復帰の高座
さきほど、退院後はじめてのの高座が終わりました。
出かける前は体調は万全と言えるものではなく、朝から気だるい。
しかも、鼻に綿球を詰めているため、外出する時はもちろんマスクを着用。この暑さでマスクは堪える。
本日高座をする神田連雀亭についた頃はもうヘロヘロである。そこから高座に上がるまでは、どうなるかな、血が垂れたらどうしようかなと、いろいろ思うことはあったのだが、上がってみたら何てことはなかった。
高座をおりる頃には体調も良くなっている。これは、落語家あるあるで高座に上がると体調が良くなったり、二日酔いが治ったりするのだ。
今日の高座のおかげで元気になった。
とは言え、油断はできないので明日明後日はしっかり休むつもりである。ひとまず、復帰高座が無事に終わってほっとしている。
だが、アゴの手術をした時は、こんなふうに簡単なものではなかった。
前にも書いたが、僕は高3の時にアゴの矯正手術をしている。クッキングパパのように下アゴが出ており、それを手術で噛み合わせを治したのだ。
その手術をしたのが高3の夏休み。
つまり、アゴが出ていたはずの男が2学期になったら、アゴが引っ込んで登校してくるのだ。
とんでもない2学期デビューである。
髪の色変えたとか、メイクしちゃったとかそんなレベルではないのだ。
もう一度言おう。
出てたはずのアゴが出ていないのだ。
顔が変わっちゃってるのだ。
衝撃のデビューである。
もう宇多田ヒカル級の衝撃デビューである。
もう『Automatic』である。
そして、僕にはもう一つ問題がある。
学生時代、僕は極端に友達が少なかったのだ。
つまり、
「おい!お前本当にアゴ引っ込んでんじゃん!すげえな!」
「おい!やめろよ!」
みたいなやり取りはないのだ。
友達がいないやつが衝撃2学期デビューをかましてくる。教室が一体どんな反応になるのか想像できない。
その日の朝、僕はとても緊張していた。
デビューなのだから。そりゃ緊張をして当然である。いつものように学校へ行き、軽い深呼吸をして教室へ入る。
教室へ入ると、何人かと目が合う。友達はいないが、さすがにこの状況だ。
誰かが話しかけてきてもおかしくはない。
話しかけられたら、なるべくテンション高く答えよう。
だが、誰も話しかけてこない。
同級生たちは、まさか僕がこんな衝撃なデビューを飾るなんてもちろん思ってもいない。アゴが出ていないだなんて夢にも思っていない。
だから、すげえ似てるやつが入ってきたと思ったのだ。
しかし僕が席に座り、それが間違いだったことに皆が気づく。こいつは須貝(本名)だ。
なんで、アゴがない?
事故?
整形?
なに?なに?
教室がざわつく。
そのざわつき中に、時たま「アゴ」という単語だけが耳元に届いてくる。
しばらくすると、先生がやってきて、いつも通りホームルームから始まった。
結果、誰にもイジられない、まさかの「無」という反応であった。
人間、許容の範囲外のことが起きると案外そういうものなのかもしれない。
だが、芸人は良いものである。
鼻に綿球をつっこんでいたら、イジってくれる。有り難い場所である。
鼻の奥にあるガーゼを取るまで、あと3日。
口が乾燥する。
長い。気が狂いそうである。
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