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職場を天国にも、地獄にするのも、すべてはリーダーの責任。

優れた「企業文化」を持つ会社は従業員を幸せにする。

これは一見すると正しいようだが、これだけでは十分に正しい解釈にはなっていない。

優れた「企業文化」にフィットした従業員は幸せである。

こちらがより正しい解釈となるだろう。画一化された「企業文化」は万人にとって素晴らしいものではない。自分にフィットした企業文化で働く人が幸せとなり、結果として高いパフォーマンスを発揮するという順番だ。

実際に良い文化・職場づくりの「実践編」においては、手探りで泥臭いハンズオンでのトライ&エラーが必要になる。その過程で、他社の様々なプラクティスを参考にすることは大いに意味があるだろう。人類の長い失敗と成功の歴史から、我々は効率よく学ぶ必要がある。また当然、もてはやされている手法を何でも取り入れば解決するものでもない。自社のカルチャーに本当に合うものを的確に取り入れていくべきだ。

その上では、より網羅的に最新のプラクティスを知りたくなる。そして、それらは実際の現場で実践されているだけではなく、その効果効能に科学的な裏付けあるのが望ましい。

そんな"より良い文化"、より"良い職場"を作るために、「現場での泥臭い実践」と「科学的裏付け」の溝を埋めるような幅広いメニューを提供してくれるのが今回紹介するこちらの本だ。

原題:The Best Place to Work | The Art and Science of Creating an Extraordinary Workplace

海外ではそれなりにヒットしたが、残念ながら日本ではほとんど陽の目を見た形跡がない。大変勿体無いのだが、ぜひオススメしたい一冊。実例とサイエンスの宝庫で、リーダーシップからオフィスデザインまで「幸せな職場」という観点で網羅している。ソフトからハードまで網羅しているためいわゆる"Employee Experience"という観点で人事や組織づくりを見直そうとしている人にも必見だ。

今回は個人的な備忘録も兼ねて、より重要だと思うエッセンスを抽出して紹介する。

失敗を許容する文化がなぜ大切なのか?

偉業や発明、大きな成功の裏には、その光に隠れるように数多くの失敗が存在する。陰と陽、ともすると陽ばかりが目立つが、影があるから光があるのだ。

ベーブ・ルースは、同じ週に本塁打と三振の最多記録を更新したとき、2つの記録が密接に関わっていることを知っていた。「けちなシングルヒットを狙えば、6割程度は打てたはずだ」
シェイクスピア、ディケンズ、トルストイ、ピカソ、モネ、バッハ、モーツァルト、ワーグナー、シューベルト、ブラームス、ドストエフスキー──皆、同時代の人よりもはるかに多くのものを生み出した。 大切なのは、すべてが傑作ではないということだ。今日、彼らの名前が知られているのは、彼らが生み出した全作品のうちの一部のおかげだ。天才は定期的に傑作を世に送り出すわけではない。だが、彼らを有名にした傑作の誕生は、多くの作品を生み出したからこそ可能になったのだ
グーグルは相当な数の失敗をしているのである。
「やってみることがわたしたちの信条だ」。グーグルの元CEOエリック・シュミットは、2010年にグーグルウェーブの開発中止を発表するときに言った。「わたしたちは失敗を称える。難しいことに挑戦して成功しなくても、そこから学び、新しいことに活かすことができればいい」。

失敗は成功の母と言うが、それこそ本質を突いている。
では失敗を許容する、つまり失敗を恐れずにリスクを取ってチャレンジできる環境を作るにはどうしたらいいのか。

そもそも、失敗を恐れているとはどう言う状態なのだろうか。

失敗の回避が最優先になると、ストレスが増えるだけでなく、課題に取り組むのがより難しくなる、ということである。長期的には、精神的な緊張によってイノベーションが妨げられたり、燃え尽き症候群に襲われたりするという問題が起こる。 皮肉なことに、よりすぐれた仕事は、間違いが許されるときにできるのだ。創造力を必要としない役割においても同様だ。ときにはそれが生死を分ける職場でも重要になる。

