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【日記】 夏も冬も私の夜は白く

今年になって、ドラッグストアに売ってる袋詰めの氷を買うようになった。

もともと冷たすぎるものが得意ではないし、冷蔵庫に製氷機がついていないのもあって氷を使うことはほとんどなかった。しかし、彼氏が家で冷えた飲み物を飲むために氷を買い、帰ってからその残りを使ってレモネードやらアイスコーヒーやらに使ってみると、これが冷たくてとてもおいしかった(当たり前だが)。それ以降、私の家の冷凍庫には大粒の氷の入ったパックが常駐し、アイスコーヒーを入れたり、お酒を飲むときに召喚されるようになったのだ。

昨日、いつものように冷たい飲み物をと氷のパックを冷凍庫から取りだし、グラスに入れ、ジップをぱちぱちっと閉めた。ここで気を抜いたのがいけなかった。冷凍庫にパックを詰め込んだその時、少しジップが開いていた隙間から、氷たちががらがらと雪崩のように落ちていった。気づけば冷蔵庫前のフローリングはつやつやと半透明の氷で埋まり、白いLEDの光を反射してきらめいていた。
突然の出来事にぼうぜんとしたのも束の間、急いでボウルの中に氷を回収し始めた。少し手が触れると、薄く白みがかった膜を張っていた氷の表面がしゅんっと溶け、とげとげしさのないカーブを描いた、やわらかそうな姿を見せた。せかせかと氷を拾い集めながらも、その美しさに深い息が漏れる。

袋の中に入っていた大半の氷が地面に落ち、仕方なく流しで全て溶かすことにした。

半透明の氷は、銀色のシンクの中で水とキッチンの白い照明を受けながら、ゆらゆらと輝いている。きらきらとしているのに、とても静かな光景のように感じた。フルカラーの世界に突如現れたグレースケールの空間は、私を冷ややかにときめかせた。

この出来事で、冬は白、というイメージがわたしの中に漠然とあったのが、ああ夏も白いんだなという感覚を与えてくれた。冬は雪や吐く息から白を得るように、夏はドラッグストアの氷から白を得るんだ。冬の白と違って、涼しげな印象を与える白、というのもいいなと思った。ちょっとショックな出来事ではあったが、新たな気づきだったということで消化する。

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