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社会的弱者を食いものにするビジネスモデル


 厚生労働省は、訪問看護事業の診療報酬や障害者のグループホームでの障害福祉サービス等報酬の虚偽報告による不正受給の疑いがあるとして、東京都に本社がある大手運営会社「恵(めぐみ)」(本社・東京都港区芝5丁目3番2号 +SHIFT MITA6階が経営する系列の社会福祉施設や事業所を調査しているといいます。
 また、同社運営のグループホームでは食材費の過大徴収や利用者への虐待も判明しているとのことです。
 訪問看護ステーションに以前勤務していた複数の看護師は取材に対し「診療報酬の加算を受けられるように早朝や夜間に訪問したとする虚偽の記録が作成されていた」と証言しております。

 まさしく、障害者を食いものにしたビジネスを行っているようです。
 ただ、このようなビジネスモデルは高齢者介護とほぼ同じだと思います。

ビジネスモデル-不正の手口-

 障害者や障害高齢者を食いものにする事業者のビジネスモデルは次のようなものなのでしょう。

  1. 「健康管理」などの名目で、ホームの入居者に症状に関係なく週3回の訪問看護をほぼ一律に契約させる

  2. 1人5分程度の短時間で多数の入居者を巡回

  3. 早朝・夜間に訪問したように虚偽の記録を作り、診療報酬の加算を不正請求する

  4. 必要ないのに複数人で訪問

 障害者、高齢者を食いものにするビジネスの基本目標は「儲けろ」でしょう。
 そのために、「生産性向上」、「効率化」が最重要課題とされるのです。この生産性向上のためには、個々の利用者のニーズ、都合ではなく「一律のサービス提供」「最大量のサービス提供」が具体的な達成目標とされ、その目標達成のため、虚偽の記録、不正請求へと一本道を歩んでいくことになるのでしょう。

数字至上主義

 ある、訪問看護事業所の会議資料には、売り上げや利益率の目標がずらりと並び、目標として「確実に日本1にする」との文言が掲げられていたといいます。そして、「経営陣の口癖は『数字で判断せよ』」だったといいます。
 高齢者介護事業でも数量目標が掲げられることがあります。
 入居施設でいえば、入居率、稼働率、顧客単価、1日当たり平均利用単価、施設長営業目標(新規入居者獲得数)等々。
 在宅サービスでいえば、稼働率、1人当たり訪問回数、1人当たりケアプラン作成数。
 特に問題だと思うのは、ケアプラン率です。これは、区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額)の何パーセントを実際にサービス利用させたかという数値なのですが、利用者のニーズに関係なく、一律90%以上にしろとか、このケアプラン率で賞与を決めるとか・・・
 ようするに、利用者の必要や都合ではなく、会社の儲けのために過剰にサービスを提供しようということなのですが、看護職員や介護職員等の人手不足の場合には、実際にはサービス提供していないのにサービスしたことにする(虚偽報告)わけです。
 数値、数値とうるさい会社は数値しか見ていない、つまり、利用者を人としてみていないということです。
 
 数字至上主義の経営者、管理者の特徴は事業意欲旺盛で目的完遂型のバリバリの経営者やり手の経営者なのかもしれません。
 でも、いくらやり手の経営者でも、不正請求はよくありません。不正請求は保険詐欺なのですから。

コモンとしての福祉サービス事業

 障害者サービスや高齢者サービスなどの福祉サービス事業は、水道や電気事業などと同じように、みんなのためのサービス、みんなのコモン(common;共有財産)です。
 市場原理から離れた領域としての福祉事業の領域を地道に拡大していくことが、地域のコモンを育み豊かな社会を創っていくことになるのではないでしょうか。
 今回のこの事件から、コモンとしての事業が短期的な利潤を追求する大企業、障害者やお年寄りを食い物にする大企業に牛耳られてしまっては、地域のコモンである福祉事業ネットワークが衰退してしまう怖れがあるということがハッキリしたのではないでしょうか。

 いずれにしても、このコモンとしての事業に参入する営利企業は高い倫理が求められていますし、それを市民、利用者とその家族が監視できる仕組み作りが急がれています。


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