横丁を抜けてごらん
『旦那ところでどちらから?
へぇそれは遠いところから
ささ、少し遊んでお行きやし』
石の小路を つつつと進み
それから みっつ目の角を左に
カラカラ鳴るよな 磨りの引き戸を
少し遊んでお行きやし
横丁を抜けてお行きやし
夢のあかりが灯る街
垂れ藤から紫陽花へ
移ろいゆくもの 変わりゆくもの
花かんざしが揺れる街
少し休んでお行きやし
娘は口が上手くなる
口数少なに 爪で奏でて
触れるような 突き色は 紅
それが二本に増えるころ
再び口を閉じるだろう
『旦那…忘れたらあきまへんえ』
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