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あの呪いはいったい何だったのか(容姿コンプレックスOrigin11)

呪いの主は呪いを忘れる

 今、気が付きました。
 母の不気味な予言:「番茶の出花」の呪いは、あたしが小学校の時にかけられて根を下ろしたのですが、それ以降は耳にしていないってことに。

 中学校の時にも聞いていない。
 
 10代の終わり娘らしくなって、色んな人とデートしてる頃になると、母もすっかりそんな事は忘れているようでした。
 あたしは相変わらず容姿コンプレックスを抱えながら”楽しくも苦しく”デートしてたんだけどさ。ふん。

 ですから、「ほら、今のうちよ。」とか、「婚約してしまいなさい」という呪いのダメ押しみたいなことは一切なかったのです。(あったらコワイよな)
 なかったけど、あたしが勝手に呪いにやられて長続きさせていたのよ。

 なんだったんだ。あの発言は?
 君が忘れていたって、罪が消えるわけじゃないからね!ママ。 
 この言葉を今母となった自分に自戒として植え付けておこう。

なんでその男だったの?


 さて。まだ 「呪われた長続き」の途中にあった頃。

 大学生になっていたあたしに、ある時父が鋭いことをききました。
「お前ね。なんであの男なの?」

 もっともな疑問です。
 色んな人とデートしていると言っても、あたしには彼氏がいましたから、他の男子はみんな友達です。
 彼氏以外はみんな「気の合った」人たちでした。(涙)
 家にも色々と遊びに来ました。あたしが彼氏とだけコミュニケーションに苦労している、というのは家族にも見て取れたのでしょう。

 また、うちにはもとから大学生の男子が(たまには女子も)たくさん出入りしていました。家業のアルバイトに使っていたのと、あと、父は若い男子に非常に人気がありましたので。
 だからもっとオトナの男子もよく訪ねてきてました。
 気が合う人もちらほらいました。
 
 加えて三軒隣の伯母の家は下宿屋でしたので、大学生ぐらいの男子については、あたしは相当の数を見ていた、といえます。幼児の頃からずっと19歳から23歳ぐらいまでの年齢層の子たちを見続けてました。
 長い間かけて、男を見る目が育っていくような環境だったのです。これはちょっと特殊かもしれませんね。 
 
 父はその時はもう彼をよく知っていました。彼もアルバイトとして出入りしていたからです。 
 彼は父が大好きで、はっきり言って”ファン”でしたが、父も時々彼の日本語には苦しんでいて、著中見舞いのハガキなどを「おい、翻訳してくれ」などとあたしのところに持ってきていました。

 なんでよりによって、あの男なのか。
 もっともな疑問なんだけど、こればかりは説明が難しいです。それに、これをあたしに面と向かって聞いたのは、実は父だけでした。
  
 友達は男子も女子もだれも、この至極もっともな疑問を口に出さずにそっとしておいてくれたのです。
 そっとしておいたというか・・・はたで面白がっていたというか。
 どっちでもいいけど。

恋に落ちない間柄

 
   だってパパは勉強のできる子が好きなんじゃん?と思いつつ黙っていると、父は見透かしたように 「学校の成績と学力は違うよ。仕事の能力も別」 といい、あたしをさらにうなだらせました。  父はしかしその後「なんで○○じゃないの?」と続けました。

 はっ、としました。
 それであたしは答えることができたのです。
 その疑問なんだったら、答えられる。
 何であの男なのかは答えるのが難しいけど、何で○○君じゃないのかは答えられる、と思いました。

 ○○君というのは、小中学校で一緒だった同級生です。有名大学に入り、その時はアルバイトに来ていました。つまりあたしのBFとはアルバイトの同僚という位置におりました。 

 ○○君は中学校時代、女の子に死ぬほどモテてましたけど、そのことを自分で意識していないバンカラ風で、おじさんウケはもっとよかった。あたしが知る限り、一番おじさん達に愛される青年に育っていました。それでそのころラグビーばっかりやってて、話すこともラグビーまみれでした。

 彼とあたしが仲がよかったのは小学校6年から中学3年までで、とりわけ密だったのは6年生の時に金魚と熱帯魚の話で盛り上がった時です。中学の時は仲良くしてると女子ににらまれましたけど、いい勉強仲間でした。

 「パパ、そうなるんだったら、とっくにそうなっているんだよ。これまでこんなに一緒にいて、そうなってない人とはこれからもそうならないの」 と、あたしは言いました。 

 ○○君はすごく素敵だったのでしょうけど、あたしにとっては「えーっ。そんなスポーツの話わかんない。そんな汗臭い体育会の話面白くないもん。もっと金魚の話をしようよお」みたいな感じだったのです。

 だからって彼氏が金魚を語ってくれるわけじゃないんだけどさ。汗臭い話もしないけど。何の話してたんだっけ?(遠い目)
  
 一番決定的なのは、彼氏は曲がりなりにもあたしを「女性」として見ていたけど、○○君は「金魚仲間」として見ていたというところでしょう。

 女の子はたぶん男の子を能力で選んでいるんじゃないんです。
 運動ができる、勉強ができる、優しい、姿もいい、仕事ができて頼りがいがある、そういうことを言ってうっとりする前に、必ず違う何かがあるはずです。
 逆に言えば、そんな電化製品のスペックみたいのは、なくたって、恋に落ちる時は落ちるんじゃないでしょうか?
 魔法というか、ご縁というか、あたしの場合は”母の呪いと偶然”?

 何でもいいんだけど、それがあるかないかは、非常におおきいことだと思われました。
 それがないと、女の子は女の子のオーラを出すことがなくて、そうしたオーラを受け取ることなしには、男の子も恋には落ちないのではないかと思われました。(常にやたらと女のオーラを出している女子は別)

あたしはめったに女になんない

 それで。実はあたしはそういう特別のものを感じることが、何だかやたらと少ないような気がする女子でした。
 男子は男子に見えますけども、めったにオトコには見えません。オスにも見えないし。

 「あれらは午後6時過ぎるとオスになるから気をつけなさい」などと母は無責任なことを言ってましたが(きっと経験談だな)あっちがオスになってもこっちがメスを垂れ流してなきゃ大丈夫なんだよ!と思ってましてねー。
 すごい自信だな。

 自信。それです。
 あたしはメスを垂れ流さない自信があるけど、メスとしては自信がない。
 男子がいくら大切にしてくれても自信がない。
 「金魚仲間」は決して自信を与えてくれない。
 ついでになぜか彼氏も自信を与えてくれない。与えてくれるのは彼氏だけのはずなのに、与えてくれない。
 さまよえるメスでした。
 
 もう死んじゃってるけど、これですっかり解るかな?パパ。

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