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楽器・琴糸、音曲を武器に…のフィクション作品

誕生日に、七弦琴を抱く藍忘機フィギュアをもらって、
久々に思い出したのですが、

琴や楽器、音曲などをモチーフにした創作作品について、自分覚え書きを書いておきたくなりました。


  『魔道祖師』『陳情令』に描かれる仙術

『魔道祖師』で主要な仙師の一族には、音曲に精通し、武芸と共に、
音曲の旋律と響きによって、邪を退け鎮め祓う人々がいる設定で、

楽器に精通しているのみならず、霊力をこめて、正確に曲を奏でることが必須。

たとえば「招魂」「安息」

死者の躯かその一部か、あるいは死者が生前愛用していた物などを媒介として、亡霊に音を頼りに招きに応じてもらう。

墨香銅臭『魔道祖師』日本語翻訳版より
以下、参照は同書

「問魂」

「問霊」とは、姑蘇藍氏の先人が作った名曲で、「招魂」と違い、亡者の身元確認に多く使われ、媒介など何もない状況でも使うことができる。奏でる者は琴を弾き、その音で亡者に問いを発する。同じく、亡者の返答も「問霊」によって音に変換され、琴の弦に反映されるのだ。

「清心玄曲」

「清心音は破障音と違って、その効能は心を清め、気を鎮めることです。」

邪曲については、日本由来の秘曲という設定で、

「演奏する時に霊力を込めれば、人に害をもたらす。日に日にやせ細るか、苛立ちや焦りでいっぱいになるか、激しく血気盛んになるか、もしくは五感を失うか……霊力の高い者が演奏したなら、七音以内で人の命を奪うことすら可能だろう」

清心音に、邪曲をひそませることで、効能を変化させて、人を死に導いたり、操ったりしたことが、悲劇の源になっている展開が肝で、
この、伝統的な楽器や、曲想を、神仙術に利用応用している描き方が、秀逸な印象です。

仙師の力の源泉を失い、聖剣が使えなくなった主人公は、鬼笛・陳情に霊力をこめて魔の旋律を吹くことを武器としました。
これが聖邪併せ持つ秘技となり、七弦琴の名手のバディとの絆に繋がっていきます(と、私は解釈している)。

『陳情令』グッズの、
七弦琴と陳情笛を模した、セットアクセサリー。
そう言われないと、楽器の形とわからないケド…

それぞれが卓越した才を持ち、それぞれを認め合いながら、
その絆の深さを、琴と笛の合奏にも表し、それが二人だけの「忘羨」という曲に象徴される、
まさに「知音」。
そこが私が、『陳情令』に注目したきっかけでした。

どっちかというと、『魔道祖師』というより、
『陳情令』の世界観と解釈が好き。
(このふたりの繋がりや、過酷ないきさつが、執着的な肉体的欲望の起因であり帰結していくBL展開が、私にはどうも馴染めなくて…そこだけはゴメンナサイです)

以上は、生者の精神面や、亡者に対する鎮静の効力からの音曲ですが、

物理的な攻撃手段として、

藍忘機本人は顔色一つ変えずに古琴を出し、俯いて一本の弦を指で弾く。
すると、弦の音は形のない鋭利な矢と化し、唸り声を上げて回転しながら向かっていった。

こうした、琴のねを攻撃に使う場面は、アニメやドラマでは、音曲と共に音波動が攻撃となる、いい表現になっています。

また、“弦殺術”という技があって、ドラマ『陳情令』では、その由来を丁寧に表していますが、
原作では、このように説明されています。

弦殺術は姑蘇藍氏の秘技の一つで、藍氏の開祖である藍安の孫娘ー三代目宗主藍翼が考案し、伝授した術だ。藍翼は姑蘇藍氏唯一の女宗主で、彼女は琴を極めていた。使うのは七弦の琴で、その弦は瞬時に琴から外して一本の長い弦にすることができた。七本の弦は端から順に太い弦から細い弦になるように張られており、演奏の際には、彼女の雪のように白く柔らかい指の腹によって気高い曲を奏で、次の瞬間、まるで泥を切るように容易く骨を断ち、肉を削り、命を奪う凶器となった。
藍翼は異分子を暗殺するために、弦殺術を考案したが、そのことでひどく非難され、姑蘇藍氏自身もこの宗主に対する評価は微妙なものだった。しかしこの弦殺術が姑蘇藍氏の秘技の中で最も殺傷力が高く、遠距離にも近距離にも適した卓越した格闘術の一種であることは否めない。

