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Sports X Leaders Program修了生によるキャリア論②
NCAAで活躍する現役アスリートが、今こそ考えるアスリートの価値とは
Sports X Initiative(SXI)の魅力の一つに多様なメンバーが上げられます。現役アスリートやビジネスパーソンなどスポーツに関わる様々な立場のメンバーが関わっていることが私達の強みです。
今回、アメリカのNCAA(Division 1)でアイスホッケー選手として活躍し、Sports X Leaders Program(以下SXLP)1期生でもある三浦優希に、自身のアスリートとしてのキャリアや考え方について話を聞きました。
前回は、SXLPとの出会いや海外で挑戦し続けることについて話を聞きました。今回はコロナ禍におけるアスリートの価値や、アスリートによるSNSでの情報発信についてお伝えします。
コロナ影響で、アスリートの価値は確実にアップデートされている
コロナ禍の4ヶ月間は日本に帰っていましたが、7月末にアメリカに戻ってきました。
102. アメリカ到着!|三浦優希 Yuki Miura|note
コロナの影響で試合ができない時期が続きました。それはアイスホッケーに限らず、全世界的にほぼすべてのスポーツがストップしたと言えるでしょう。活躍する場を失った状況を目の当たりにし、この数ヶ月で急速に「アスリートの価値」がアップデートされたと感じています。
試合がなくなった中で「どのようにして社会に価値を表現していくか」を考えると、「オンライン上で何ができるか」を考えながら行動することが必要不可欠になりました。
試合ができなくなったことによりSNSを始めた選手もいると思います。一例はyoutubeやnoteなどです。私個人としては、せっかく始めるならなんとなく始めるよりもSNSを利用する目的を考えたほうがいいと思っています。
一方で、「SNSをうまく活用できるかどうかがアスリートのよさを決める」という風潮が最近出てきていると感じます。私はそうとは思いません。SNSをうまく活用できなければそのアスリートの価値が高められていないかというと、決してそうではない。
アスリートという形をSNSを通して広める人もいれば、他の手段を活用してアスリートの価値を高めている人もいると感じています。
アスリートの存在価値は、もちろんSNS上だけではありません。SNSを通して何千人にメッセージを伝えていくというアスリートと、小さな街で自分の近くにいる子供だけに戦っている姿を見せることで励ますというアスリートがいたとして、どっちがいいとか悪いとかいう話ではないからです。
「SNSなんて一切関わらず、競技に全力を注いでいる人」は価値が低いですか? そんなことないですよね。とてもかっこいいと思います。
SNSは情報発信のツールの一つに過ぎない
では「自分がSNSで発信しよう」と思った理由は、やはり海外で挑戦をすることに対する責任感からくるものでした。私は、日本にいる人が体験できないことを日々体験して過ごしています。そんな体験を自分の中に留めてしまうのは、ここにいる責任を果たしていないと思ったのです。
自分の成長過程を発信すれば、ホッケーをうまくなりたい人、もっとホッケーを知りたい人にとってきっと有益な情報になると考えました。その発信の方法としての最善な方法はなにか?と考えたとき、私にとっての方法はSNS活用でした。
いざSNSを始めてみたら、自分で映像は撮らないといけないし、編集をしないといけないし、文章を書かないといけない。正直SNSの更新にはそれなりの手間と時間がかかります。でも、ここでもやはり自分を動かすのはノブレス・オブリージュという考え方です。「自分が届けないとだれが届けるの?」という強い思いによって自分は動かされます。
よって、発信し続けることは全く苦ではありません。いろんな人が待ってくれていますし、自分にとっては一つの習慣として生活に組み込まれています。なにより、僕にとっては発信すること自体がとても楽しいことです。
SNSは自分の考えを広く投げかける場所。意見は賛否あって当然。
発信を始めてみて学んだことはたくさんあります。
そもそもなにかを発信することはなにか自分で作品を作り上げることです。継続していくとどれほど大変なのかを知りました。視点を広げると、SNSに限らず日常で何気なく使っている物や道具も、誰か作ってくれている人がいるのだと感じられるようになりました。
それから、SNSは人の反応がダイレクトに伝わりやすい。定量的にどういったものが求められているか、世間がなにを知りたがっているかがわかりやすい。そのあたりの反応をみるのは面白いですね。
中にはいろいろな意見をぶつけてくる方もいます。そもそも人の意見が集う場所がSNSです。自分が何らかの考えを投じているので、それに対して賛成があれば反対があるのも当然だと思っています。やり取りをする上での礼儀やマナーは必要ですが、議論を巻き起こすことに対して恐怖感はないです。それよりも自分の考えを自分の中で閉じ込めてしまうことの方がもったいないですよね。
発信に関するプランニングは全て自分一人で考えています。例えばファンの方に「何が知りたいですか?」と聞いて投稿を考えることも稀にありますが、自分はSNSを通じて「成長過程を届ける」と決めているので、正直な姿を出すことを第一のミッションと掲げています。自分が自身で思いついたことを素直に出していきたいです。
Twitterのタイムライン見ていると、あたかもそれが世界中の全てなのかなと思ってしまいそうになることがあります。ですが、当然SNSで見られるものは世界の一部です。SNS上で言われていることがすべて正しいことではないので、情報に飲み込まれないようにする注意は必要です。
本物のアスリート像は、思いをもって社会を動かせる人。より良い世界を作りたいと思いが必要。
私が思う本物のアスリート像は、ただ競技で良い結果を得るだけじゃなくて、社会的なムーブメントを起こせる人です。もちろんスポーツを極める過程で、もっと皆さんがいる場所を良くしていく、変化を起こす。そういった行動が伴って初めて本物なんだと言えると思います。自分が具体的な理想像になれるかどうかはわかりません。
でも、よい影響を周囲に与えられ、よりよい世界を作り上げていく上で力をつけたい。知名度も確かに必要ですが、自分の活動を広げるためには、影響力も必要になります。
結局のところ一番大切なのは自分の感情に正直でいることだと思っています。自分の信念を貫くこと。人を動かす、社会を変えていく、というのは「こうしたい、こうしなけれならない」という思いが自分を動かし、人を巻き込んでいくことができる思っています。
三浦優希 Yuki Miura
1996年生まれ。アイスホッケーをやっています。高校2年生の時に早実を離れ海外挑戦を始めました。チェコ、アメリカを経て現在はNCAAのDivision 1に所属するLake Superior State University に通う学生アスリートです。
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(取材・構成:SXLP1期/太田光俊)