28. 未来を売る仕事
”カウンセラー養成講座を開講したい”
今年の春、わたしの中で少しずつ芽生えてきていた思いが、だんだんとはっきりしてきました。
カウンセリング技術を教える感触が掴めてくるにつれ、今度はカウンセラーの養成に取り組んでみたい、という思いが強くなったのです。
ですが、そこでわたしは、これまで直面したことのない壁に行き当たってしまいました。
プログラムに組み入れたい内容が膨大すぎて、何をどのように構成していったらいいのか、途方に暮れてしまったのです。
また、そもそも、開講したとして、人が集まるのだろうか?
リアルで開催してみたいけれど、もし誰も来てくれなかったら?
といった、不安や怖さもありました。
そんな、これまでに手掛けたことのないスケールの大きさや、未知の多さに圧倒され、何から手をつけていいのか分からなくなってしまったのでした。
わたしが養成講座を開講したいことを伝えると、彼はすぐにそのサポートを引き受けてくれ、講座の土台を作るところから、実際に値段をつけて売り出すところまで、その時々でやるべきことを明確に示しながら、とても丁寧に伴走してくれました。
その養成講座は無事、この11月からスタートすることになっています。
この、講座をつくるプロセスの中で、わたしは、人に何かを届けることの本質を逃すことなく、かつ専門性の高い内容を手渡すための講座づくりについて、とても貴重な学びをさせてもらうことになりました。
つぐさんにアドバイスをもらい、まず最初に取り組んだことは、全体構成を描いていくこと。
手を動かすというよりまずは全体構成を描いてみるように助言をもらい、まずは、じっくり腰を据えて自分の思いやヴィジョンと向き合い、言語化をしていく作業をしていきました。
カウンセラー養成講座を
やりたい理由は何か
なぜそれをたくさんの人に届けたいのか
講座を受けることで
どんな状態の人がどうなっていくのか
この部分は、講座を開催していくにあたり、コアとなる部分。
また、今後講座を進めていく中で、きっとその時々で立ち戻るところでもあります。
つぐさんはこれまでも折に触れて、 “原点回帰” の大切さを教えてくれていました。
原点とは、言い換えれば、”何のためにそれをやるのか”、という、自分の活動の原動力となる部分。
自分を看板に仕事をしていく中で、ここが明確であることがとても大切だし、何かあった時にはそこに立ち戻るようにしたらいいのだ、と。
今回もつぐさんが最初に、この部分を明確にするようにアドバイスをくれたのは、きっと、今後わたしが講座を進めていくにあたり、立ち止まったり、具体的な内容を考えていったりするときに、原点に立ち戻れるようにという思いからだったのだと思います。
そして、この原点をじっくり練ることは、ひとりでやっていると、意外となおざりにしてしまいがちなプロセス。
その大切な部分を、フィードバックを受けながら、しっかりと定めていきました。
ここに向き合った分、当初の予定よりも講座の開講時期が遅れましたが、時間をかけてこの原点を練って言語化したことが、今では養成講座のゆるぎない土台となっています。
そして、次にアドバイスをもらい、取り組んだのは、養成講座の各フェーズに応じて、教える内容や順番を洗い出して、実際どのように実施していくのかについて、具体的に構成していくことでした。
わたしはここで、兼ねてから悩んでいた難関に、実際的に突き当たりました。
それは、養成課程自体の構成を、どのようにしていくかということです。
なにしろ、養成課程をまっさらな状態から組み立てていく必要があります。
講座を自分の思うように自由に構成できるのは、嬉しい点ではあるものの、自由度が高いばっかりに、何を基準として、どこからどう手を付けていけばいいのかの検討がつかず、途方に暮れてしまったのです。
例えば初級・中級・上級といった区分分けはどうしようか、それぞれをどのくらいのボリュームで実施しようか。
対面のみにするのか、オンラインも織り交ぜるのか。
そして、受講費はどうするのか。
考えることの膨大さに途方に暮れて、行き詰ってしまったわたしに対して、つぐさんは、2つの助言をしてくれました。
ひとつは、自分が伝えたいスタイルに妥協しないということです。
この助言を受けて、わたしは今一度、なぜ講座の構成で自分が迷っているのかについて、自分の心の動きを観察してみることにしました。
すると、講座の構成でどうしようか迷っていた時に、わたしの中でせめぎ合っていたのは、自分が本当はやりたいスタイルに対しての、人の反応であるということが、はっきりとしてきました。
例えば、本当はリアルで開催したいけれど、リアルで開催して、人が来てくれるのだろうか?
