山 歩 記
上信越三国境に位置する山は白砂山である。標高2139m、内陸深く静かに座する姿は、かつて秘峰と称された。残暑厳しい八月、晴天の下、山靴を履いた。
野反湖畔に車を停めて歩き出す、湖周回の尾根歩きかと高を括ったのが過ちであった。厳しい登降を延々と繰り返すが肝心の白砂山が姿を見せない、嗚呼やっぱり秘境なんだな。堂岩山を越えて初めて目にしたその姿は神々しいほどに端正なものだった。そうかこれが白砂山か。ハイマツ、シャクナゲ、ミネザクラ、灌木に包まれた気持ちのよい道。涼風に追われながら
今度こそ頂上か!の期待と落胆とを数回繰り返す。辿り着いた頂の、豪華な眺望に、労苦が消し飛んだ。