粗利1%の改善で営業利益が10%増えるか検証してみた
はじめに
こんにちは。SYNCA合同会計事務所 共同代表の平川です。
ビジネスにおいて、わずかな粗利改善が営業利益にどれほど大きな影響を与えるか、ご存じでしょうか?
この記事では、1%の粗利改善がどのように営業利益に反映されるかを解説します。
◆この記事を読んでほしい人
◆この記事を読んでわかること
粗利とは何か
まず、粗利(または粗利益)について簡単におさらいしましょう。
粗利とは、売上高から売上原価を差し引いたもので、事業の基本的な収益力を示します。例えば、700円で仕入れたものを1000円で売ったときの残り300円が粗利です。
つまり、粗利は商品やサービスの販売によって得られる直接的な利益(付加価値が高い利益)といえます。そのため、粗利率が高いことは事業の優位性を表してます。
ケーススタディ(小売業)
粗利を1%改善することは、一見単純に見えるかもしれません。そんなことをしても経営はよくならないのでは?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、実際に粗利の改善は営業利益に大きなインパクトを与えます。
以下に具体的な例を挙げて、その影響を見ていきましょう。
例:現在のビジネス状況
売上高:1億円
売上原価:7,000万円
粗利:3,000万円(30%)
販管費(固定費):2,000万円
営業利益:1,000万円(10%)
この状況で粗利を1%改善することを考えます。
粗利1%の改善の影響力
粗利を1%改善するということは、売上高に対する粗利率が30%から31%に上昇することを意味します。売上高1億円に対して31%の粗利を得ると、次のようになります。
新しい粗利:1億円 × 31% = 3,100万円
営業利益への影響
次に、営業利益への影響を見ていきましょう。粗利の増加分はすべて営業利益に直結するため、営業利益は次のように変化します。
旧営業利益:1,000万円
粗利改善による増加分:100万円
新しい営業利益は、1,000万円 + 100万円 = 1,100万円となります。
営業利益が1000万円から1100万円に増えたということは、「100万円分増加÷元の営業利益1000万円」=10%営業利益が増えたことになるのです。
粗利を1%改善するだけで、です。
1%の粗利改善は小さな変化に思えるかもしれませんが、営業利益への影響は非常に大きいことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
粗利の改善は収益性の向上に直結し、企業の財務健全性を大きく改善する可能性があることから、是非取り組んでいきたい論点です。
粗利改善の具体的な方法とは
では、実際に粗利を改善するためにはどうすれば良いでしょうか?
いくつかの戦略を以下に示します。なお、今回は概要のみとして、今後の記事で掘り下げていきたいと思いますのでご容赦ください。
1. 価格設定の見直し
商品の価格を少し上げるだけで、粗利率を改善できます。元々1,000円の商品を1,010円で販売するだけで、1%粗利が改善します。ただし、価格上昇が需要にどのように影響するかを慎重に評価する必要があります。
2. 原価削減
仕入れコストの見直しや、効率的な生産プロセスの導入によって原価を削減することができます。これにより、売上原価を下げ、粗利を改善できます。
3. 商品ミックス(粗利ミックス)の最適化
高粗利の商品やサービスに注力することで、全体の粗利率を向上させることができます。商品ポートフォリオを見直し、利益率の高い商品を強化しましょう。
経営者としての次のステップ
粗利を改善するための取り組みは、企業の持続可能な成長に不可欠です。以下のステップを考慮していきましょう。
現状分析:自社の粗利率はご存じでしょうか。まずはそこからです。現在の粗利率を正確に把握し、改善の余地がある部分を特定します。
改善戦略の策定:価格設定、原価削減、商品ミックスの見直しなど、具体的な改善戦略を立てます。
実行とモニタリング:改善策を実行し、その効果を定期的にモニタリングして必要に応じて調整します。
まとめ
1%の粗利改善が営業利益に与える影響は非常に大きいことがお分かりいただけたと思います。
新たに売上を1000万円増やすことは大変な労力がかかります。一方で粗利の改善、しかも1%の改善でも大きな影響があることがわかれば、手を付けない理由はないでしょう。
「1%と侮ることなかれ」です。
今日本は、未曽有の円安とインフレに対峙しています。
適切な戦略と取り組みで、ビジネスを次のステージに引き上げることを期待し、経営基盤の強化へ邁進していきましょう。