[読書メモ] 日本型プラットフォームビジネス / 小宮昌人、楊皓、小池純司
日本型プラットフォームビジネス
海外メガクラウドのプラットフォーマーから遅れをとっている日本のプラットフォームビジネスにおいて、ゼロからプラットフォームビジネスを構築するだけではなく連携と協創も含めたビジネスモデルの基本型パターンが掲載されている。国内の大企業におけるプラットフォーム戦略の進め方の事例や、中小企業のプラットフォームビジネスの事例などは特に参考になる。
説明本書におけるプラットフォーマーの定義。プラットフォーマーは、需要者と供給者をマッチングするための基盤(プラットフォーム)を提供するプレイヤー。
プラットフォーマーというプレイヤーの関係者(ステークホルダー)には、供給者(サプライヤー)、需要者(ユーザ)に加えて、エコシステムを形成するパートナーが存在するということ。
自然界で受粉する花の周りには、太陽や風、昆虫などの様々なステークホルダー(パートナー)が存在することと同じ。
供給者自身の質、あるいは供給側のサービス品質の向上が重要ということ。例えば、YouTubeであればコンテンツの提供者とコンテンツそのものの質が高くなければ、需要者は増えないし継続的に利用しない。APIやデータを提供するプラットフォーマーであれば、魅力的で価値の高いAPIやデータの質が重要になる。
大企業のプラットフォーム展開の発想は、①しかないと思いがちだが、エコシステムの作り方次第では②の戦略も有効に機能する。一方で、②の戦略は参入の仕方を間違えると、既存プラットフォーマーと従属関係が生じてしまう恐れがある。
・GAFMA(ガフマ):Google、Amazon、Facebook、Microsoft、Appleの頭文字をとった米国のメガ企業のこと。GAFAM(ガファム)ともいう
・XaaS(ザース):X as a Serviceの略。クラウドによって提供されるサービスの総称
メガ企業(GAFMA)は良くも悪くも特定の業界にフォーカスせずに、業界レスで汎用的なXaaSを提供している。つまり、汎用型と特化型(例えば業界特化型)の中間点に位置する機能やサービスを提供できるプラットフォーマーであれば十分生き残ることが可能。
・セグメント(Segment):グループや部分に分けること
セグメンテッド・プラットフォーム(特定領域のプラットフォーム)では、特定領域におけるプレイヤー(供給者、需要者、エコシステムパートナー)の見極めが最重要。さらにそのプレイヤー間のギャップをつなげる触媒として「データ」が存在している点に着目したい。
供給するモノ・サービスがなければ需要者は集まらないから、起点となるのは供給者である。また、供給者は需要者が居なければ集まらないから、必然的にプラットフォームビジネスの初期フェーズではプラットフォーマ自身が供給者を兼ねる必要がある。
・オープン戦略:自社の独自技術を標準化・規格化し、他社に自社技術の利用を積極的に促す戦略
・クローズ戦略:自社の独自技術を秘匿化し、競争優位性を確立する戦略の
モノ売り主体の経済圏ではクローズ戦略が機能することが多かったので、モノ作り大国の日本ではクローズ戦略の方が馴染み深い。コト・サービス売りが主体の経済圏、特にプラットフォーマーは自社技術の積極的な利用を普及させるためにオープン戦略を主軸にした方がうまくいくことが多い。
プレイヤー(供給者、需要者、エコシステムパートナー)のどこから収益を得るかのビジネスモデル設計が重要。特に需要者に関しては、プラットフォーマーから見たときに「直接的な需要者」と「間接的な需要者」が存在する。一般的に、直接的な需要者に財力があるとビジネスモデル設計がシンプルになるが、直接的な需要者にとっての価値や便益まで含めてビジネスモデルを設計しないと、プラットフォームビジネスが継続できなくなる恐れがある。
国内においても、過疎化地域などの無人区間においてドローン飛行の規制緩和が進められている。規制緩和された地域で実績・ノウハウを蓄積して、徐々に日本全土に適用されていくことが期待される。
参考資料:ドローンのレベル3.5飛行制度の新設について:国土交通省
この日本企業の強みが裏目に出て、ソリューションやサービスのサイロ化(情報やシステムが孤立し共有・連携できていない状態)が散見される。
プラットフォームビジネスは技術が「普及」し展開されることが重要なので、サイロ化してしまったシステムではプラットフォームビジネスは出来ない。
・EC(Electronic Commerce):電子商取引のこと
プラットフォームビジネスを海外展開する際に考慮すべきポイント。資生堂がアジア展開する際には中国のアリババと戦略業務提携し、EC事業のチャネルを活用している。
既存のプラットフォーマーを需要者(顧客)と捉えた場合、プラットフォーマーにとって需要のあるものは、プラットフォーマーが持っていない機能とデータである。ポイント②では、その機能とデータを特定し、ポイント③でその機能とデータを展開可能な形にする。具体的には、データの品質を上げたり機能をAPI化して利用しやすくする。
プラットフォーム連携の「標準型」は、連携したい側が「標準型」に合わせる必要がある。従って、必然的に連携したい側は複数の「標準型」の接続方式(インターフェース)をサポートしなければならない。
複数の接続方式をサポートするための開発には莫大な工数とコストが必要になるため、最初に連携するコアプラットフォームを定めて連携したのち、ビジネスが軌道に乗ってから次のアクションを考えるのがよい。
ビジネスが軌道に乗ってくれば、複数の接続方式をサポートしなくても相手側が接続方式を合わせてくれる可能性もある。
需要者やプラットフォーマーにとって価値のあるものは、他社にはない機能とデータである。自社ノウハウをアプリケーション化、すなわち機能やデータとして提供できればビジネスが成功しやすい。
エコシステムパートナーのカテゴライズ(分類)はとても参考になる。コンサルティング/戦略提案するパートナーや、共同開発者など、プラットフォームに関わるステークホルダーにとって如何に価値を提供できるかがプラットフォームビジネス成功のカギとなる。
これは中小企業、大企業を問わず起こりうる事象。意思決定権限のある経営者自らがプラットフォームビジネスを推進する企業だけが、新たなコンセプトを実現するための第一歩を踏み出すことができる。
端的に重要なことは「何を実現したいか」という「意思」であるということ。誰とどの様に行うかは手段であり、「何かを実現する」ためにプラットフォームという形態を利用することが強力な触媒になりうる。
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