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月の出 罪な街 東京で(創作)

ー寒満月ー

冷たい月光が降り注ぐ夜は、
君の姿を思い出す。

カタカタと音を立てて回り始めた、
あの35mmフィルムのように、
荒々しくも、
鮮明に。

夜明け前に飲んだ珈琲の香りだけを残して、
私はあなたの小さくなりゆく背中を見つめている。

ー春月夜ー

ぼんやりと潤んだ月夜の下では、
自分の夢を思い出す。

幾年前の4月18日、
過去を振り返らずに乗った始発列車。

無知で、
無傷で、
すべてに無我夢中だったあの頃に、
戻りたいかと問われれば否。

それでも確かに、
私は"あの日"を生きていた。
"あの日"を経て、
"いま"がある。

ー月涼しー

一晩中大きな月を浴びるときは、
あの街のことを思い出す。

繋ぎ合わせた夏の記憶、
しなびた古書の紙の匂い、
ゆるりと流れる白い煙に、
安息の恐怖が忍び寄る。

夢がありすぎて、
ここはまったく、
罪だらけ。

ー有明月夜ー

綺麗に、
ただ綺麗に月が映る夜だけは、
何も思い出すことができない。

月が、
街が、
人が、
すべてが不気味なほど美しくて、
その美しさに、
私たちはただ照らされているだけで足ることを知る。

この瞬間にときめいたり、
うぬ惚れていたいとすら願うから、
私たちは今日も、
月の出、
罪な街、
東京で、
過去のすべてを引っ提げ歌っている。

罪深く、
夢だらけの場所で、
歌っている。

***

新曲、リリースされました。

『MOONRISE TOKYO SIN CITY』
Song: Hiroi Gen
Lyric: Katayanagi Hirotaka


***

良かったら、わたしの過去の作詞曲も聴いてみてください。

『Coffee, Before the Dawn』
Song: Hiroi Gen
Lyric: Katayanagi Hirotaka


『Summer Montage』
Song: Hiroi Gen
Lyric: Katayanagi Hirotaka


『418』
Song: Hiroi Gen
Lyric: Katayanagi Hirotaka


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