流行りの言葉を代入すれば心理的安全性ということになるだろう。弱みの開示を前提としたチームがいかに大切かはこちらを参照頂きたい。

働く環境が、パフォーマンスをエンパワーする

環境が我々の生産性や創造性に与える影響は大きい。それは人と人とのインタラクションに限らず、日照や植物など、あらゆる物理的な自然環境と我々のフィジカルのみならずメンタルとの相互作用が関係している。

高い天井の部屋の参加者は、わずかに低い天井の実験参加者よりもうまく無関係に思えるものの関連性を見つけた。 部屋が大きくなると、考え方も大きくなるのである
わたしたちの多くは、安全な場所に座って公園や海といった広々とした場所を見渡すのを本能的に楽しいと思う。水辺の建物や公園を望むアパートを思い浮かべてみよう。祖先たちは、安全で見晴らしのいい環境を求めることによって生き残り、次の食事を見つける場所を決めた。だから、わたしたちも眺望と保護を与えてくれる場所を快適に感じ、そうではない場所を不快に思うのだ。
従業員のエンゲージメントにとって重要なのは仕事であり、才能ある人物はやりがいのある仕事と成功のツールを与えられている限り幸せなのだと思われがちだ。だが、それだけでは不十分である。わたしたちの脳は、環境から受け取る信号に反応する。仕事中に不快なものを感じれば、精神的エネルギーが減少するのである。 だからこそオフィスデザインが重要なのだ。

「誰とどんな仕事をするのか。」

こそ個やチームにおけるモチベーションやイノベーションの最もシンプルで重要な源泉であると私は信じて疑わない。しかし、それをさらに加速させる上で、環境が与える力というのは決してバカにできないということだ。

ソフトだけではなく、ハードが大事なのだ。ORではなくANDの思考である。

「企業文化」というコンテキストでも、重要な示唆を与えてくれるのが次の一文だ。

コーネル大学の経営学教授であるフランクリン・ベッカーは、オフィスのレイアウトを「企業の身体言語」と呼んでいる。これは適切な表現だ。言葉とボディランゲージが伝えることが異なれば、聞き手は混乱する。企業も同じだ。他社とは違うことを主張しながら、オフィスデザインにもその姿勢を貫かなければ、従業員には企業が嘘をついているように感じられ、その印象が、必然的に、少しずつクライアントに伝えられる。

オフィスを「企業の身体言語」ととらえるのが面白い。オフィスとはメッセージであり、それは企業文化が形を持った結果のメディアである。

職場環境から伝えられる企業のメッセージが強くなるほど、従業員の見方が統一され、出会う人に受け渡しやすくなる。そのため、今日のトップ企業の多くは、オフィスデザインによって、企業文化を体現し、一貫したメッセージを従業員に伝えようとしている。それは、企業が外の世界に伝えたいと考えているメッセージである。
アップルが空間を使って自社のメッセージを顧客に伝えているように、企業も職場デザインによって社員にメッセージを送ることができるだろう。大切なのは、まず、伝えたいメッセージ──たとえばイノベーション、知見、思いやりなど──を明確にし、その概念を具体化するために従業員のタッチポイントをデザインすることだ。

最後に、創造性と生産性を兼ね備えた環境デザインにおいては、以下の視点が大事だと結論づけていることに留意したい。

1つの型を選ぶという考えから解放されれば、本章で学んだ知見の多くを活用できる。そのうちの1つは、どんなタスクにも役立つ画一的な環境はない、ということである。従業員に選択肢を与えることが、集中と共同作業の両方を促進する助けとなるのだ。

クリエイティビティの底上げ - 無意識下の思考力を活かす

本書で繰り返し出てくるのが「集中力の持続」という観点と「無意識下の思考力」という観点だ。どちらもうまく活用することで、良質なアウトプットをもたらすことが証明されている。いや、むしろいかに我々が過去から誤ったバイアスを持って「長時間労働」や「直線的な思考」に捉われていたかという認識が大事なのだ。

集中していた活動から気をそらされると、元の状態に戻るまでに平均 20 分以上かかることがカリフォルニア大学アーバイン校の研究によってわかっている。
集中力を取り戻すために外へ出る ──集中力は無限ではない。研究によると、精神的エネルギーは、外出によって取り戻すことができるという。自然のなかでぼんやりとし、エネルギーを再充電するのである。オフィスがどんなにすばらしくても、短時間そこを離れれば、さらに能率が上がる。

