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日本全都道府県に行ってきた(長崎の坂を上り下り)
2022年9月から12月にかけて、日本を旅していました。最初の目標は、「日本最北端の駅である稚内駅と、最南端の駅である西大山駅の両方に行こう!」というものでしたが、途中から、「アレ?もしかしたら全都道府県を通れるかも…」という野望(?)が頭をもたげて来て…はてさて、それは達成できたのか?
これまでの流れはこのマガジンからどうぞ。
11月29日
今日は一日長崎観光ができる。
長崎は歴史好きにはたまらない街である。特に幕末から現代に至る歴史で長崎は重要な役割を果たしてきた。
あいにくの曇り空だが、市内観光だから問題はないだろう。
まずは路面電車にガタゴトと揺られて、やはり行かなくてはならないだろうあの場所へ。
長崎らしい坂の多い道を登っていくと、原爆資料館に着いた。このあたりは平和祈念関連の建物が多い。
修学旅行生を始めとした学生団体が多く、彼らはこの展示を見てどう思うのだろうか。
当時の遺品の数々は、圧倒的としか言いようがなかった。これは何回見ても慣れる、ということはないだろう。
最後の方には、原爆に遭った連合軍捕虜のインタビューの映像があり、オーストラリア軍捕虜のそれもいくつかあり、オージー英語で当時の状況を語っている元軍人の映像は見ていて身につまされた。戦争には勝者はいない。
そこから少し離れた平和公園、落下中心碑にも行った。
ここで見たことについては、上手く書けないし、はばかられるような気がして写真も撮っていなかった。
何かを書いたとしても、おざなりというか、ありきたりの「感想」しか書くことが出来ないし、そんなことをしてどうなるというのだろう?
僕にできることはなんだろうか。せいぜい、1945年8月9日の空の色がどのようだったのかと、想像をたくましくすることくらいしかできないのかもしれない。
非経験者としては、資料館に展示されていた物から、一生懸命に当時の人の気持ち、状況、空気感…そういったものを想像し、感情移入する。それに尽きるのではないだろうか。
少し重くなった気持ちを引きずりながら公園を離れ、次は出島に行ってみた。
当時の建物が復元されていて、貿易の状況、オランダ商人の生活の様子などをうかがい知ることが出来た。江戸時代には唯一外に開かれた、いわば特別な街だった長崎が、今度は外国からもたらされた強烈な原爆によって灰燼に帰してしまった、というのはアイロニーだな、と思った。
そこから中華街はそれほど遠くないので、目についたレストランに入り、そうそう、長崎名物といえばこれも食べなくては。
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野菜がどっさりと入ったちゃんぽん、おいしゅうございました。
さて、次の目的地はグラバー園である。
急坂を登って園に入り、そこからさらに登った所からの眺めは、曇り空ではあったが素晴らしかった。
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それにしても長崎は、少しの平地をぐるりと山が囲んでいて、そこに家がへばりつくようにして建てられている街なんだなあ。この日は雲がとても低く垂れ込めていて、さほど高くない山々なのにそのてっぺんには雲がかかっていた。
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旧グラバー邸は、和洋折衷の建築様式だった。この園の中には他にもいくつかの歴史的住宅が保全されていて、ああなにかいい感じだよな…と思ってしまった。
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それにしても、坂また坂の長崎。近道をしようと思ったら少し道に迷ってしまい、余計な坂をたくさん上り下りするはめになってしまった。
でも、僕が育った横浜も坂が多い街だし、今住んでいるシドニーだってそう。
坂が多い街は色々大変だけど、景色にアクセントが付くという点では素敵である。
ウロウロしていたら夜になったので、そういえば長崎名所のこれを見ないと…と、ホテルからそれほど遠くないこの場所へ。
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めがね橋。確か何回も流されたはずなので、歴史的建造物というわけでもないのだろうが、街なかを流れる川にかかるアーチ橋は、ライトアップの加減も素敵で、しばし佇んでしまう。
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さて、今晩の晩ごはんは、ちょっと豪華なところへ!
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長崎といえば卓袱料理を是非食べてね!と友だちに言われたのだけど、そもそも卓袱料理ってなんだっけ?聞いたことはあるけど。
卓袱料理(しっぽくりょうり)とは、中国料理や西欧料理が日本化した宴会料理の一種。長崎市を発祥の地とし、大皿に盛られたコース料理を、円卓を囲んで味わう形式をもつ。和食、中華、洋食(主に出島に商館を構えたオランダ、すなわち阿蘭陀)の要素が互いに交じり合っていることから、和華蘭料理(わからんりょうり)とも評される。日本料理で用いられている膳ではなく、テーブル(卓)に料理を乗せて食事を行う点に特徴がある[1]。 献立には中国料理特有の薬膳思想が組み込まれていると考えられている[2]。
ただ、これはテーブルを囲んで大勢の人で食べるものらしく、おひとり様だとあまり提供している料理店が多くない。
でも友だちが探してくれたこのお店に昨日足を運んで予約を入れておいたのである。
なかなかしっとりとした風情の高級料理店、という趣で、この旅行中でいちばんのハイクラスの食べ物屋さんだろう。
ちょっと緊張してしまった。
今回食べる卓袱料理は、まずはお吸い物からスタート。
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色どりも鮮やかな品々。
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基本的に懐石料理だけど、中国、オランダの影響を受けた食べ物も出てくるところが特徴で、例えばこれはハトシという、エビのすり身をパンのようなものに挟んで揚げたもの。サクサクとした食感。
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それから、豚の角煮も必ず出るそうだ。そうか、豚肉は普通食べないよなあ。これがご飯によく合うんだ…お代わりをしてしまったわ、もちろん。
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締めのデザート。柿を食べるのは久々だったなあ…。
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卓袱料理、文化的なおベンキョウにもなったし、美味しかった!
ちと飲みたりなかったので、またしても思案橋のバーで何杯か飲む。ここでもバーのスタッフ、呑んでた人と話が弾んでしまった。長崎の人は、フレンドリーなのだろうか?たまたま?
こういう場所だと、バーのヒトは「観光ですか?どこから?」って聞くじゃないですか。ここで、「今シドニー住んでるんですよ」って言えるのはいいよなあ、と思う。僕は普段はそんなに外向的だったり、話の引き出しが多いヒトでもないので、自慢したいわけじゃないけど、話の種があるのは助かるよね。
飲んだらまた甘いものが食べたくなったので、長崎名物のこれをホテルで…。
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そうそう、長崎の街を歩いていると、B明堂とか、F砂屋といった大手はもちろんだけど、町のお菓子屋さん、といった小さなお店でもカステラを作っていて流石だなあ、と思った。
長崎って、独特な名物多くないですか?
(つづく)