差別発言の破壊力―10代少年が書類送検される
千葉県に住む10代の少年が、在日コリアン3世で多文化交流施設「川崎市ふれあい館」館長の崔江以子さんをインターネットの掲示板で侮辱したとして、神奈川県警川崎臨港署が、この少年を侮辱容疑で書類送検したとのこと。
崔さんの弁護団によると、崔さんは今年2月、「お前、何様のつもりだ!日本から出ていけ!」のタイトルでスレッドを立てられ、「バカ野郎!死ね!」などと投稿されたといいます。
崔さんは、以前にも匿名のブログで「日本国に仇なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」と差別されたとして、訴訟を起こし、横浜地裁川崎支部から既に判決(2023年10月12)が出ています。
この判決では、「帰れ」はヘイトスピーチ解消法に定める差別的言動に当たり、憲法13条で保障される人格権を侵害する違法なものと認定し、茨城県つくば市の篠内広幸氏に対し、194万円の損害賠償を命じています。
『在日コリアン崔江以子さんへのヘイトスピーチ訴訟で判決「祖国へ帰れ」は違法』石橋学・『神奈川新聞』記者|2023年10月20日9:11PM
https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2023/10/20/antena-1348/
それにしても、10代の少年がレイシズムに染まり、ネット掲示板で差別を煽るようなことをしたとは・・・これは、日本社会全体の雰囲気を端的に現しているのではないでしょうか。
近年、在日コリアンが日本社会おいて優越的な権利、「在日特権」を有しているというとんでもない妄想を撒き散らす声の大きな輩が目立つようになってきています。
また、そのような妄想を暗黙裡に助長するかのような権力者の行為も散見されます。例えば、2017年以降、小池百合子都知事が関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文の送付を取りやめていることなどです。
差別的発言にも表現の自由があるし、さまざまな考え方がを許容すべきだとか、たかが言葉に過ぎないだろうとか、ヘイトスピーチを擁護するような言説を撒き散らす人もおります。
三木那由他(哲学者)さんは、差別的発話の実質的な影響について次のように指摘しています。
「魚は頭から腐る」とよく言いますが、組織や社会でも同じでしょう。「社会は頭から腐る」のです。
この10代の少年を生みだした社会の構造的要因、社会の心性が問題なのだと思います。
喫緊の課題は、差別的発話についての真摯な考察と共通理解ではないでしょうか。それには、三木那由他さんなどの分析哲学の諸概念はとても役に立つように思います。
以下のnoteもご参照願います。