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【009】「そうだよ光らせてるんだ」2022年10月の日記➀
・10月が終わろうとしている――。
・これ、毎回言ってない?
・「寒い!」と地面に叫んで起きる朝と、「日差しキツ……」と空に手をかざす昼が共存する季節だ。衣替えでもするかぁとタンスの中を漁ってみたところ、何度見直しても長袖の服が少なすぎる。まったく記憶にないが、どうやら引っ越しのタイミングで断捨離したらしい。もしくは長袖の長い部分を全部切り落としたのか。
・大慌てで服を買いに行こうとするが、外は寒いし日差しはキツい。ふと思い付きでZOZO TOWNで初めてカットソーを買ってみた。
・三日くらいで届いた。サイズが合わなかった。これだからインターネットってやつはよぉ。許せねえよな……。
・しかし人間はこの射幸心に抗えない。今度は二着ポチッた。さあ、インターネットよ、俺と勝負だ……。今度は負けないぜ。
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・劇場でアニメ映画「四畳半タイムマシンブルース」を観てきた。めちゃくちゃ良かった。荒唐無稽で向こう見ずな根暗系青春ラブコメなのですが、思い出補正も相まって最後の方では泣けてしまった。元となった「四畳半神話大系」は、大学時代に原作小説とアニメ版を何度も繰り返し摂取した。聖地を巡るために京都に一人旅行に行ったこともあった。
・アジカンが担当した主題歌「出町柳パラレルユニバース」も最高だった。陽気さの中に侘しさが、侘しさの中に陽気さが。「君らしく踊ればいいじゃない」。良い歌詞。
・最近はいよいよ体力の低下と体重の増加が気になり始めたので、ランニングに出掛けてみた。
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・あのランニングシューズ、二か月くらい寝かせてたことになるな……。
・近くの公園まで、走って20分くらい。ちょうどいい距離だ。ネットラジオを聴きながら駆けていく。昔は体力のある方だったので、こんなに息が上がるなんて流石に歳を感じざるを得ない。不定期の深呼吸が喉を乾かす。寒さよりも日差しよりも、この喉の渇きの方がよっぽど秋を感じさせてくれる。気がする。
・辿り着いた公園では仮装をした集団がいくらか溜まっていた。そうだよね。世間はハロウィンだ。しかしいくらハロウィンだと言えども、コスプレして外に出掛けようと思い立つ人たちってのは、どういう心境なんだろうか。その動機が分かるかどうか。それが陽キャと陰キャの境目なのである。
・土曜日は用があって福岡の天神に行っていた。そこではハロウィン二日前にも関わらず、仮装した人たちがたくさんいて、いつも以上に場を賑わせていた。ピカチュウのコスプレ姿でナンパしまくってる男性がいて、面白かった。
・と、そこで、集団の中にひとりスマホをいじる女性が目についた。誰かと待ち合わせをしているらしい。仮装はしていない。なぜその女性に目が留まったのかと言うと、スマホのライトが点灯しっぱなしだったからだ。まぁ、そういうこともある。
・すれ違うタイミングで、待ち合わせ相手の女性が合流した。相手の女性は「スマホ、ライトつけっぱなしだよ」と指摘した。それに対してスマホの女性は、
「そうだよ、光らせてるんだー」と返した。
・は?と思ったが、振り返るのも変だし、そのまま通り過ぎた。相手の女性が「そっか、いいね」と会話を終わらせるのが微かに聞こえた。
・あれはなんだったのか。それからというもの、仮装して歩く群衆がひどく普通に見えた。「そうだよ光らせてるんだ」。すごい台詞を聞いたな。
・通りの向こうではピカチュウが相変わらずナンパしていた。
・「寒いな」って思ったけど、これも秋の風物詩ってことですかね。
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・これは特に意味のない「あたり」の写真。
・もうどっかにいった。
(おわり)