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映画「式日」の主観に基づく感想

全ての傷を負った人たちに


会社で無理難題を言いつけられ続け、ボロボロに
された挙句、働けなくなってお払い箱にされた
人は…

毒親の願望をかなえ続け、自分を失くし、夢も目標もなく
残りの人生の長さに絶望した人は…

普通を強要され、普通の答えを見いだせないまま
自己嫌悪の連鎖の中で溺死しそうな人は…

親も兄弟も親友もなく、沢山の人がいる中で
繋がりを持てずに孤独を深めてる人は…

人の笑顔と青い空が憎くて憎くてたまらない人は…

自分と相手に我慢する関係しか築けず
感情のダムが決壊してしまった人は…


自分の赤い傷を舐めることでしか自分を慰められず
子宮の中の子供の様にうずくまる事しか出来ない人は…


…幸いである。

なぜなら、「式日」を観るという素晴らしい儀式の
準備が整ったという事である。
この映画は心に傷を負った人間の再生とセカンドバース
(第2の誕生)のストーリーである。


心に負った傷は目に見えないものであろうか?

子供の頃に受けた母親の何気ない一言、
父親の暴力への畏怖
同世代との比較
友人の裏切り
自分自身への失望、諦め…etc

人によっては、太った体で注目を集め、
自身への諦めがやせ細った体に現れる。
又、ある人は自信の無さの裏返しで身体を鍛える。
誰であっても自分で気付かないうちに体に
年輪のように傷が刻まれていく。

そして傷は連鎖していく
顔も知らない祖先から父、母そして私に
傷を受けた私は誰かを傷つける
それの何が悪いのか?
だって私は我慢してきた。
あなたも我慢するべきだ。

スクリーンショット 2021-03-18 22.06.50

ー病んでいるパパもママも病んでいる…そして私は一番、病んでいる。
                        
                     作中 絵本のナレーション


再誕の儀式


心に傷を負った彼女が自分を回復させるストーリーはあたかも
日本人であるなら誰でもやるであろう神社への参拝の儀式を彷彿させる。

鳥居をくぐり

参道を通り

手に水を満たし…宮に願をかけ

参道を通り

鳥居をくぐる


彼女の場合、身内や事件で傷付けられて自分を失ってしまう。
しかしカントクと出会って、徐々に自分の願望に気付き
正常(社会的)な感覚を取り戻していく
そして自らのトラウマを逆戻ししながら
折り合いを付けていくのだ。

そして再生の儀式が終わったとき彼女は自らの誕生日を
迎えることができるのであった…

後書き


個人的に最後のcoccoの歌も圧巻で晴れ晴れとした
気持ちで見終わる事が出来て、すごく良かったと思う。
映像のセンス、人間の人生を丸々見通すような脚本も
本当に見事としか言いようがない。

そして冒頭の「彼女」が持ってる赤い傘を
婚礼の時に使う新郎が新婦を衛る番笠に準えているのは
なかなか粋な計らいだと思った。

最後に、人生に疲れたり絶望したりした人の再生と
新しい自分への誕生にこの映画を観ることで
何らかの寄与がある事を願うばかりである。


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