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2024年を振返る?
1.2024年を振返るということ
毎年、年末になるとその年を振返る言説がテレビやラジオから流れてきます。私自身もなんとなく「今年はどんな年だったかなぁ」と、振返ったりしながら家でまったりと本を読んでいます。
でも、ある本を読み進めていたら、今年だけを振り返るようではダメだ!2024年を一定の歴史の中に位置づけて振り返るべきだなと思い始めました。
そのある本とは、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんの『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(2024.12.31 朝日新書)です。
山崎雅弘さんは、戦前戦中からの歴史的文脈に今の日本を位置づけ、「平和国家の底が抜けている」「倫理の底が抜けている」「法治国家としての底が抜けた」「議会制民主主義の底が抜けた」「報道の自由の底が抜けた」「公正の底が抜けている」等々と警鐘を鳴らしています。
「2024年、印象に残ったのは何か?」という問いは、あまり意味がないように思います。
2024年を振返る意義は2024年の歴史的意義、2024年の歴史の中での立ち位置を少しでも理解し未来へとつなげていくことだと思うのです。
歴史的文脈に位置づけなければ「2024年とは何であったのか?」は、わからないかもしれません。
2.底が抜けるということ
山崎雅弘さんが指摘しているように、確かに今の日本はあらゆる領域で「底が抜けている」と思います。この場合の「底が抜けている」とは、 極端に、際限なく劣化しているという意味でしょう。
私は、2024年の日本で底が抜けてしまったのは選挙ルールではないかと思います。
2024年7月の東京都知事選挙や11月の兵庫県知事選挙では二馬力選挙とか、SNS上でフェイク情報等々を撒き散らすなど、選挙ルールの底が抜けてしまいました。選挙は民主主義のファンダメンタルですが、その基盤の底が抜けてしまった年です。
オールドメディアに騙されるなと言われ、ニューメディアを使った政治屋に騙される人たちが思ったより多いことが判明しました。
政界、財界、司法、行政、マスメディア、民主主義、国民も底が抜け、劣化が止まらなくなっています。
3.戦前回帰
2024年は、戦争ができる国造りに邁進した岸田政権から総裁選挙前の約束を安易に翻す軍事オタクの石破政権へと変わった年でした。
軍事費が1.6倍(2023年~2027年)にも急増しているのに2024年の介護報酬改定は1.59%の伸び率です。
軍事費の60%増と介護報酬の1.59%増、これが今の日本の政治状況を如実に表しています。
軍拡のために更なる増税も予定されています。はもはや「新たな戦前」なのでしょう。
山崎雅弘さんは戦前・戦中の日本の状況を次のように紹介しています。
昭和初期の日本国民は、大正期には存在した「個人としての主体性」を捨て、政府や軍部の掲げる大義に従順に従い続けました。日中戦争の勃発後、国民生活のレベルは急速に悪化し、戦争末期には食糧不足が深刻化しましたが、それでも多くの国民は政府や軍部の失敗を批判せず、我慢と工夫で状況に適用し続け。敗戦まで政府に隷従しました。
当時の日本人と今の日本人とあまり変わりませんね。
2024年の日本人は「市民としての主体性を捨て、重税に耐え、貧困に耐え、子ども食堂に通い、政府・自公政権を批判することなく我慢と工夫で耐え忍び、政府自民党に隷従する国民」です。
日本人は何があっても騒がず、大人しく権力・強い者に付き従うこと、阿ることが成熟した大人だと教育されてきています。隷従することだけが求められているので、当然、コミュニケーションは必要ないのです。
コミュニケーションする意志も能力も失っているのが戦前、戦中の日本人であり、昨今の日本人なのです。
4.言葉を取り戻そう
言論の府である国会でさえも政府が詭弁を弄しコミュニケーションが成り立たなくなってしまっています。論理・言葉が軽視されてしまっています。
私たちは、まず言葉を取り戻さなければなりません。
特に、オブラートに包み込んだようなマイルドな言葉を使用していると事の本質を見失うように思います。
防衛装備品とは要するに武器でしょう?
反撃能力とは先制攻撃でしょう。
骨太の政策と言いますが、骨太って何ですか?骨太とさえ言えばしっかりした政策となるのでしょうか?単なる印象操作では?
裏金の問題で、よく「政治とカネ」と言いますが、ようするに、汚職であり脱税のことでしょう!
言葉、概念を吟味すること、問うことが大切だと思います。
介護の世界でも同じでしょう。自立とは何か、自立支援とは何か?意志とは何か?意志決定支援とは何か?生産性とはなにか?介護における生産性向上とは何か?
言葉を吟味しながら、コミュニケーションを拒否している人たち、コミュニケーションが難しい人たちとも、しつこく、粘り強くコミュニケーションを続けていくなかでしか未来は見えてこないように思います。