。落語家というのは、1人で舞台にたつ。そりゃ、不安なときだってあるわけだ。
そんな時に例えば、師匠からもらった着物を着るだとか、お客さんにもらったものであるとか、それぞれ思い入れのあるものが集まると心強いものなのだ。他にも、いろいろこだわりを持っている人も多い。
落語家を見ながら、どんな着物の組み合わせなのか、どんな思い入れがあるのか、そういうふうに見るのも、また一つ楽しいかもしれない。
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