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【掌編小説】私はまだ存在していない


・私はまだ存在していない

私はまだ存在していない

声が聞こえる 誰もが言葉を紡ぎ何かを話している
視線が交錯する 誰もが目を動かし何かを知覚する
人がすれ違う 誰もが黒点のように動く

それが人の営みなのだろう
誰も興味のないものは誰も気がつかない、目の前に転がっていようが関係ない
 
私は声を上げる
ベースをかき鳴らし音に乗せて歌を歌う

道を行く黒点がこちらに聞き耳を立てる
数多の視線が私の身体に突き刺さる
行きかう黒点が足を止める

さあ私を見て
さあ私を聞いて
さあ私に立ち止まって

声帯が焼き付き、目の前が真っ暗になって、進む足が止まろうとも
私は世間に、世界に突きつけるこの声を、視線を、動きを

世界は広い…だけどだれも私を無視できない存在にしてやる
私はまだ存在していないのだから

・あとがき

どうも月影 冬衣 です
如何だったでしょうか?
掌編小説第四弾になります
これはとある人物をイメージして作らせて頂きました
目に見えてイメージできるものがあると筆が上手く進みますね
さて長編小説の方ですが来月には完成予定です
先延ばし先延ばし…やはり私は自分に甘いですね

それではまた何処かで

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