女性の仙師の宗主が、効果的に身を守る秘技として開発したと見られますが、
楽器そのものを殺傷に使うというのが、清雅に反するため、非難されたのでしょうか。

  『ゲットバッカーズ』・風鳥院花月の絃術

琴の弦を武器にしている…というと、
私には印象的だったのが、かなり前にアニメにもなった、
『GetBackers ー奪還屋ー』というコミックでした。

この中に、「絃術」という琴糸の秘技を受け継ぐキャラクターがいて、
中性的というより、女性にしか見えない男性キャラですが、それは琴技のためと説明されています。

Wikipediaから、琴に関わる設定部分を参照(適宜省略)すると、

風鳥院 花月(ふうちょういん かづき)

風鳥院流宗家」の生き残りで、絃(いと)使い。通称「絃の花月」「旋律(戦慄)の貴公子」。
風鳥院流宗家の唯一無二の継承者であり、皆伝。

彼の女性的な雰囲気や体つきは、風鳥院流宗家を受け継ぐ為の徹底した教育によるものである。
風鳥院流絃術には女体の持つ娟(しなやか)さが必要不可欠な為、幼い頃から舞を踊り、琴を奏で、振り袖も着こなしてきた。このため何度となく女と間違われている。
バビロンシティにいるバックアップでない花月は女性であり、古流芸能最大流派・風鳥院和琴の跡取り娘にして、十兵衛と恋人同士だった。

ウィキペディア 『GetBackers-奪還屋-の登場人物』
以下の参照も同じ

作品全体の世界観がかなり異次元的に複雑で、
花月は、髪につけた鈴から、滝のように琴糸を噴射させて戦うのが、最初にアニメを見た時から不思議でした。
(実は、コミックがかなり長編なので、花月の素性や武技がわかるような展開以外、全部は把握していません💦)

以下、「絃術」について、やはり丁寧なので、Wikipediaを抜粋参照します。

風鳥院流絃術
全国に二十七の分派を持つ絃術・琴の流派。花月はその宗家の長男であった。
開祖は戦国時代のとある琴の妙手の少女。
風鳥院流分派の一つに西風鳥院派「麻生家」がある。そして東風鳥院流もあり、風鳥院流宗家は「」、西風鳥院流は「」、東風鳥院流は「駿」と評されている。一方で、暗殺などの「汚れ仕事」の類を“裏”たる「黒鳥院」家に全て押し付け、その犠牲と献身によって支えられる事で栄耀栄華を極めた。

私としては、開祖である戦国時代の少女の話を、独立した物語として、もっと知りたいところ。

技については、長いですが、なかなかに発想が面白いので引用します。

特技

暗禁閉(アギト)の戒
相手の目・耳・口を縫い付ける。絃は7日間の間決して解けず、見ざる言わざる聞かざるして己の罪を悔い改めさせる。

絃呪縛(げんじゅばく)
絃で相手の動きを封じる。

絃結界(げんけっかい)
絃を張り巡らせ、そこに入ろうとしたものを切り刻む。

流水の刃(りゅうすいのじん)(鉄砲水・渦巻き・雫・濁流)
風鳥院流絃術「攻の巻」第弐拾七番の壱。流水の如く絃を操り、4パターンに分けて敵を攻撃する。「鉄砲水」は琴絃の束で攻撃、「渦巻き」は凄まじいパワーの攻撃、「雫」は琴絃を頭上から無数に降らせ攻撃、「濁流」は琴絃で相手の動きを封じ、攻撃を始める技。