来てくれる人に負担が少ないように、日程をコンパクトに絞った方がいいのだろうか?など
でもそこで、つぐさんがゆるぎなく伝えてくれたことは、人の都合を伺うのではなく、自分がやりたいようにやったらいい、ということでした。
自分がやりたい日程で
やりたいようにやったらいいんだよ。
そこに合わせて
人が来てくれるんだから。
大丈夫。
ゆったりと確信に満ちた様子でそう伝えてくれたおかげで、わたしは、参加してくれる人の都合を伺うという視点から離れ、自分が本当にやりたいスタイルで、納得がいく内容を組み立てていくことにしました。
そして、もうひとつ伝えてもらったこと、それは、
養成講座の最初のセクションは“入門編”にして
カウンセラーを目指す人に対してだけではなく
一般の人向けにも対象者を拡大して
心理学の間口を広げる講座にしたらいい
ということでした。
これは、わたしにはなかった発想でした。
養成講座の最初から、専門的な理論技法を伝えることを考えていたからです。
実はここは、専門的なスキルを持った人が講座を作る際に、陥りやすい点なのかもしれません。
自分が専門的であるがゆえに、相手からも専門的な内容が求められているのだという認識から、そのような内容で講座を構成する、という事態です。
ですが、そのように専門的な内容を伝えようとするスタンスは、あくまで講座を構成する側の関心であったことに、わたしはその後直面することになります。
*****
いよいよ入門講座の内容を具体的に考えていこうという時に、つぐさんからユニークなアドバイスをもらいました。
それは
大きな書店に行き
カウンセリング初心者に渡すつもりで
心理学関連の本を3冊買い
そこに何が書かれているかリサーチする
というもの。
加えて
本の構成はどうなっているのか
何を伝えているのか
読者は何を必要としてその本を読んでいるのか
そういう観点から紐解いたらよいよ
とアドバイスをもらいました。
そして、それを入門講座に反映させていくことで、受講者の方にとって講座を受講することが突破口になるように、と。
そこでわたしは、大きな書店に足を運び、心理学関連の売れ筋書籍をいろいろと見て回りました。
そこでの大きな発見。
それは、カウンセリングの理論技法の教科書的な内容と、売れ筋となっている心理学関連の書籍の内容とは、質的に大きく違うものだということでした。
例えば、前者(カウンセリング教本)の内容は、カウンセリングの定義から始まり、いろいろな概念や技法の紹介などから始まります。
それに対し後者(売れ筋の心理学関連の書籍)は、切り口が、一般的にありがちな心の困りごとへの対処法や、人間関係を円滑にするコミュニケーション方など、もっぱら、内容が具体的かつ身近に感じられるものだったのです。
そして当然、後者の方がよく手に取られ、読まれている。
つまり、ニーズはあきらかに、後者の方なのです。
ということは、入門講座においても、理論技法から入るよりも、もっと具体的に、身近で感じている心の困りごとや、コミュニケーション方法を切り口にした方が、参加者へのニーズにフィットしているのかもしれない。
そこには専門的な色合いは少し減るものの、受講者の方が実質的に得られる恩恵は、そのようなエッセンスが入っていた方が確実に上がりそう。
そんなことをつぐさんに伝えると、そのわたしの気づきに ”そうそう、そういうこと” と相槌を打ちながら、さらにこんな風に伝えてくれました。
受け手にとっては(専門的かそうでないかは)
どっちでもいいの。
有効手段であればよいのだよ。
そこに信頼度があり
そして面白いかどうかが大事。
そして、こうも伝えてくれました。
カウンセリングという言葉にも
こだわる必要はない。
”未来こうなれる”を、売るんだよ。
この言葉を聴いた時に、わたしは目から大きな鱗が落ちていきました。
そう、カウンセリング技術を伝えようとするときに、教える形式や順序、内容について、当然こうであるべきと強い固定観念を持っていた自分に気づかされたのです。
そして、それが当たり前の世界に長くいたので、その固定観念の枠に自分をはめ込んでいたことにすら、気づかなくなっていた。
一方で、受講をしてくれる方々は、まっさらな状態。
そこに、何を入れていくのか、というところから考えた時に、体裁や順序にこだわる必要はなく、受講してくださる方にとって有益であるかどうかが、大切。
そして、”未来を売る” という考え方。
講座をはじめサービスを買う時、人は、”未来こうなれる” という希望にお金を払っているし、そのような買い物ができると幸せです。
なので、大切なのは、いかにその感覚を手渡すことができるか。
わたしは、つぐさんのこのアドバイスを受けて、視野が固定化されていた自分に気づくと同時に、彼の一貫して受講する人の感覚に立ち、そこに寄り添いながらサービスを作るという視野の広さと柔軟さに、感動を覚えました。
これは、彼がきっと、自分のサービスを作る時にも、いつも大切にしていることなのだろうと思います。
長くビジネスをやっている中で、固定観念の枠にとらわれず、”未来を売る” という、純度の高い動機を持ち続け、サービスを作り続けているからこそ、受け手の心が動き、つぐさんのサービスはファンが絶えないのだと。
そして、わたし自身も、講座の内容や案内文を考えるにあたり、当初の予定から大きく内容を変更しました。
専門的な内容を順を追って伝えていくといった、従来の全うなスタイルをとるよりも、受講してくださる方が何を求め、何を得られるかに視点を移動させて、構築していくことに。
人間存在の捉え方といった生命観を含んだ内容や、受講された方々自身が自分を解放していったり、自己理解を深めていったりするエッセンスもとり入れ、わたしならではのオリジナリティの高い講座のプログラムを作ることができました。
開催形態も、対面で開催したいという思いから、3日間の講座をすべて、京都でリアル開催することに決めました。
こんな風にして、わたしは、当初はどうすればいいか見当もつかなかった講座の概要を、無事に作ることができました。
結果的に、自分の納得のいく、かつ、求められる講座を作ることができたことを、とても嬉しく思うとともに、ここまで丁寧に伴走してくれたつぐさんに、心から感謝しています。
この養成講座については、まだ別の、深い学びと成長ができたエピソードがあるので、また別の記事として書いてみたいと思います。
つづく。
この記事は連載形式になっています。
最初からお読みいただくと、これからの記事も、より楽しんでいただけると思います♪
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