日本出版美術家連盟、のことなど その3
同業者のかた、儲かっちゃったときどのような手を打ちますか?って話の続きです。
団体を作った先輩方は、フリーランスの生活を守るために、そういう事も考えてくれていたようです。『文美国保』(文芸美術国民健康保険組合)というのを聞いたことありますか?文筆業や美術家など、所得が不安定な職業の人たちのための国民健康保険組合です。サービスは市町村国保とほとんど変わりません(地域差がある問題なのでイコールではないでしょうが)。ただ、収入に関わらず、保険料が一定なのです。所得が多い人には朗報です。
この組合員になることの条件のひとつに、「加盟団体のひとつに所属していること」というのがあるんです。ですから、文美国保に入るメリットを享受するために団体に所属する人もいます。団体メンバーであっても文美国保を選ぶ義務はないですが、選ぶには団体所属が必要なのよ。
組合の加盟団体は業種別にさまざまありますが、実績のある職能団体でないと加われませんから、ここに加盟しているってことが、その団体が「クラブ活動みたいなものではないよ、プロの集団だよ」、という一つの目安にもなります。プロアマの境目があいまいになってきた昨今では事情が変化してきているでしょうが、始まりはそういう事でした。文美国保のサイトで加盟団体一覧を見てみてください。
あたしが所属するJPALは、この組合の設立にも関わったそうです。戦後の娯楽として出版文化が花開いたころの作家先生や挿絵画家の先生方の中には、お金をすごく稼ぐ人がたくさんいたのだと思います。一生人気者だった岩田専太郎先生など、倹約できた金額も半端ないでしょうね。
新聞連載小説の挿絵など、毎日載るわけで、たちまち家が建つ、という時代があったそうです。あったそうです、なーんて他人事のように言ってるのは、自分がそうじゃないからですけど(笑)。
じゃ、関係ないじゃん、貧乏人なんだから、ってことになるかというと、実はそうじゃないです。貧乏人ほど、所得が多かった年に取られるものだけがばっと取られていたら、一生の収支が合わなくなります。退職金も保証もなんもないんですから、自衛しなきゃなんない。そして自衛とは、倹約であり、貯金です。
フリーなんだから、必要経費を膨らませておけばいいんじゃないの?って声が聞こえるけど、それは「使っちゃえばいい」とほぼ同義ですよね。いやいやいや、ここで体力ためずにいてどうする?
たとえ儲かったのがたった1年間とかであっても、あるいは3年間だけで、あとはしゅーっとしぼんじゃったんだとしても、健康保険料が倹約できるんならした方がいいに決まってます。定額ですから、儲けが出てない年には損が出るんで、マメに市町村国保に切り替えるのも自衛。
じゃあどのぐらい稼げばこっちがいいって目安になるの?って話ですが、本人の収入だけで決まるわけじゃないのです。損得の分岐点を考えるときに、見落としがちな要素があるんですよ。
今赤字生活をしているくせにこんなこと書くのは心が痛むが(わはははは)その4につづく、にしちゃおう。
(その1、その2、もよろしかったら読んでみてね)