偶然から得られるひらめきのきっかけ
意識して探して得る資料より、他の用件で資料を探していた過程で、偶然に目に留まったまったく別の資料から、発見やひらめきの発露となるきっかけを得ることが多い…
忙しいと、つい、短絡的に検索で調べて知ろうとしがちですが、
ネットではなく、手間がかかってもアナログで、図書館や資料室の書棚や目録を繰ることの意義は、ここにあります。
電子辞書やWikipediaではなく、重くて分厚い事典や辞典のページをめくるうち、思いがけぬ言葉に琴線がはじかれることは、少なくありません。
手間をかけて得られた偶然は財産です
以前、私のテーマと共通する素材を卒論に選んだ大学生から、何の本を参照して書けばいいか、結論だけ教えろと迫られたことがあったのですが、
ヒントだけ教えて、ともかく図書室へ行って調べるところから始めなさいと言ったら、そんなヒマはない、教えてくれないなんてケチ!と罵倒されたことがありました。
(だいぶ前にその分野について私が投稿したネット記事を見ただけの学生で、会ったことも話したこともない相手です)
近道をとれば簡単に見えますが、研究にはマニュアルはありませんし、指針も本来は自分の中にしかありません。
私のテーマも定まった資料はなく、それまでに得られた資料も、他の調べ物の際に偶然見つけたものばかりでした。
長い時間と労力を費やして得られた、いわば財産と同じ。いずれ成果を自分なりの形としてまとめるための資料です。
同好の士に語るのは望むところでしたが、ただ安易に楽したいだけの輩に開示するのだけはゴメンでした。
本来、探究とは独自のもので、既存から外れる場合もありますから、専門書どころか定まった資料もほぼなく、何が参考となるかは、自分の判断によります。
ゆえに、あるかどうかわからない参考文献は、常にアンテナを張っているから、偶然に見つけられる類い。自分以外は関連に気づきません。
ストレートにそのものについて記されているのではないため、検索ではひっかからないし、
研究者仲間でお互いに「○○について書かれた資料を見かけたら教えて」と共有してあったとしても、他者にはそれとわからないのです。
自分で探し、自分で見つけ出し、自分で開墾し、自分で種を蒔いて、自分なりの収穫をする以外、方法はない。
最近は、閉架の図書館が多く、書棚からの発見が少なくなっているのが残念ですが、
それでもなお、アナログから得られることは、今も多く、気長にかまえるライフワークとして、常に自分の中の琴糸は敏感にしていたいと心得ています。
心の琴糸をはじく偶然のきっかけ
早急に知りたいことがある場合は別として、偶然との出会いのコツは、「躍起にならないこと」。
興味の幅は拡げておいて、分野を問わず、ちょっとでも気になるタイトルの本があったら、とりあえずページを開いてみる。
なんとなく…と開いたページや、他のことをぼんやり考えている時に、発見が飛び込んでくることが多いのです。
いつも意識しつつも、そのことについてガツガツしない。そうしていると、不思議と、情報に気づきやすくなります。
まるで追いかけると逃げる子猫みたいに、自然に近寄ってきてくれる感じ。
ところで私は、和歌が好きで、自分でも短歌を読むのですけれど、
いい歌だなぁ…と心惹かれる和歌を知るのも、たいていは偶然、ほかのことを調べていたり、関係ないことを漠然とやっている時ばかりです。
いい歌ないかな、と、和歌集や短歌集を最初から丹念に繰っていても、なかなか出会えないのですが、
ぱっとたまたま開いたページだったり、
なにか別の目的のものを閲覧していて、ふと、こんないい歌が!と目が覚めるような名歌に出くわすのです。
有名でなくても、自分の感性の琴糸をはじく歌。
そうした出会いほど、嬉しく幸せなことはありません。
また、ふとした言葉に出会うことで、自分の中に得も言われぬ何かが膨らんできて、そのまま短歌となることも、少なくありません。
作ろう作ろうとひねり出しても、うまくいかないものですが、きっかけを得て自然と導かれてきた言の葉の流れには、良し悪し以上に、魂が入るのを感じます。
これは、文筆その他、表現に関わるすべての方々に共通する感覚でしょうし、
理系・医療系・工学系等、多分野において、あって欲しいと想像するものを実現させる上で、誰もが実感する、ひらめきのきっかけではないかと思います。
偶然は必然……と言いますが、意図せぬ偶然からこの世に生まれ出るイマジネーションが、本来、生まれ出るべき命あることなのでしょう。
その必然的偶然は、常に調律して響きを待つ琴糸の如き感性により、導かれるもの。
天から舞い落ちてくる直感という羽根が、琴爪となって、私達の琴糸に触れて楽の音を響かせる如く、
ゆったりと心を澄ませ、好奇心に満ちた日々を過ごしつつ、必然的偶然を引き寄せるべく、心がけて過ごしたいものです。
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