上場の「Peloton」はサブスクリプションでストック型事業?!SaaS Plus a Boxについて
2019年6月に上場申請した「Peloton」という企業についてご紹介します。2012年にアメリカで設立され、ネットフリックスのフィットネス版といわれ、家庭用のフィットネス機器の販売とサブスクリプション型のトレーニング講座を提供しています。マークザッカーバーグなど有名人も利用していると報じられています。今回はその「Peloton」の財務諸表について確認し、ストック型の理由を解説していきます。
Petotonの創業者とは?
創業者はJohn Foleyという方です。ジョージア工科大学を卒業後にマースに入社し6年間勤めた後、1997年にCitysearchで働き始めました。後にTicketmasterに買収され、その後はEvite.com、Gifts.com、Pronto.comなどのグループを経営し、2012年に「Peloton」を創業。
元々サイクリストだったことで、空間に制限があることに気づき、オンライン参加可能な「Peloton」のモデルを思いついたようです。その後、ハードウェアも製造するということで、投資家からの資金調達は苦労しましたが、最終的にはエンジェル投資家やkickstarter(アメリカのクラウドファンディング)を活用し、資金調達を行い製造販売まで進めることができたそうです。
Pelotonはどんなサービスを提供しているの??
大きなカテゴリとしては下記の2つになります。
①商品製造販売
②サブスクリプション型トレーニング講座
①商品製造販売
主力製品はPeloton Bike(フィットネスバイク)です。2014年から基本的にはこの商品がメインで販売されてきました。現在は2018年後半にTread(トレッドミル)も発売を始め、近年はヨガマットやストレッチも含めたレッスンも提供しています。
現在のPeloton bikeは金額が2,245ドル(1ドル108円の場合約24万円)、Peloton Treadについては4,295ドル(1ドル108円の場合約46万円)となっています。この二つが主力の製造販売になり、Pelotonの売上を向上させています。しかし、この商品販売だけでなくトレーニング講座との組み合わせがPelotonとして、売上を急増させている理由です。
②サブスクリプション型トレーニング講座
アプリケーションサービスはPeloton Membershipという形で39ドル(1ドル108円の場合約4200円)でサブスクリプションでの提供を行っています。
具体的には「Peloton」のバイクレッスンがありますが、“ペロトン(バイクレースの中にいる集団・グループ)”のような気分を味わえるということ、常に自分のフィジカルデータ(走行距離、ペダルの回転数など)をモニターで確認することができ、同時に同じレッスンに参加しているメンバーと順位を競うことができるという点が特徴です。こうした点から自宅でフィットネスクラブの集団トレーニングをしているような気分になることが可能です。
またこちらのサブスクリプションは一度サブスクリプションを登録することによりbikeやtreadなどですべて利用可能です。つまり、製造販売の種類が増えれば増えるほど、サブスクリプション型のツールを使うインセンティブが働きます。
現在29名のトレーナーが各種のトレーニング講座を行っており、ALEX TOUSSAINTについてフォロワー数を確認するとインスタグラムで7.3万人フォロワーなどフォロワー数が数万人を超えるトレーナーもいます。しかも、Peloton bikeのみで1日最大20個ほどのクラスがあるので、自分のライフスタイルに合ったクラスを選択することができます。もし、クラスの時間に合わなくても、オンデマンドで10000以上のトレーニング動画を選択できます。
Pelotonの気になる業績は??
売上金額
2017年 $218.6million
2018年 $435.0million【前年比199%】
2019年 $915.0million【前年比210%】
上記のように直近3年で毎年200%となっています。
製造販売とサブスクリプションのそれぞれを下記記載します。
①製造販売(Connected Fitness Products)売上金額と利益
・Revenue(cost)
2017年 $183.5million(-$113.5million)
2018年 $348.6million(-$195.0million)
2019年 $719.2million(-$410.8million)
・Profit
2017年 $70.0 (粗利率 約38%)
2018年 $153.6(粗利率 約44%)
2019年 $308.4(粗利率 約43%)
粗利時点では40%となっていますので、製造原価を加味しても利益が出せる仕組みになっていることがわかります。販管費は現状顧客獲得に費やしていると考えると、製造販売も順調といえます。ただ製造販売については送料が込みで売上があがっているため、販売管理費に計上されていると考えれらます。
②サブスクリプション(Subscription)売上金額と利益
・Revenue(cost)
2017年 $ 32.5million(-$29.3million)
2018年 $ 80.3million(-$45.5million)
2019年 $181.1million(-$103.7million)
・Profit
2017年 $3.2 (粗利率 約10%)
2018年 $34.8(粗利率 約43%)
2019年 $77.4(粗利率 約43%)
こちらも粗利率としては40%を超えているため、高収益を狙える仕組みとなっております。こちらについてはサブスクリプションサービスのために、音楽ライセンス費用などはかかると思いますが、販管費がおそらく製造販売ほどはかからないため、最終的に利益へのインパクトはより大きくなると考えられます。
現在のサブスクリプションの会員数は??
現在のサブスクリプション会員数は51万人となっています。26.5万人が昨年度より増えています。2019年度に$324millionをsales and marletingにかけていることを加味すると、1人あたりCAC(獲得コスト)が約$1223ドル(1ドル108円の場合132,084円)と仮で推測することができますね。
このCAC以上の1人あたりLTV(顧客生涯価値)が重要です。また、今後顧客数が継続して伸びていくにはチャーンレートが重要です。こちらのチャーンレートもPelotonは非常に素晴らしい数字になっております。次で確認していきましょう。
Pelotonのチャーンレートは??
月次のチャーンレートは第4Qで0.79%となっております。平均して月次約0.63%ということで、かなり低い数字になっております。
シュミレーション
LTV=平均継続期間×月次ARPU(一人当たり平均売上)
平均継続率=1÷解約率
とした場合
LTV=1÷0.0063×985million(ドル)÷510000(人)÷12(ヵ月)×粗利率
≒159(月)×$161(ドル)×0.4
≒$10,176(1ドル108円の場合1,099,008円)
*厳密にはもう少し平均継続率は低く設定していると思います。
(後程理由は記載しますが、
実質40ヵ月~60ヵ月(3.5年~5年)ほどで計算しているのでは?)
「LTV ÷ CAC ≧ 3」になっている場合、SaaS事業としてはうまくいく可能性が高いという部分を考慮すると約8倍になるためPelotonはかなり好調といえます。60ヵ月として計算した場合も約3倍になるため順調といえます。
Pelotonのチャーンレートが低い理由
実はPeloton BikeとPeloton treadが分割支払いになっています。Bikeについては無利子$58/月×39ヵ月の支払いになっていることがわかります。シンプルですが、アメリカの金利から考慮しても無利子で継続支払いを選ぶインセンティブはあるため、この点で基本的には40ヵ月ほど続けるインセンティブになります。またTreadについても同様に24ヵ月という支払い期間になっています。比較的長期的にサブスクリプション契約を続けるインセンティブになっていると考えられます。
また、もう一点として、サブスクリプション部分はBike・Tread・その他含め39ドルですべて使えるため、提供するサービスを追加するごとに、非常に強力な継続インセンティブが働くと考えられます。
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