解決の糸口が見つからない事業・組織の課題に。SYMBIのシステム思考活用方法を紹介
システム思考は複雑でどこから手をつけるべきか悩ましい問題を扱う場合におすすめの思考法です。
今回は、SYMBIが事業リーダーを支援するなかで、システム思考を活用している場面を例に取り上げながら、システム思考活用のポイントについて紹介します。
前回の記事でもシステム思考について簡単にご紹介しましたが、今回の記事でより詳しくシステム思考の活用方法を知っていただければ嬉しいです。
例1:組織課題の要因特定
具体例として、マネージャー層の方からよくご相談いただくケースを扱いたいと思います。
リモートワークが主体になり、マネージャーがメンバーの様子を把握しづらくなりました。チームのメンバーがメンタル不調に陥ったり、モチベーションが落ちてしまったり。本来は、そうなる前に察知してケアしていきたいと考えているのに、顕在化してからじゃないと気づけない。1on1といった定期的な場を設けても機能せず、状況が変わらない。こうした組織課題を抱えていらっしゃるマネージャーは多いように感じます。
SYMBIでは上記のようなご相談に対して、「因果ループ図」でチーム内の構造を可視化するようにしています。その際に大切なポイントが、目に見えない因子も含めて書くことです。
ダニエル・キムの「成功循環モデル」をご存知でしょうか。組織開発に詳しい方は目にしたことがあるかもしれません。
成功循環モデルでいえば、関係性の質や思考の質は定量的に測れるような目に見える因子ではありません。しかし、確かに影響しあっていると実感できる因子です。
組織に関する課題の多くは、個人のメンタルモデルやチーム内のコミュニケーションなど見えない因子が大いに影響しています。ゆえに、見えない因子も含めて扱っていくことが重要です。
因果ループ図を書いてみると、例えば、次のようなパターンが見えてきます。
こうしたパターンが見えてくると、パターンに陥る以前の察知がしやすくなります。さらに、この構造を変えるための改善も検討しやすくなります。改善方法は、組織や事業の状況によって異なるため一概には言えませんが、マネージャーのコミュニケーション方法といった個人の意識による改善だけでなく、そもそもの人物要件や採用基準から変えるといった仕組みの改善も考えやすくなります。
例2:事業リーダーの負荷軽減
事業リーダーは常に多くの仕事に追われています。既存の仕事を終わらせるだけではなく、新たな施策についても検討・実行していかなければなりません。
既存の仕事はメンバーに渡して、新たな施策を考える余裕を作り出したい。そうと思いつつも、委譲していく時間的もしくはリソース的余裕がないという事業リーダーが多いのではないでしょうか。
上記のような状況は、本来であれば事業課題として組織で取り組むべき問題です。しかし、多くの場合、事業リーダー個人の問題になってしまっています。
事業リーダー個人の問題になってしまう理由には、「この状況や状況を引き起こしている構造の将来的な影響を説明できない」という点が挙げられます。事業リーダーは「今はなんとかなっているけど、このまま事業が拡大したり、人が抜けたりしたらやばそう。」となんとなく感じているのですが、どうやばいかが説明できないのです。それゆえに、事業課題として扱うことができません。経営者がそうした事業リーダーの課題に対する解像度が低い場合、特にです。
こうした場合は個人の状況と組織への影響を因果ループ図で可視化します。この際、遅れてくる組織や事業への影響を考慮するというのが大事なポイントです。
皆さんは、良いと思って施策を動かし始めたら、あとから遅れて問題が発生した、ということを経験したことはないでしょうか。
例えば、事業リーダーの問題の先には、以下のような影響が遅れてやってきます。
遅れの考慮はシステム思考の典型的なパターンの1つです。影響が出るまでの時間軸も考慮することで、取り組むべき問題の重み付けや将来的に負債となる問題を適切に見極めることができます。
例3:抽象的なビジョンと具体的な事業との接続
ビジョン・ミッション・バリューといったコーポレートアイデンティティを策定した企業から、「その後どう活用すればいいのかわからない」といったお悩みをご相談いただくことがあります。
抽象的な理想状態と具体的な事業・現場でのオペレーションとの間にはギャップがあります。その間をどのように埋めていけばいいのかはとても難しい課題です。
こうしたときには理想状態と現状それぞれのループ図を書きます。
そもそも抽象的な理想状態に対して言葉だけでイメージする状態や状況を揃えることは容易ではありません。理想状態をループ図にすることで言葉だけではイメージが難しい状況を具体的に描写することができます。例1、例2で書いたように因果ループ図は「〇〇したら、〇〇が増える」もしくは「〇〇したら、〇〇が減る」といった因子間のつながりをストーリーとして説明できるため具体的な描写に適しています。
現状を因果ループ図にすれば、理想状態とのギャップが可視化できます。構造から変える必要があるのか、構造は変えずに流れの向きや強さを変えればよいのか。現状から理想状態に向かって必要な変化を明らかにしたうえで、働きかける「ツボ」を見つけていきます。
この方法の肝は、「小さく取り組める」ことにあります。
抽象的な理想状態を掲げると、数カ年計画やロードマップを引いて大々的な改革に着手したくなる場合もあるかもしれません。しかし、変化速度の早いビジネス環境の中では、計画どおりに進むことはほぼありません。また、計画自体が事業や実務と直接的に紐づいておらずうまく着手されなかったというお悩みもよく耳にします。
SYMBIでは、少しずつ構造に変化を加えていくという考え方をとるため、今かけられるリソースを基準に打ち手を検討していきます。そうすることで内外の変化を考慮しながら、理想状態へ向かうことができます。また、現状の因果ループにすでに存在する因子の中から「ツボ」を見つけるため、実務から遠く離れた打ち手になりづらいという特徴もあります。
前回の記事でご紹介した例も、同様の活用方法です。上記でご紹介した以外のケースも気になる方はぜひあわせて読んでみてください。
例4:開発する機能の優先順位付け
サービスの立ち上げ初期に、体験や機能の検討をしていると、「こんなこともできるんじゃないか」「あんなこともできるんじゃないか」とどんどんアイデアが出てきます。
ただしコアバリューが定義されていない段階では、どれを優先的に実装していくべきか判断が難しい場合があります。
こうした場合に、売上やユーザー数などのビジネス的な成果につながる指標を含めてプロダクトの体験と成果指標のループを書いていきます。どういった価値が提供できるとどんな好循環が起こるのかを可視化します。ループが回りきるまでに辿る因子が多い場合、成果指標につながるまで時間がかかることが予想できます。そのため、因子が少なく、より小さく回せるループを判断していきます。
そのループを回すために必要な体験や機能が初期に優先的に開発されるべきものです。
例えば、プラットフォーム型のサービスを検討する場面では、提供できるコンテンツを増やすのが先か、ユーザーを増やすのが先かといった議論が巻き起こります。こうした場合もサービスが目指す理想的な体験と成果指標のループを書いてみるとよいでしょう。
具体例については、深津さんが書かれているnoteがとてもわかりやすいため、そちらをご紹介させてください。
まとめ
SYMBIではご紹介した例のように、「どこから手をつけるべきか悩ましい」という問題を得意としています。現状をお聞きしながら因果ループ図で可視化し、小さく取り組める解決策を一緒に考えていきます。
事業リーダーのさまざまな”事情”に合わせた柔軟な関わり方もできるので、気になる方はぜひお声がけください。
https://symbi.jp/service