血糖値と睡眠の関係
睡眠と血糖値は一見無関係のように思えますが、実は密接な関わりがあります。血糖値と睡眠は、互いに双方向的な影響を及ぼし合っており、睡眠は血糖値に影響を与える一方で、血糖値コントロールも睡眠に影響を与えます。
血糖コントロールがうまくいっている人、つまり血糖値が安定し、高血糖値や低血糖値を示す頻度が少ない人は、質の良い睡眠が取れていると言えます。
血糖コントロールは睡眠に影響を及ぼす
糖尿病の研究では、睡眠の質と血糖コントロールの間に直接的な関係があることを示すエビデンスが示されています。
特に、血糖調節がうまくいっていない人、つまり、血糖値が安定せず、高血糖値や低血糖値を示す頻度が高い人は、一日を通してグルコースコントロールが良い人に比べて、睡眠が浅いことが報告されています。
さらに、血糖値調整がうまくいっていない人は、睡眠時間が短く、睡眠の質が悪いことが、示されています。
これは、糖尿病患者の研究にもとどまらず、睡眠中の血糖調節異常は糖尿病でない健常者にも頻繁に起こっていることが分かっています*1
さらに、最新の研究では、血糖値で睡眠時の交感神経を測ることが可能であるという論文も発表されており、血糖値で、睡眠の質や、自律神経活動を評価できる可能性があります*2
グルコースの使用量はノンレム睡眠時に最も少なく、脳のグルコース代謝はノンレム睡眠時に約11%低下します。一方で、レム睡眠中の脳は、実は非常に代謝が活発に働いているため、グルコース消費がさかんに行われています。
このように睡眠時の血糖値を見ることで、質の良い睡眠が取れているかどうかがわかります。
睡眠時の血糖コントロール
睡眠の質は、時間・光・運動・栄養など多くの環境要因によって変化します。
昔から寝る前に食事を取ると良くないと言われており、就寝前3・4時間前には食事を済ませるようなアドバイスがあります。これも血糖値と睡眠の質に大きく関わりがあり、理にかなったことです。
メインとなる夕食は、血糖値が上昇し、インスリンが働いて下降し、通常状態に戻る時間を考慮すると、就寝前3時間までに済ませることが望ましいです。
また、深夜のパソコンやスマホの使用によって、睡眠の質が悪くなることも懸念されております。ブルーライトによる目からの刺激と、ゲームやメールなど能動的な作業によって興奮やストレスを感じることが理由に挙げられます。
興奮やストレスが血糖値を上昇させることから、就寝前に大きな血糖変動が起こることは、食事による血糖値変動と同じく、睡眠の質に影響を及ぼします。
寝具、部屋の照度調整、サプリ、自律神経を整える行いなど、睡眠の質を高める手段は多くあり、個人によって、何が効果的かを探し、睡眠ルーティーンを作ることで、安定した質の良い睡眠を取るよう心がけてください。
睡眠の質を上げる工夫として、以上のような血糖値を指標に就寝までのルーティーンを作っていくことが重要です。
Kajisa et al. “Correlation analysis of heart rate variations and glucose fluctuations during sleep.”Sleep Medicine 113, 180-187 (2024)
Fullagar et al. “Sleep and athletic performance: the effects of sleep loss on exercise performance, and physiological and cognitive responses to exercise.” Sports medicine 45, 161-186 (2015)