【債権回収】裁判で勝ちました!お金は勝手に入ってくる?強制執行の基礎知識
結論
勝手に入っては「きません。」
どういうこと?
誰かにお金を貸したけど返ってこない、ホームページを作成して納品したのに代金を払ってくれない、工事を完成したのに請負代金を払ってくれない等々、
任意にお金を支払ってくれない場合には、やむなく訴訟をするしかないということもあります。
「訴えてやる!」ってやつですね。
しかし、訴訟を起こす前に必ず考えなければならないのは、「本当にお金を回収できるか?」ということです。
※ 以下、お金を回収する側を「債権者」
お金を払わないといけない側を「債務者」
と呼んで説明します。
判決も「紙切れ」になり得る
例えば、お金の支払いを請求する訴訟で勝てば、その判決をもとに強制執行ができます。敗訴した被告(債務者)としては、強制執行が待ち受けているのですから、判決で命じられたお金を払うのが通常とも考えられます。
しかし、残念ながら、判決で命じられたお金を払わない人も、普通にいます。
「払わなければ、強制執行!」
なのですが、いつもうまくいくとは限りません。
判決で認められたお金が回収できず、判決がまさに「紙切れ」になってしまうこともあります。
「財産の特定」という負担
強制執行とは、債務者の「財産」を差し押さえ、お金に変えて、そこから強制的に回収して債権の満足を得る手続です。
例えば、債務者名義の預金から(銀行から)強制的に回収するというのが典型的です。
ここにいう、債務者の「財産」は、もちろん預金のみに限られませんが、債権者側(強制執行をする側)で特定する必要があります。
「訴訟で勝ったから、この人の財産洗い出して強制的に回収してくれや」なんてことを裁判所に申し立てても、受け付けてくれません。
財産を特定できなければ、ある意味そこで終わりです。債務者が払ってくれないお金を国が払ってくれるなんてこともありません。
無慈悲かも知れませんが、これが現実です。
こういった現実を知ったうえで作戦を練らなければならないです。
「財産調査」という武器
だからこそ、債務者の財産を知る、調査することは、債権回収において必須のことです。
訴訟に踏み切る前に、勝ったとして回収できるか?ということまで考えておく必要があります。
また、訴訟をするにも、次のようなお金がかかります。
・弁護士費用
・請求額に応じた印紙代
※ 裁判所に納める手数料のようなものです。
・訴状等を相手に送るための郵送代
・交通費
※ 特に、遠方の裁判所に出頭する必要がある場合
このような費用をかけてまで訴訟をしたのに、回収できなければまさに費用倒れです。
そこで、強制執行の対象になり得る相手の財産を把握しておく必要があります。
財産の典型例
⑴ 不動産
債務者が所有している不動産はもちろん強制執行の対象になります。その不動産を競売にかけて売却代金から回収するという方法です。
しかし、債務者が借入等のために、その不動産に抵当権を設定していることもあります(これは不動産登記を見れば分かります。)。先に抵当権が設定され、登記までされてしまっていれば、抵当権者の方が優先します。すなわち、競売による売却代金から、抵当権者が優先的に持っていっちゃうことになるので、その余りからしか回収できません。
⑵ 預貯金
債務者名義の預貯金から回収することもあり得ます。
しかし、債務者が当該金融機関に対して、借入金等の債務を負担している場合もあります。この場合、金融機関が「相殺」によって預貯金から優先的に債権回収を図ることもあります。そうなると、強制執行も空振りとなってしまいます。
⑶第三者に対する債権
債務者が第三者に対して有している債権から回収することも考えられます。
例えば、債務者の売掛先に対する売掛債権、債務者の勤務先に対する給与債権などです。
財産調査の方法
そこで気になるのは、どうやって債務者の財産を調査すればいいのか、という点です。方法は無数にあると思いますが、ここでは一例として弁護士会照会について説明します。
弁護士会照会(いわゆる23条照会)
弁護士は、依頼を受けている事件であれば、弁護士会を通じて、公務所や公私の団体に対して照会をかけ、報告を求めることができます。
例えば、金融機関に対して、「債務者名義の預貯金口座はありますか?」と照会をかけて回答を得ることが典型例です。
弁護士(弁護士会)にはこういった調査の手法があります。
注意すべきは、「弁護士に依頼している事件でないと、弁護士会照会は使えない」ということです。つまり、弁護士に「調査だけお願い!」はできません。
おわりに
債権回収においては、回収の「可能性」まで考えておく必要がある、というお話でした。
ここまで、債務者の財産を探すことの負担について説明してきましたが、このような問題に対応すべく、法律(民事執行法)が改正され、令和2年4月1日から新しい制度(財産開示制度の強化、第三者からの情報取得手続)が始まりました。
しかし、確実な債権回収のためにはまだまだ不十分な点が否めません。お金を返さない「逃げ得」を許さないためにも、民事執行法はさらに改正される必要があると考えます。
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