市立札幌病院への道 後編
こんなお願いはできればしたくなかった。しかし、この可能性があると頭ではわかっていたからお願いせざるを得ない状況だった。
帰国してから4日ほどたち、急激に高熱と倦怠感にうなされた。もちろん2019年2月の話である。コロナではない。
嫌な気はしていた。インフルエンザでもノロウイルスでもないと言われ、自分がどのようなところに直前までいたかも理解している。
「あぁ本格的にあの可能性を考えないといけないのだ」
そして、ノロウイルスの検査が陰性であったことを告げに来た医師に対して、エイズの検査もしてほしいということを告げた。
もちろん自らお願いするのだから経験済みということである。アフリカに長く滞在していたことを先生には既に話しているので、日本での経験よりもはるかに可能性のある場所での経験であったことを理解してくれたと思う。
そのときは男性医師が私にいくつか質問をしてきた。
「そのときは避妊具を付けましたか?」
「もちろん付けました」
「いつ頃のことですか?」
「1カ月前に一回と2カ月前に一回です」
「どこでですか?」
「タイとエチオピアです」
「え、あぁそうですか、どちらが先ですか?」
「エチオピアです」
「おぉ」
当たり前だ。初体験がエチオピアである事実を知って驚かない人間などいない。
(あぁ病院とは心身ともに丸裸にされる場所なのか、つい先ほどはお尻の穴を晒したばかりなのに)
(あまり他人に話していい印象がない)
(いや、確かに旅人界隈や男友達に話すときは盛り上がるし勇者のごとく聞いてくれる)
(しかし、女性ウケは皆無でドン引きされたこともある)
(だからこそあまり他人にべらべら話したい内容でないのだ)
(しかし、それはしょうがないことなのだ。あのときどうしようもない欲求のせいで夜のアディスアベバの街に繰り出していかざるを得なかった)
採血が行われた。結果は陰性。人生でこれほどまでに安堵した瞬間はないだろう。今もなお高熱と怠さは続いているが、もうどんな病気でもいい気がしてきた。エイズではないかという疑いがどれだけ私を追い込んでいたか。
結果的には、感染症の専門外来がある市立札幌病院に行くことになりデング熱であることが分かった。デング熱は特に治療薬もないので解熱剤をもらって一週間耐えるという治療しかないらしい。一週間ほど耐えて、熱が下がっても怠さや食欲はそのまた一週間くらいない状態が続いたがまぁそれは大丈夫である。
しかし、そこらの何も知らない人間にデング熱にかかったことを話すといい反応をしてくれいる。デング熱とエボラ出血熱を同じものと考えている人も多く、
「致死率70%のやつでしょ!!!」
って言われるがデングはそんなことはない。しかし、東南アジアを中心に感染が広がってると姉が教えてくれた。
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