私は人はそれほど集中できないと割り切っている。だから1日作業のような日でも30分に1回はデスクを離れて外を歩いたりぼんやり思考したり同僚と話したりしている。逆に言うと、それだけ「集中力」が大事であるとという強い信念と意思があるからだ。それを本書は、サイエンスで後押ししてくれる。

オフィスデザインに落とし込めば、私はこの「焚き火と洞窟」というメタファーが大好きだ。

洞窟と焚き火が豊富にある環境の創出だ。建築デザイナーでデザイン・コンサルタントのギャリー・ジェイコブスは、静かな癒しの空間と仲間が交流する環境の両方を好む進化論的な傾向を、洞窟と焚き火という言葉で表現した。彼によれば、洞窟により魅力を感じる人もいれば、焚き火により強く引きつけられる人もいるが、繁栄のためには誰にも両方の環境が必要であるらしい。大学のキャンパスには両方がある。それを職場作りのモデルにすれば、従業員はどちらでも好みの環境を見つけられるのだ。

「集中」が大事といっても、思考が"直線的"では、良質な意思決定は得られない。集中する方法と思考方法は、密接に絡み合っているようだ。

2006年冬、サイエンス誌に掲載され、考えさせられるような結論が示された。
〝意識的思考は必ずしも正しい選択につながらない〟 
複雑な決定の場合、意識的な思考が裏目に出るのはなぜだろうか。
理由の1つは、意識が受け入れられる情報量が限られていることである。意識的思考では、1度に多くのデータは処理できないのだ。意識は処理能力を超える情報が与えられると、事実の一部のみに集中して、決断を単純化する。その結果、全体像ではなく、 些細 な特徴が重視され、それによって誤った判断が下されるのである。
一方、無意識下では、大量の情報が同時に処理される。さらに、最近の研究では、無意識的思考は創造的な問題解決にも適しているという驚くべき結果が示されている。 
なぜだろうか。それは、意識的に問題を解こうとするときは、思考が柔軟性を欠いた直線的なものになるからだ。だが、問題に集中したあとで、一時中断すると、無関係に思えるアイデアが浮かんでくる。無意識の思考には制限が少ないので、集中しているときには起こらない連想が働くのだ。

みなさん経験があるだろう。1日悩み続けた夜のシャワーで良いアイディアが思い浮かぶ、夜のランニングで名案が閃く。科学的なカラクリは、意識的で直線的な思考よりも、無意識的思考のカバレッジの広さにあるのだ。

職場に「友人」がいることの価値

心理的に安全で、リスクをとってチャレンジでき、かつ幸福感を得られる職場の要件において見過ごされそうで重要な観点が「友人」という視点。

私はよく面談で
「何か困ったことが会った時に相談する、頼れる人は誰か?仲間はいるか?」
といった質問をする。

人によっては当然上司や、同期や、同郷のメンバーや、同じ趣味を共有しているメンバーなど。逆にこの質問に即答できずに大きな悩みを抱えたメンバーは十分なケアが必要だ。そういったケアの効果は、次のようにサイエンスで肯定もされている。

職場に親友がいるか。 クリフトンは、職場での友人関係が評価基準にふさわしいことを主張した。それが生産性を予測する変数の1つになるからだ。職場に親友がいる従業員はより集中力が高く、より熱心で、より会社に忠実であることが研究によってわかっている。病気になることも、事故にあうことも少なく、仕事を頻繁に変えることもない。また、顧客も満足させている。
職場での友人関係は、従業員をより生産的にすることが研究によってわかっている。友人なら一緒に働きやすいというだけではない。同僚とのつながりを感じれば、もっと努力したいという理由ができる。努力しなければ顧客を満足させられなかったり、マネジャーの不満を買ったりするだけに留まらず、友人をがっかりさせることになるのだ。良い仕事をしなければならないという社会的プレッシャーは、上司のどんな言葉よりも強い動機づけになる。