繭玉の楯(けんぎょくのたて)
風鳥院流絃術「守の巻」第拾五番の参。琴絃を自分の周囲に張り巡らせ、防御する技。

渦潮の陣(うずしおのじん)
風鳥院流絃術「守の巻」第拾六番の弐。渦潮状に琴絃を回転させ、竜巻を作り出し身を守る。

降雨の槍(こううのそう)(時雨・霧雨)
風鳥院流絃術「攻の巻」第弐拾七番の弐。天から槍が降るかの如く、敵の頭上から琴絃で攻撃。「時雨」は頭上から無数の琴絃で不規則に攻撃、「霧雨」は無数の琴絃を纏わりつかせ、じわじわと攻撃する技。

繭玉の檻(けんぎょくのおり)
風鳥院流絃術「拘の巻」第拾七番の弐。絃で相手の身体を巻き、捕らえる。

流星(りゅうせい)
風鳥院流絃術「攻の巻」第参拾六章の五。琴絃の束で一撃必殺のダメージを与える。

鼎絃の楯(ていげんのたて)
風鳥院流絃術「守の巻」第拾参番の六。たった3本の絃で相手の攻撃を受け流す技。受け流した力をそのまま相手に返す事も可能。

四季の滅 霜月蜂(しきのめつ そうげつほう)
風鳥院流絃術「攻の巻」第参拾弐番の四。無数の絃で相手の身体をボンレスハムのように封じると共に、技を受け括れた筋肉はすべて壊死してしまう技。術者が技を施す事で、技を解除可能。

朱雀の舞(すざくのまい)
風鳥院流絃術奥伝。花月が幼い頃、すでに会得していた技。詳細不明。

空月(くうげつ)
風鳥院流絃術秘中一子相伝の技。風鳥院流絃術「攻の巻」第九十九番の四。相手の周囲に絃の月を張り巡らせ、朧月、三日月半月と変化すると共に、新月になったが最後、相手の体は真空状態によって切り刻まれる。この技は風鳥院流の宗家と亜流派をと隔てる絶対的な壁とされている。

瀑布(ばくふ)
風鳥院流絃術「癒の巻」第弐拾壱番の参。「魔陀羅の法」により怪物と化した、遊利・舞矢の兄妹を救うべく放った技。

舞花(まいか)
風鳥院流絃術「攻の巻」第九拾九番の壱。対象目掛けて、八方から絃を襲い掛からせる。

雷鳥(らいちょう)
風鳥院流絃術「攻の巻」第九拾九番の弐。絃の束を対象の上から、高速で叩き付ける。

旋風(つむじかぜ)
風鳥院流絃術「攻の巻」第九拾九番の参。絃によって渦巻く旋風を作り出し、そこから発生するカマイタチで敵を切り刻む。

花鳥風月(かちょうふうげつ)
風鳥院流絃術秘奥義。「舞花」「雷鳥」「旋風」「空月」の4つを連続で繰り出す。技の後の字を取り、「花鳥風月」となっている。

鳳凰飛翔(ほうおうひしょう)
風鳥院流絃術外伝。風鳥院家に嫁ぐ者のみが受け継いできた禁忌の技で、絃によって鳳凰を型どり降臨させる。この技を使うには、命を燃やし尽くす覚悟と慈悲の心が必要。花月は幼少期に、母親からこの技を受け継いだ。

名前は風流ですが、
鋭い絃を使うだけに、恐ろしげな攻撃ばかりです。

代々、花月を忠実に守る家系の十兵衛は、針に特化した一族で、盲目でもあり、
耽美的な和風の風情で、『春琴抄』のような雰囲気でありながら、男性同士の絆ということで、
アニメでも見方によってはちょっとBL的でしたっけ。
(風潮として、BLをにおわせたほうが人気が出るらしいし)

主要戦闘シーンには、琴本体や演奏はまったく出てきません。
実際、戦闘に琴本体や音曲が必要となると、常時、琴を持ち歩かねばならず、
家元ながら琴は嗜みであり、武術に必要なのは絃のみとなれば、まぁあの絃の量自体がいかにもフィクションながら、
「絃術」というのも、理にかなっているといえるでしょうか。

