61歳の食卓(7)春香るそらまめと鮭のおにぎり
2月上旬、気づけば、そらまめが八百屋さんの店先に姿を見せている。
「あら、昨年末から入荷しているわよ」と、築地・藤本商店の女将さん。「今はもう、新じゃが、新玉ねぎも!」
寒さが底をついた感の2月中旬、青果店のラインナップは春への助走を始めている。
大きな鞘の内側の、真綿のようにふわふわとしたクッションに包まれて、そらまめ一粒一粒はすやすやと眠っているかのようだ。布団を剥ぐように無理やり鞘から取り出して、さらにパジャマまで剥ぎ取るように薄皮まで剥くことはできず、鞘ごと七厘の網に載せて焼いてしまう。周囲が真っ黒になる頃、まめは蒸されて青臭い香りを放つ。その特有の匂いが嫌いという人もいるが、これが意外にも塩鮭と相性が良い。
鮭の炊き込みご飯に、少し固めに蒸し上がったそらまめを加えて、まめを割りほぐしながらザックザックと混ぜる。しゃもじで大体120gの混ぜご飯をおにぎりの型に詰めて抜くと、白い米に鮭の紅と豆のうすみどりが映えて美しい。
「春色おにぎりですね」との市場仲間のひとことに、なんだか冬が駆け足で去りゆくようで、気持ちが急く。
小さな鮭屋を営んでいるが、62歳のチャレンジと銘打ち、春が来たら鮭おにぎりを売ろうと考えている。鮭に季節の野菜などを合わせて、鮭屋ならではのおにぎりを!と、試作に明け暮れる今日このごろである。
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