ではどうやって職場に友人関係を多く持たせるか。この種の取り組みは軽視されがちだが、以下の点を踏まえた上でロジカルに施策を組み立てると良いだろう。

1. 物理的近さ
2. 接触頻度
3. 類似性

最も協力なのが3の類似性とのことだ。モダンな施策だと同郷や趣味で繋がれるSlackチャネルを作るなど、いかに地味だが「友人」というコンテキストで重要かが理解できる。

ELC(Employee Life Cycle)の観点で考えると、入社後にいかにスムーズに馴染めるか、友人を見つけられるかが重要なKEYを握ると言っていい。
こちらは私の大好きな表現の一文だ。

入社は、何年も続いているパーティに初めて参加するようなものだ。自然に馴染むことができる人もいるが、たいがいの人はどうしたらいいのかがわからない。最初の数分間がもっとも重要である。孤立していると感じる時間が長くなるほど、「ここにいるのは退屈な人ばかり」(防衛的)とか、「ここの人たちに好かれていない」(自己批判的)といった否定的な経験を正当化する必要が生じるからだ。

いわゆるオンボーディング、入社オリエンテーションに関しては常にこの視点を忘れてはならない。

また、方法論でいうと「運動」が友人づくりのきっかけに一役買っているという点も興味深い。

ランニングやダンスなど身体を動かす活動は、生理学的な変化も引き起こす。アドレナリンが放出されるような経験をともにすると、その人により好意を抱き、さらに魅力を感じることが研究で示されている。ソフトボール、バレーボール、釣りのような身体を使う活動を一緒に行なうほど、従業員同士が親しくなるのは容易になる。 ゴルフが仕事上のつきあいに利用されるのは理由があるのだ。仕事上の関係をもっとも強化するのが、職場以外で一緒に活動することだからである。

こうやって、より社内のメンバー間の繋がりが広く、深く、密になればなるほど、「噂話」が増える。リーダーはその「噂話」をどのように対処したら良いだろうか。結論、噂話は有益なものであり、丁寧にデザインすべきだ。
これはリーダーシップの責任である。

噂話は有益である。だからこそ、する価値があるように感じられるのだ。同僚の男性に、上司があるインターンの女性といつも一緒にいるという話を聞いたとする。これは彼があなたを信頼し、排他的な社会集団の一員に招いてもいいと見なしていることを暗に示している。そう考えると気分がいい。また、彼は、自分はインターンに手を出すほど非倫理的ではないことを示しながら、〝内情に通じている〟のをあなたに伝えているのだ。それにより、あなたと彼はより親しくなり、一時的に2人の自尊心も満たされる。
多くの企業が気づかずにいる真の問題は、まず、なぜ噂話が生じるかである。研究によれば、無力感を抱いたり、自信を失ったりしたときは、噂話に影響されやすいらしい。孤立し、社会的権利を剥奪された人は、噂話を武器にする。組織の主流派との距離を感じると、徒党を組んだり、同僚の悪口を言うことによって、別の同僚に近づこうとするのだ。絆を求めるそうした行為が、チーム内の信頼関係を壊し、組織を弱体化させる。リーダーは、噂話を禁止するのではなく、注意深く聞いてみるほうがいいだろう。噂話には、皆の関心事が反映されているからだ。たとえば、重要な決定が透明性を欠いていれば、不安が生まれ、おしゃべりの種になる。開かれた組織を築き、心配事を公言しても安全だと感じられる環境を作れば、陰口も減る。

モチベーションとマイクロマネジメント

マイクロマネジメントがうまく機能するのは、メンバーが極端にジュニアな場合のみである。ただしその1点においても決して「マイクロマネジメント」という観点を本質的には肯定すべきではない。

名著「人を動かす」でカーネギーに語らせた方が早いが、人を動かす唯一の方法は「内発的動機(セルフモチベーション)」だからだ。この観点なしに、ピープルマネジメントは語れない。

そして、このトピックには逆サイドにおいて重要な知見がある。つまり部下力だ。マイクロマネジメントさせない正しい努力は、この種の議論で見逃されがちになるが、非常に有効打となる。