『魔道祖師』でも、琴は持たなくても絃は携帯していたシーンがあったと思います。


   音は害にも薬にも…を作品から知る

東洋の音楽観は、古代より思想的哲学的な面が強く、
宇宙天地人心を正しく整えるための、波動響震、
誤れば、世界を見出し魂魄を損ずる、呪術としての機能が重視されます。
舞踊も、曼荼羅を描くのと同様。
歌舞音曲は、ただ美しく、見栄えよく、耳に聴こえ良いだけのものではありませんでした。

それゆえに、戦闘ものや、スピリチュアル色の強い作品に描くのに、理にかなうものと思われますし、
単に武力的な特質ではなく、それを扱う人の資質に左右され、
魔を祓い悪を滅ぼし、改心を促す、
ある種、薬やパワースポットと同様の効能が付与されます。

今、記憶している作品を思い起こすと、
日本でもかねてから、そこに注目されるかは別として、「音」や「音曲」が、なんらかの武器や効能になっている話、
または、楽器を武器にしている話は、そこそこあったように思います。

武器でなくても、その楽器や音楽がキャラクターを象徴していることは、よく見かけたような。

『笛吹童子』や、
タイトルを思い出せないのでネットで探していたら、『月笛日笛』なんて義侠時代劇もあったり、
尺八を持つ虚無僧に扮した時代劇ヒーローとか。

そういえば子供の頃、そのキャラクターを象徴する音を奏でながら、颯爽と登場してくるヒーローに、ワクワクしたことがあったっけ。
(なんの作品だったかは覚えていません)
まず、音曲で「真打ち登場!」と威圧する効果があるわけです。

昔のアニメしか観ていないけれど、
『超時空要塞マクロス』とか、
最近では、『竜とそばかすの姫』とかは、
歌や音楽が効果を表す意味で、それっぽいのかしら。

かなり昔の、何かで見てなんとなく覚えているシーンでは、
『人造人間キカイダー』で、主人公はギターを背負って放浪し、
悪の組織は、この主人公を苦しめる、笛の調べを奏でていたような。

“音”や“響き”は、実際に、心理的にも肉体的にも、ある種、致命的影響を与えるもの。
周波数攻撃なんてのもあるし、直接耳に聞こえずとも、常に流されていることで、いつの間にか神経や細胞まで害されている響きは存在します。

実のところ、最近流行りのスピリチュアル楽器(クリスタルボウル、シンギング・リン、ライアー等)は、特に奏でる人自身の氣を練りこんで、増幅しつつ拡散する作用が顕著といわれ、
意識的な邪気や悪意はなくても、我意や自尊が過ぎると、その人のエゴやカルマが増幅されて放たれてしまい、
ちょっと耳にした印象では心地よさげであっても、長く聴くうち、だんだん気分が悪くなり、
ヒーリングどころか、陰の氣にとりこまれることもあります。
(ホントに車酔いのように吐きそうになったことがある)

誰のため何のため…というより先に、
こんな特別な楽器を持てて奏でられる自分てスゴイでしょ、ほ〜ら気持ちよくしてあげる、謹しみ敬って崇拝しなさい、私は特別な存在なんだから…みたいなセラピストも、中にはいるので、注意です。

波動増幅効果がある音具、特に琴や糸もの楽器は、古来より響きの影響が強く、
そのため、今のように趣味で気軽に扱えるものでない聖具として、
現在でも、ある種の琴は、楽部などにおいて、有識人格者として認められた人にしか許されないそうです。

趣味にせよ、嗜好にせよ、
ある範囲を超えて極める志をもって、
音を発すること、人前で披露することは、
上手い下手という技能以上に、
真剣であればあるだけ、
目の前で聴く人のみならず、
目に見えぬ波動の影響を世に放つことだという、
自覚と責務を持たなければ…と、自らも肝に銘じる思いです。

決して邪念を放つものであってはならない。

フィギュアをプレゼントしてもらい、部屋に飾ったことで、
久々に、楽曲や音曲や響きを武器とする話を思い出し、いろいろ思いを巡らせるきっかけを得ました。

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