6年間続けたキャリアのモチベーションの源泉を探るワークが好評だったのでワークショップ化してみた
いまSYMBIでは、これまでエグゼクティブ向けに提供してきたループ図ワークを、キャリア変化の前後にいるリーダーに向けてトライアル提供しています。ループ図は「何が、何を引き起こすのか」というつながりから、なぜその状態が起こっているかを見つけてていく、システム思考のアプローチです。
「どんなときにモチベーションが湧くのか?」「どんなときにモヤモヤするのか?」ループ図で因子のつながりを可視化していくとキャリアで重視している因子や陥りやすい状況を捉えられます。
私が初めてループ図を書いたのは、2018年。「自分の豊かさを保つループ図」と題し、キャリアを考える上でのもやもやに向き合うために書きました。
それから良い状態を保ち、広げていくために因子を意識して仕事やプライベートの意思決定をしてきました。そこから少しずつキャリアもプライベートも良い方向に進んでいる確かな実感があります。
この記事では、転職・ライフステージの変化・昇進・独立などキャリア変化の前後にある人や、キャリア・働き方にモヤモヤしている人へ、一つの選択肢としてループ図ワークを紹介していきます。
キャリアのモヤモヤから生まれたループ図ワーク
結局どうやればいいのかにもやもや
2018年当時、所属するデザイン会社、ロンドン時代の友人らと始めたチーム活動(のちに法人化)、生活費を補うための副業と三足のわらじを履いていました。チーム活動は主に平日夜と週末が中心で、時間が足りていないと感じていました。
そこで、チーム活動を加速させるために当時の上司に理解いただき、週3日は本業、残りをチーム活動に充てられるような環境を作りました。一方でまだチーム活動だけでは十分な売上が立っていなかったため、知人の仕事をスポットで手伝うことで生活費を補っていました。
そうした状況を脱するためにコーチングを受けたり、いろいろな本の内容を実践・試行錯誤しました。しかし、一般論は書いてあっても「結局、いまの自分は何をすればいいのか?」の具体的なヒントは見つからず自分のモヤモヤを解消するための暗中模索が続きました。
つながりからヒントを見つけるシステム思考との出会い
そんなときにヒントになったのが、「どうしてあの人の解決策はいつもうまくいくのか?」でした。システム思考の入門書として、システム思考やループ図に興味がある方はまずこの本から手に取ることをオススメします。
システム思考は、因子のつながり(因果関係)からどんな問題や影響が生まれるかを構造的に解き明かす思考法です。主に因子が複雑に絡み合う社会問題や環境問題の分野で活用が進んでいます。
そんなシステム思考のアプローチである因果ループ図で、当時のモヤモヤを構造化したのがループ図ワークのはじまりでした。「自分のモチベーションがどこから湧いてくるのか?」「どんな状態が満たされているのか?」
「どの因子に働きかけることで自分を良い状態に変化できるのか?」という視点に変わり、具体的な行動も考えやすくなりました。
私の場合は、特に「主体的にコミットできている実感(1案件当たりのコミット度)」が重要な因子でした。因子を軸に自分の取り組みを整理すると、コミット先が分散しすぎていること、それによってコミットできているという実感が減っていること、コミットが減ることで提供できる価値やそれによる報酬の単価も下がっている現状が見えてきました。そこで思い切って本業を辞めてコミットする先を減らすことに決めました。あの時、自身の重要な因子を判断軸として決断できて本当に良かったと感じています。
ループ図の捉え方
ワークの元になった因果ループ図は「何が、何を引き起こすのか。それはなぜか。」を因子のつながり(因果関係)から描いていきます。一見複雑ですが、慣れれば読み解くのは簡単です。ルールは大きく3つです。
1つめのルールは最小単位として二つの因子の繋がりを探すこと。
その時に片方の因子が原因、もう片方の因子が結果になるようにつなげます。例えば、「アウトプットの質が上がる → クライアントからの信頼が増える」のように、因子周辺で因果関係がある因子を探していきます。 因子は必ずしも1対1関係ではありません。一つの因子が1対n関係でつながることもあり得ます。
2つ目は因子が1周つながるループを探すこと。
原因の原因となる因子を探したり、結果が原因になるような因子を探していくと、つながりが長くなっていきます。その因子のつながりが一周する、つまりループを探していきます。
3つ目は、結果が出るまでの時間を意識することです。
繋がりの中には結果が出るまでに遅延が発生するものがあります。時間が経ってから影響が現れる因子は、影響が蓄積され大きくなるものも多く、良かれと思った行動が実は後から大きな負債になるというパターンが考えられます。
ループ図ワークの流れ
