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#9『”夏と二人の関係の終わり”SHISHAMO「夏の恋人」を語る』

今回は2016年9月に5thシングルとしてリリースされた「夏の恋人」について語っていきます。またこの曲は、4thアルバムSHISHAMO4の9曲目とSHISHAMO BESTの5曲目にも収録されています。

簡単に説明すると、”ちゃんとした大人になるために恋人との別れを決断する女性の心情”を描いた歌になっています。SHISHAMOにとって初のバラードシングルでもあるんですよね。YouTubeにて、MVが公開されていますので載せておきます。


それでは、歌詞や曲について語っていきます。

1番Aメロの歌詞

今日も目が覚めて聞こえるのは
蝉の声とあなたの寝息
こんな関係いつまでも きっとしょうもないよね
だけど夏が終わるまで
きっとあなたもそう思ってるんでしょう?
じめじめする部屋の中  

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

「今日も目が覚めて聞こえるのは蝉の声とあなたの寝息」から夏だということと、二人は一緒の部屋で生活していることが分かります。本当に外で蝉が鳴いていて、布団で彼が寝そべっている情景が目に浮かんできますよね。

主人公の彼女にとって、彼との関係を「しょうもない」と言っていることから二人で一緒にいることが自分にとって良くないことだと悩んでいるようですね。そうは言いつつも、「だけど夏が終わるまで」と二人の関係を今すぐ切ってしまうことはせず、先延ばしにしていることから二人でいることが幸せだと伝わってきます。

「きっとあなたもそう思ってるんでしょう?」と彼もまた私(主人公の彼女)みたいに本当はこのままの二人の関係でいることは良くないと思ってるんでしょということですね。

「じめじめする部屋の中」というフレーズはもちろん夏の暑さでじめじめするということだと思いますが、はっきりしない主人公の心の内もじめじめしていると歌ってるように思えます。

この主人公の彼女の具体的な設定は歌詞に出てきませんが、何かやりたいことがあって夢を追っている最中なのか、それとも大学生で就活の時期なんでしょうか?そういう自分が何者でもなくて気持ちが不安定な時期に心の穴みたいなものを満たしてくれる彼に出会ったように思えます。

1番Bメロの歌詞

いつまでもここにいたいけど
ねえ、だめなんでしょう?
だから今

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

彼といる時間は幸せだけれど、このままじゃ私何も成長できない…「ねぇ、だめなんでしょう?」と心の中の自分に問い掛けている訳ですね。

「だから今」はこの後のサビに続きます。

1番サビの歌詞

夏の恋人に手を振って 私からさよならするよ
季節が巡って また夏が来たとしても
そこに二人はいないでしょう
きっと泣くのは私の方だけど 私からさよならするよ
だめね、私

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

彼と別れることを心に決めたようですが、来年は私達もうここにいないのかということを想像している主人公から、この関係が終わってしまうことの名残惜しい感じが伝わってきます。

「私からさよならするよ」というフレーズは行動面としては彼よりも先手を切る行為だから彼女の決心した強さを感じるものの、「きっと泣くのは私の方」と感情面では本当は悲しくて仕方ない彼女の弱さが垣間見えるんですよね。

恋人との別れって基本的に嬉しいではなく悲しい出来事だと思うんです。それに今回の場合は彼を嫌いになったから別れる訳ではなくて、好きなのに別れようとしているじゃないですか。それは泣いてしまいますよね。

2番Aメロの歌詞

潰れかけたコンビニで 小銭だけを持ち寄ってアイスを買う
あなたはいっつも一番安いシャーベット
公園では夏休みの子供達 それを眺めながら
またあのじめじめした部屋に帰る
大人になんてなりたくないなぁ

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

2番のAメロでは二人の日常が出てきます。ここら辺の歌詞が彼のすべてを物語っているんです。

「潰れかけたコンビニで 小銭だけを持ち寄ってアイスを買う あなたはいっつも一番安いシャーベット」というフレーズ。この彼は経済的にあまり安定していないことがわかります。また、「公園では夏休みの子供達 それを眺めながら またあのじめじめした部屋に帰る」からは、一般的に社会に出て働いていたら大人に夏休みなんてないじゃないですか?公園で夏休みの子供を眺める時間があるってことはフリーターか何かで多分あまり将来のこととか何も考えていないことが伺えます。

主人公の彼女は「そういう大人なりたくない」と思っています。確かに毎回一番安いシャーベットを買うような感覚って、実際どこか虚しさを感じると思うんです。そうは言いながら彼女もその現状の生活にどっぷり浸かっている訳であって、ある意味気楽でそれはそれで幸せだから中々抜け出せないでいるんですよね…。

