新しく買ったPCが、思ってたんと違ったんよ
使っていたノートPCが急に充電できなくなったので、新しいやつを買った。
仕事終わりに電気屋にかけこみ、実物を比較しながら、今の自分にはちょっとオーバースペックな気もするけどイカしたデザインのやつを買った。
お店で注文してから、届くまでには1週間程度かかるとのこと。
後日、待ちに待った新PCが届いた。ところが。
ウキウキしながら初期セットアップをしていると、ある違和感に気づいた。
「あれ、なんか画面がモヤっとしてないか?」
ディスプレイはくっきり見える有機ELのを買ったはずだが。
おかしいなと思ってよくよく調べると、なんと、有機ELが搭載されているのは最上位モデル1種類のみで、私が買ったものは液晶ディスプレイと書いてあるではないか。馬鹿な。
みぞおちあたりに軽いボディブローを食らったようなショックを受け、ぐふぅと声が出た。
「でもまぁ、液晶ディスプレイでも普通に使えるは使えるし、事前にちゃんと調べなかった私が悪いのだ」
多少の画質の荒さには目をつぶって、この子を末永く使うとしよう!
……と思って1営業日頑張ってみたが、無理だった。
胸のモヤモヤは、払えど払えど濃くなる一方である。
店に展示されていた実機は、確かに有機EL版だったはず。
商品選びで対応してくれた店員さんは、ディスプレイの違いについては特に言及していなかった。なんなら、
「同じものが届くんで、手続きの間に触ってみてくださいねー」
とか言ってたぞ。
数年に1度あるかないかの、決して安くないお買い物。この大きな差を説明せずに売るのは、さすがにちょっとあんまりではないか。
最上位モデルがバカ高いものだったら諦めもつくが、私が買ったやつと価格が1万円くらいしか違わないから、余計に口惜しい。
「よし!なんとか交換して貰えぬものか、お店に聞くだけでも聞きに行ってみよう」
仕事が終わったその足で、鼻息フガフガと電気屋に向かった。
「店員さんに話を聞く前に、まず売り場を確認しよう」
幸い、実機展示のレイアウトは購入時から変わっていなかった。私が買ったモデルの前に立ち、画面操作をいくつか試してみる。
「うむ、くっきり見えるな。やはり有機ELだ」
隣に展示されていた一世代前のモデルも確かめると、こちらも有機ELだった。
しかし。2つならんだ展示を見ると、最初に来た時には気づかなかったある違いを見つけた。
一世代前のモデルには、キーボードに「有機ELモデル」と書かれたシールが貼ってある。
私が買ったモデルには、そのシールがない。私は嫌な予感がした。
有機ELディスプレイは、横から見ても画面がクリアに見える。対して、液晶モデルは横から見ると画面が暗くなって、まともに見えなくなるという違いがある。
私が買った方を横から眺めると、果たして画面がブラックアウトしているではないか!馬鹿な。
なんのことはない、正しい液晶モデルの実機が展示されていたのに、私がそれを勝手に有機ELモデルと錯覚していたのだ。
どこに出しても恥ずかしくない、純度100%混じりっけなしの弊過失である。
術が解ければ不思議なもので、こちらとあちらで斜めから見比べたディスプレイの色が全く違うし、画質の違いも明らか。
私は狐につままれたような気持ちになった。
思えば私は、これまで液晶と有機ELの違いなんて考えたこともなかったし、情報を仕入れようとも思わなかったし、ぱっと見両者の違いがわかるほど目が肥えている訳でもなかった。
こういう時、自分は自分が思っている以上にいい加減でポンコツな作りをしていることに気づくのだ。
振り上げた拳をどこにおろせばよいかわからず、私は気持ち握りを緩めた拳を掲げたまま、すごすごと帰宅した。
家に帰って新PCの電源を入れた私は、顔認証のカメラからちょっとだけ目を逸らし、
「HDディスプレイも普通に綺麗っスよね。これからよろしくお願いしやす。ヘヘッ」
と控えめにキーボードを叩き始めたのだった。