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地方にある日本再生のヒント〈前編〉

※この記事は過去にシン・エナジーの公式ブログ「ミラトモ!」に公開された2019年3月の記事の再掲です。内容はすべて当時のものです

人口減少と高齢化の大波が押し寄せ、働き方改革も迫られる日本。地方にこそ日本再生のヒントがあるのではないか。そんな事例がある。

▽終業後の会食でビジネスは御法度

高知県で仕事をしていた時の事。地元企業の経営者に午後4時にアポイントを取り、会いに行くと話がはずみ、夕食の時間になってしまった。
「軽く食事に行きましょうか」と誘われた。
食事の席で「ところで新しい事業はいつどこで始めるのですか」と聞いた途端、「あなたはいつまで仕事の話をするのですか。これからの時間は仕事ではなく、人間はどう生きるべきか、そして今後の世界平和はどう進めるべきか、といった話をする時間ではないのですか」とピシャリと言われた。
さすがは坂本龍馬を生んだ土地柄だと感心した。高知県の経営者がみんな同様の考え方をしているわけではないが、いま考えるとこの経営者の言葉は、現在の「働き方改革」に通じる。

▽地域資源活用で雇用の場、人口の2割がIターン者

日本の人口は国土審議会の資料によると、2004年の1億2784万人をピークに、2050年には9515万人と1億人の大台を割る。2100年には4771万人と半減し、高齢化率は40.6%にもなるという。いったいこれで国や地域が成り立つのだろうか。
その未来の日本の姿が地方にはすでに訪れているが、その人口減少と高齢化という大波を様々な工夫で乗り切っている自治体がある。

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その一つの群馬県上野村は1950年代には最大5,000人の人口を擁していたが、高度経済成長期以降、過疎化が進んだ。放っておけば今頃は1,000人を切っていたといわれる人口は現在1,200人で踏ん張っている。高齢化率も2015年ですでに44%を超えているが、それにも負けず、雇用を創出しながらIターン者を積極的に受け入れる施策を進めているからだ。現在の人口の2割に当たる244人が移住者という。
上野村の黒澤八郎村長は地域資源の再発見事業として、間伐材の搬出促進、広葉樹の活用、製材所の整備を行い、木質ペレット工場と木材加工施設を作ってきた。さらにこのペレットを使ったバイオマス発電とバイオマスボイラーを稼働させ、エネルギーの地産地消を実現した。
老人福祉施設や、源泉の温度が低い温泉施設、宿泊施設、農業用ビニールハウスの暖房、家庭用のストーブにもペレットを使う。ペレットを作るためのオガはシイタケ栽培にも生かす念の入れ方だ。こうしたエネルギーの地産地消で仕事が生まれ、村にお金が留まる。

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画像3■バイオマス発電施設(上)とペレットを使用した家庭用ストーブ(下)

▽未利用材を宝物に変える柔軟な発想が未来を創る

黒澤村長は「私たちは持続する社会を目指して村の持つ『モノ』の価値の再発見とその活用に徹底的にこだわり、産業振興と雇用の場の創出に力を注いできた」と胸を張る。
こうした取り組みが全国に増えていけば輸入に頼っている日本のエネルギー構造は確実に変わる。未利用材を資源という宝物に変える柔軟な発想こそが日本の未来を創る。

画像3■上野スカイブリッジ

後編へつづく)

(2019/3/19 シン・エナジー広報/元日本経済新聞記者 府川浩・記)