2番Bメロの歌詞

いつまでも子供でいたいけど
ねえ、だめなんでしょう?
だから今

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

いつまでも子供でいたいなぁと思いつつも、ちゃんとしたカッコイイ大人になりたいから…「ねぇ、だめなんしょう?」と一番同様に心の中の自分に問い掛けていますね。

ここの「だから今~」のロングトーンが個人的に好きでライブで聴くと毎回鳥肌立つくらい心掴まれるんです。本当に主人公の彼女が彼と別れることに葛藤している感じが伝わってくるんです。

Cメロの歌詞

もう一人の私が私を引き止める声がする
「このままでもいいじゃない
この夏に閉じ込められて
一生大人になれなくても」

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

「もう一人の私」というフレーズからも読み取れるように、主人公の彼女の中に対立している二人の自分が存在しています。それは、これまでの歌詞からもわかるように、「彼とサヨナラすると決めた私」と「このままでもいいじゃないかという私」ですよね。その二人の自分がいがみ合っている為、中々現状から踏み出せないでいる訳ですね。

「このままでもいいじゃない この夏に閉じ込められて 一生大人になれなくても」からは、このままの関係で居続けるのもそれはそれでいい選択なのかも知れないという彼女の心の迷いが表現されているように思います。

最後のサビの歌詞

夏の恋人に手を振って 私からさよならするよ
幸せな二人だけど あなたも私もきっと
このままじゃどこにもいけないから
きっと泣くのは私の方だけど さよならするよ
だめね、私

「夏の恋人」作詞:宮崎朝子

最後は彼と別れることを決断しましたね。

「幸せな二人だけど あなたも私もきっと このままじゃどこにもいけないから」というフレーズ。幸せなんですよねきっと…でも、二人でいる事が私にとっても彼にとっても為にならないからと関係を断ち切ることを決めたんです。彼女の気概を感じられますよね。

別れる時にきっと泣いてしまうことを「だめね、私」と言っていることから、最後くらいは子供みたいに泣くのではなくて、大人で強い私でさよならしたいという彼女の気持ちが表現されているように思えます。

まとめ

彼のことは好きだけど、二人でいることが二人にとって良くないから別れを決めたという歌詞で、別れを選択することに何度も悩んで葛藤している女の子が印象的ですよね。

なんとなく大人っぽい二人を描いているように思いますが、彼の方は何も考えていないタイプの男なんですよね。でもそういう気楽な彼だからこそ、彼女は支えられていた部分があったように思えます。

今回のこの曲は大好きだけどちゃんとした大人になるために二人は別れてしまったじゃないですか。だから、そんな二人が何年かして成長した状態で再開してまた結ばれたらいいのにな…なんて勝手に想像してしまいます。

今回のこの曲もSHISHAMOお得意の季節感と情景が見えてくる歌詞が出てきましたよね。「今日も目が覚めて聞こえるのは 蝉の声とあなたの寝息」や「潰れかけたコンビニで 小銭だけを持ち寄ってアイスを買う あなたはいっつも一番安いシャーベット」というフレーズ。いやー、さすがですね。

SHISHAMOは夏のシングルを大事にしているそうで、この”夏の恋人”はバラードでいくと決めてから、気合い入れて何曲か作った上でこの曲に決まったそうです。本当にサウンド面ですけど、夏が過ぎ去っていく空気感と二人の関係性が終わってしまう寂しい感じが上手く曲で表現されていますよね。

またMVも個人的に好きでして、電車からひまわりが咲いているのが見える風景や、棒アイスを食べているシーン、線香花火が燃えて消えていく儚さなど夏を感じる要素がたくさん含まれてるんですよね。何より一番のポイントは海をバックにボーカル宮崎朝子が最後のサビをアカペラで歌唱するところ(MV4:20辺り)で波の音もきれいに入っていて見どころ満載です。

2023年2月4日にSHISHAMO10周年を記念したコンセプトアルバム「恋を知っているすべてのあなたへ」がリリースされました。そのDisc2の恋愛の痛みの8曲目にも収録されています。

そして最新情報として、2023年11月8日に新しいアルバム「ACOUSTIC SHISHAMO」がリリースされることになりました。今回の”夏の恋人”が収録されており、先行配信されています。また、YouTubeにてSHISHAMO×安斎かりんスペシャルコラボムービー「夏の恋人 ACOUSTIC SHISHAMO ver.」が公開されています。このムービーは「顔だけじゃ好きになりません」の作者である安斎かりんさんが「夏の恋人」を題材にして、漫画を描き下ろしされたそうです。素敵なムービーになっているので是非一度ご覧ください。

また、今回のアコースティックバージョンはギターではなく、ピアノ弾き語りアレンジになっているのでそこも注目ポイントです。原曲とまた違って聴くことが出来ます。

いかかでしたか。夏の終わりにピッタリな曲なので、皆さんも是非聴いてみて下さい。


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