自分用につくりはじめたループ図の書き方を、SYMBIのナレッジを活かして対話型のプログラムにしたのがループ図ワークです。
1回90分で、個人ジャーナリングとループ図を書く対話パートの2部構成です。前半は、事前に設定した問いに対して個人視点で過去のエピソードを書き出し、そこから自分に影響していそうな因子を分解していきます。まず自分の頭の中に漠然とあるイメージやキーワードを書き出すことで、対話の出発点を探していきます。
後半はジャーナリングの内容と参加者の深掘りしたいテーマから、因子のつながりを見つけていきます。実際のループ図はSYMBIメンバーがその時の状況や感情、思考のつながりを探しながら書いていきます。対話パートには対話技法であるNVCやデザインリサーチでの探索インタビューのアプローチを取り入れています。
主観と客観の視点、具体的なエピソードと抽象的なつながりなど複数の観点を行き来しながら、いまその人にとってのどんなモチベーションのループが回っているのか、どんな因子が働きかけているのかを一緒に見つけていきます。
ループ図ワークのメリット
直接繋がりのある方に実施したところから口コミで広がっていき、これまで50人以上の方にワークを実施しています。皆さんの感想を集約すると大きく3つのメリットが見えてきました。
👥 客観的な視点を交えて、言語化できていなかった自分にとっての良い状態やキャリアの悩みを短時間で棚卸しできる
まずただただ話を聞いてもらえる体験そのものの価値。
私生活でも仕事でも、ただ頭に浮かんだことや感じたことを何十分も聞いてもらえる機会は多くはありません。ループ図ワークでは、あえて頭の中を書き出したり、対話パートでは極力話を遮らないように進めていきます。その人が頭の中を棚卸することに集中できる時間そのものが、リフレッシュや思考整理に役立っているようです。
🗺️ 自分の考え方やモチベーションの源泉などの内面特性と外部要因のつながりを1枚絵で可視化できる
「自分は誰かと新しいことを考えている時にワクワクする」「途中で話をまとめてくる人がちょっと苦手」など、自分の特性で思い当たるものがあるのではないでしょうか。ループ図はそんな内面の特性に、自分がコントロールしづらい外部環境がどう影響しているのか、対話しながらつながりのループを見つけていきます。1枚絵としてつながりが可視化されるので、モヤっとした時や迷ったときに意思決定ツールとしても役立ちます。自分の特性や習慣がこんなところに影響(ループ)してたのか!というアハ体験があるようです。
🚶♀️「じゃぁどうすればいいか?(HOW)」ループ図から具体的なアクションをつなげて考えられる
ループ図ワークを受けた方の中には、定期的にコーチングを受けていたり、ご自身がコーチをしている方もいます。コーチングは数ヶ月単位で時間をかけて自分の中にあるWHYやWHATを掘り下げていきますが、ループ図ワークは、「いまの状態がなぜ起きているのか、どう対処すればいいのか」の具体的なアクション(HOW)を90分のワーク内で掘り下げていくことができます。
「何をすればいいのか?」ではなく「どの因子に働きかけると良いループが回るのか」の視点に変えることで、アクションの優先順位をつけたり、いまの状況でもできる小さな行動に落とし込むことができます。いまの状況を解消するために必ずしも大きなアクションが必要な訳ではありません。一方で、自分のアクションでは対処し得ない強さで外部要因が自分に影響を与えているとわかれば、打てる対応策も重み付けできるようになります。
受けた方の感想
ここでは受けた方のコメントを許可をいただき掲載します。
環境要因を断ち切ることで転職が上手くいったケース
🙍♂️ 事業会社経営企画マネージャー(社内起業家)
独立・就職を経て、自分にあった働き方にたどり着いたケース
🙍♀️ スタートアップインド支社CEO。1児の母
外部環境に影響されずパフォーマンスを維持する方法を見つけられたケース
🙍♂️ スタートアップCOO。1児の父
さいごに
「いまの状況をよくしたい…でも何をすればいいんだろう」
これが当時の私が抱いていた感情でした。
三足の草鞋を履いていた頃にはじめてループ図を書いてから約6年。少しずつ、でも着実に、コアにある豊かさのループが回っている実感があります。
独立を機に自分のモチベーション(ワクワク)をどう仕事と紐づけるのかを意識することで、結果的にコントロールできる時間も売上も増やすことができました。
自分をとりまく状況は変化しながら、キャリアはずっと続きます。時には大きく踏み出すアクションが必要な場面があります。そんな時でも、ループを意識すればいま自分ができる小さなアクションから状況を変えることができます。
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