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東京ノート

本棚から、取り出して、読み返し始めた戯曲「東京ノート」作・平田オリザ。こちらで買い直したものなので、フランス語版。「東京ノート」は初演の時から何度となく繰り返し見てきた作品。自分の置かれた立場や状況、社会の状況が変化していくたびに、異なるところに焦点を当てながら、異なる感想を持ちながら、最後にはいつもちょっぴり泣いてしまう、そんな芝居。日本語の表現とフランス語の表現で(会話における)参考にしたいな、と思って読み返し出したのだが、そうだった。この作品も、どこか「1984」と通じるところのある、「今の世の中を先取りして書かれた作品」なのだった。ヨーロッパが戦場となり、ヨーロッパ中の絵画が、日本に避難してくる、という設定は、近い未来に起こってしまいそうで、なんだかやるせない。この先、どうなっていくのだろうか、本当に。
それにしても、本当によく書かれた作品で、複数のストーリーが解けては絡み合い、けれども混ざり合ってうやむやになるのではなく、一つ一つの物語が、はっきりと描き分けられている。センチメンタリズムは徹底的に排され、が故に、観るものの感情を揺さぶる。どうも、読みながら舞台を頭の中で追ってしまうため、私はもう純粋にこれを「本」としては読めなくなってしまっているのかもしれない。
とにかく、無性にまた「東京ノート」が観たい、と思うのだった。

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