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国税庁「サケビバ!」ずれてるかもしれん見解。

国税庁の「サケビバ!」の批判が続いている。若者へのお酒の強要、国税庁の税収確保という視点から厳しい意見が上がっているが、僕の違和感を覚えた部分は、そこではない。

気になったのはむしろ、日本酒推進の取組に、若者を狙い撃ちしてアイデアを捻出させる発想が他力本願に見えて、どことなく姑息さを感じた部分だ。

国税庁のコメントの中に、「若年層自身にビジネスプランを提案してもらう」とあるが、なぜ「自身」という修飾語を追加したのか。あたかも彼らこそが主役であるかのような書きぶりだ。「これからの日本酒文化は、あなたたち若者が担い手になるのだよ」という少し傲慢なニュアンスが見える。

アイデアを出すのに、若者にターゲットを絞る必要性はない。数の論理で考えると、むしろ幅広い世代からピックアップした方が遙かに多くの良案を得ることができる。なぜそれをしなかったのか。若年層の方が斬新なアイデアを期待できるからだろうか。それもあるかもしれないが、僕には、文化を暗に担わせる将来負担の強要に見える。

「大人はずるい。」この企画を一言で表現すると、これに尽きる。国税庁は自ら知恵を絞ることを放棄して、若者に丸投げしただけの企画だと思う。この丸投げは、中央官庁としてのプライドはないのか?という感覚がある。

国税庁という官庁の特殊性もあるのかもしれない。ここだけで日本酒全体の業界底上げを図るのは実質不可能であろう。縦割りされている農水省や経産省等との連携は必須である。実はその連携を行うとなると、相当の時間と労力を要する。

この鈍重性は、フットワークの軽い民間企業ではあり得ないスピード感なのだが、中央官庁には、個々に数多くの「管理職」が存在し、彼らの決裁が不可欠だ。そしてその後。その個々の決定事項を複数の官庁で横串をさす調整作業が待っている。それを小規模官庁の国税庁が仕切るというシナリオは、とても難易度の高いプロセスだ。

酒税を司る官庁として、産業を発展させたい意思は伝わるが、正直付け焼き刃感が否めない。ドラスティックに何かを変えないと、ポジティブな可能性が見えてこないのではないか。そこで考えてみた。

堅い話になるが、まず法整備だと思う。もちろん自由度の高いアイデアを集めるというのも大事だが、まずは基礎を固めたい。体系化された法律があってこそ、健全な産業構造が生まれる。

今の日本には「酒税法」はあるが、「酒造法」がない。お酒を造るおおもとの教科書が存在しないということだ。例えると、ドイツのビール純粋令に当てはまる法律が見当たらない。酒税法に清酒の定義等はあるが、どうやって日本酒を醸造するのか、記載されていない。これってとても不思議なことだと思う。

酒蔵は何に基づいて清酒を醸造しているのか。それは各社独自の基準で造られている。物差しがないことで、多様性が広がるという視点はあるが、製造基準が存在しない飲料から税金を徴収しているというのは、やはりおかしな話だと思う。

そして、縦割り行政の排除だ。前述したが、日本酒に関与する官庁が多すぎる。それ故にこのような緩慢な政策ができたのではないだろうか。頭を取る官庁あるいは部署に集約することが重要だと思う。酒税・食品管理・流通・文化振興を一元統括できる管轄があることで、施策のクオリティもスピード感も向上すると思う。

業界も同様だと思う。一元管理するトップ組織がない。協会が複数あるが、セクショナリズムの域を出ない。以前noteでも書いたが、老朽化した酒蔵の脆弱度や耐震性を全国的に把握している組織がない。業界を俯瞰する視点を持った組織が存在しないという状況は改善してほしい部分だ。

こう書いていくと、すべて組織改革に収束されて行くことに、自分でも驚いている。組織が酒蔵個々の情報をキャッチし、データベースとして管理し、あるべき方向性や施策を導く。そこには許容する自由度も必要だし、ある程度の規律も必要だ。SNSが発達し、今は個人が発信し自ら切り開く時代ではるが、業界全体の発展を願うなら、その手綱を握る組織、そして法整備は必要不可欠だと思う。

このような意見を述べるのは、僕がズブズブの組織人ゆえの視点かもしれない。僕が所属する日本酒コミュニティstarterには、様々な職種の方々がいるので、個人の経験や哲学、職業倫理の違いで、主張は違ってくるだろう。その多様性が面白い部分だと思う。そしてその多様性をキャッチし、共通性を見いだし、相反性や利害を調整し、秀逸なアイデアを捻出するのは、最終的には個人ではなく組織なのだと思う。そんな意味で、starterという組織は、今後、「物言う酒飲み集団」として、将来、業界に辛口の楔を打ち込んでいく存在になるかもしれない。

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