ワンオフ…深く罪深い沼への誘い

10数年経った現在でも、ワンオフお迎えへの苛烈な競争は変わらない様に思う。人気のヘッド&メイクアップアーティストさんの組み合わせだと、10数人がくじを引いてと言う事もある。

SDをまだ持っていなかった時に、私はドールイベントへ行った。習うより慣れろの精神である。韓国の友人がくれたドールを、一緒に送られてきたドールバッグで背負って行ったが出す事は無かった。その時は多分撮影ブースなど無かったのかもしれないし、初めて行ったドールイベントに夢中でそれどころでは無かったのかも知れない。

とにかくそこで、素敵な出逢いがあった。韓国ドールの服を販売していたOさんが、初心者の私に色々な話をして下さり、また新たなサイズのドールの魅力を存分に語ってくれた。今で言う幼SDサイズの子だった。片手に座らせ持ち運べるほどの、小さなドール。幼い顔つきとキューピーの様な体型で妖精のように愛らしかった。Oさんのプレゼンテーションも良かったし、とても興味を惹かれた。このサイズもいつかお迎えしたいな。

Oさんとは何と今も縁が続いており、お互い所有するドールも何度となく入れ替わったが仲良くしている。ありがたい稀有なご縁に早々に恵まれたのであった。

そんなOさんは、一人のワンオフを見せてくれた。店舗の移転記念のメモリアルワンオフだと言う。オークションで競られていたあの人気ヘッドを、メイクアップアーティストさんがメイクした特別な子だ。

しかも性別が違う。これは当時衝撃的だった。メイクも当然、性別に合わせてあるがこれがまた素晴らしい物で、こんなにも表情が変わるのかと全方位から拝見させて貰った。まつ毛も数枚貼られていて、唇も驚くほど繊細だった。

そこで初めて、毎月天使のすみかでワンオフの日があり、特別な子をお迎えするチャンスがあると知った。私がアナイス、ミカエルとお迎えを叶えた後、そのワンオフで見掛けた気になる子がいた。ミシェルである。

ミシェルは、元は男子ドールなのに、圧倒的に女子としてワンオフに出て来るのは今も変わっていないように思う。歯を見せている口元、エラの張った輪郭に柔らかな目元は当時好きだったモデルの佐田真由美さんの様だと思った。

大人っぽさと幼さの混じったミシェルの造詣でワンオフが欲しいと思ったが、私は当時ワンオフ日である日曜日に休む事が出来ない職であり、チャンスも無かった。まず、ミシェルが地元すみかに来なければ始まらないのだし。

するとOさんと、Oさんの友人が代理でお迎えしてくれると言う。ふたつ返事でお願いをし、数度のワンオフ日を経てミシェルが地元すみかに来た時、お迎えして貰えた。仕事中のメールに期待と不安が広がった。顔も見ずにお迎えなど、大丈夫なのだろうか?Oさん達はとても素晴らしいメイクだ、可愛い子だと絶賛している…ワンオフは基本、店頭で写真を撮る事が許されていないので想像するしかない。

残業で当日見に行けなかった為、私は翌日ドキドキしながらすみかに行った。

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