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[音楽キュレーター雑記] Predawn

初めてのPredawn

Predawnは清水美和子によるソロプロジェクトです。初めて聴いたのはYouTubeで公開されているミュージックビデオの「Keep Silence」でした。絵本の世界を彷徨う本人が出演するシュールな映像美をバックにして、ひっそりと始まるその歌声にあっという間に魅了されてしまいました。

ギターのアルペジオは聴き馴染みのない独特のフレーズで、息遣いも鮮明な英語詞が中心のボーカルワーク、絶妙なノイズやバッキングボーカルのフレーズなど、サウンドメイクに抜群のセンスを感じます。これだけの音楽を作る才能を持ちながら、ライブでオーディエンスと目を合わせずに少しはにかんだ表情で天井を見上げて唄うスタイルは、どこか小心者の妖精のような雰囲気です。小ぶりなアコースティックギターを超絶なフィンガーピッキングで弾き語る姿のギャップにも驚きますが、ライブMCでの飾らない言動と振る舞いがさらに天才独特の雰囲気を際立たせていて、非常に好感が持てるアーティストです。

童話の影響が色濃いアルバム作品たち

私がPredawnの楽曲群の中でも、特に気に入っている作品は以下の2つのアルバムです。

1st mini album:手のなかの鳥
 #1 Lullaby from Street Lights
 #2 What does it mean?
 #3 Suddenly
 #4 Custard Pie
 #5 Little Green
 #6 Apple Tree
 #7 Insomniac

1st Album:A Golden Wheel
 #1 JPS
 #2 Keep Silence
 #3 Tunnel Light
 #4 Breakwaters
 #5 Free Ride
 #6 Milky Way
 #7 A Song for Vectors
 #8 Drowsy
 #9 Over the Rainbow
 #10 Sheep & Tear

この2枚に共通しているのは、本人も公言している通り児童文学作家の小川未明の童話の影響が、アルバムタイトルやミュージックビデオに色濃く出ている点です。また、彼女の代表曲とも言える「Suddenly」と「Keep Silence」のギターフレーズは、それぞれの楽曲毎に明暗がくっきり分かれているのですが、前者は良質の絵本を読み終えたような爽やかさ、後者は不思議な絵本の中に取り残されたような余韻が残ります。私が一番好きな曲は「Tunnel Light」で、どこか淡いブルーを連想させる全体的なイメージの中に、彼女の聴き取りやすい英歌詞のフレーズが溶け込んでいて、完成度が非常に高くライブでも会場ごとにその輝きが毎回変化する素敵な楽曲です。

Predawnのライブパフォーマンス

Predawnのライブの特徴は、その会場の選定にあると常に思います。アリーナのような大きい会場で大勢のオーディエンスの前で歌う姿はちょっと想像がつきませんが、小規模会場で演奏するライブの世界観はその会場を含めた全体が一つの異空間になっている様な感覚を覚えます。

小規模な屋外ライブステージもお勧めで、有名なロックフェスティバルの小さいステージはもちろんのこと、上野恩賜公園の野外ステージ(旧:水上音楽堂)で行われる音楽フェスはかなり高頻度で出演されるので、何度でも足を運びたくなります。

特に印象深かったライブ会場を挙げようとすると選ぶのがかなり難しいですが、2018年2月にBillboard Live TOKYOで開催された10周年記念ライブは、ピアノ演奏にRayons(中井雅子)を迎えたバンドセットに加えて、ビルボードの素晴らしい音響が相まって忘れられない音楽体験となりました。オープニング曲がお気に入りの「Tunnel Light」で始まり、ボーカルの透明感に改めて鳥肌が立ったのを覚えています。

DVDで映像化されている品川教会グローリア・チャペルのワンマンライブは私が彼女を知る前に開催されていたために現地鑑賞することが叶いませんでしたが、2020年2月に開催された自由学園 明日館講堂でのライブも印象深いコンサートでした。重要文化財である会場に入る所からほど良い緊張感が漂っていて、ポップスのアーティストやロックバンドの鑑賞のような興奮とは一味違ったお洒落で落ち着いたライブ体験が味わえます。

Predawnは、私が長きにわたって注目し続けている国内のフェイバリット・アーティストの一人です。是非、沢山の人に彼女の歌声と楽曲を聴いてほしいと思います。


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