上司が干渉しすぎる?では、形勢を逆転させよう ──おそらく上司は余裕を失っているのだ。わたしたちは、自分の人生は自分でコントロールできると考えている。だから、コントロールできないときは不安を感じる。そうした不安が、部下を過剰に管理するという形で現われることもあるのだ。マイクロマネジメントをやめてもらうにはどうすればいいだろうか。上司に多くの情報を与え、積極的に報告をし、進捗状況を知らせ、状況をコントロールしていることを感じさせるような質問をするといい。マクロマネジメントをする上司は不安を感じている。あなたの役割は彼らを安心させることである。

また、マネージャは「承認」の価値を過小評価しがちである。「承認」と「フィートバック」を丁寧に与え続けることが、結果的にチームのアウトプットを最大化する。

仕事で認められるのが重要なのは、肯定的なフィードバックには教えがあるからである。たとえ肯定的でなくても、フィードバックがなければ、改善のための情報を得られない。成功のために何をすべきかがはっきりわからなければ、熱意が冷めるのは時間の問題だ。人間とはそういうものだ。たいていの場合、ひどい扱いを受けるより無視されるほうが精神的な苦痛が大きいのである。
これは健康にも大きな影響がある。周囲から認められていると感じるとストレスが減り、睡眠の質が上がり、病気をしても早く回復する傾向がある。

これを怠ると、優秀な部下は会社を去る。

わたしたちはみな、自分が有能だと認められたいと思っている。もし、その欲求が就労時間のうちに満たされないなら他の場を求め、そこに精神的エネルギーを注ぐようになる。 マネジャーが部下を称える価値を過小評価してしまうのは、高い地位にいて、賞賛と敬意を当たり前のように思っているからである。

承認やフィードバックにおいて大切は要素は、次の4つに集約される。

第1に、フィードバックはすぐに行なうのがもっとも効果的だ。
第2に、肯定的なフィードバックは具体的なほうが意味が大きい。
第3に、人ではなく行為を褒めるようにしよう。
第4に、称賛は1対1のときよりも、公の場で与えるほうがいい。

リーダーシップの影響力

最後に、働く環境、ひいては企業文化にダイレクトに影響する「リーダーシップ」に関して、興味深い引用をいくつか備忘録としてまとめておく。

大切なのは「聞く」ことによって影響力を行使する、というマインドセットと、自分の行動の影響力を把握し、組織行動へうまく活かすことだ。

聞くスキルを持たないマネジャーは、リーダーとしての能力とチームへの影響力を失うだけではない。メンバーの忠誠心を保つ妨げにもなる。ギャラップ社の調査を見ると、従業員の離職率を予測するのにもっとも有効な要素は、給料でも、社員特典でも、会社の将来に対する信頼でもなく、マネジャーとの関係の質だということがわかる。その大部分を占めるのは、コミュニケーションだ。
大半の人の予想に反すると思うが、セラピストがクライアントに初めて会うときにやろうとするのは、問題を明らかにしたり、解決したりすることではない。信頼関係を築くことである。クライアントとセラピストの絆は、治療の成功を占う唯一かつ最良の要素であることが研究によって明らかになっている。
もっとも大きな影響力は、話を聞いているときこそ発揮できる。 話を聞くことは受け身に思えるため、軽視されやすい。だが、セラピストや交渉人は、それがもっとも強力な手持ちの 駒 の1つだと知っている。話を聞いてもらえば、抵抗の気持ちは消える。評価され、敬意を払われていると感じると、やる気が起こり、新しい考えを受け入れやすくなる。
MITの経営学教授エドガー・シャインはマネジャーの行動からさらなる意味合いを見出し、「文化とリーダーシップはコインの裏表だ」と主張する。半世紀以上にわたり企業を研究してきた組織心理学の専門家として、企業文化はミッション・ステートメントやスローガンによって創出されるものではない、と述べている。企業文化はリーダーとチームの相互作用で生まれるものだ。上に立つものが手本となり、集団の規範を確立する。そういった規範が、次第に組織の文化を特徴づけるようになる。  


原題:The Best Place to Work | The Art and Science of Creating an Extraordinary Workplace


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