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クリエイターの仕事とお金、続けていくために必要なアレコレ
所属する会社は、この4月で30期目を迎えます。
「生存者バイアス」という視点があるかもしれませんが、仕事を続ける上で欠かせない「お金」に関して考えを綴ってみます。
「代表」としての立場ではあるものの、経営者然としたスタンスではないため、「所属している」としました。
ちょっと昔…
少し前までは、以下のようなことが“当たり前”として行われていました。
「うちは、こうだから…」と、異常に長い支払いサイト(取引の締め日から代金を支払うまでの期間)を押し付けられる
電信振込なら200円程度の手数料で済むところを、(文書扱いなのか)700円近い振込手数料を差し引かれて振り込まれる
しかし、2016年の下請法(正式名称「下請代金支払遅延等防止法」)の改正をきっかけに、こうした商習慣は大きく変わりました。
それ以降、ほとんどの企業からのお振込は「翌月末」になりました。
振込手数料に関しては、インボイス制度がその背景にあります。手数料を差し引くことで取引の手間が増えてしまうことが原因のようです。
フリーランス法?
2024年11月「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、通称、フリーランス法が施行されました。
この法律は、そもそもの「フリーランス」の定義がややこしい面もありますが、2016年の下請法改正と同様に、弱い立場に置かれがちな個人事業主を支援することを目的としているとのことです。
フリーランスの方が安心して働ける環境の整備を図ることが目的
約束事を記録に残す
フリーランスに業務委託を行う際、発注者側は取引条件を明示する義務があります。契約書の形式でなくても、メールやSNSのメッセージで記録が残れば有効です。要するに、口頭で済ませず、必ず記録に残しましょうということです。
とはいえ、発注側から条件提示がないケースも考えられます。その場合、受注側から「今回の条件は〜」といった形で積極的に伝えるのがよいでしょう。
思い通りに進まない場面も多いかもしれませんが、フリーランス法の有無にかかわらず、まずはここから始めることが大切です。
契約書/お仕事確認書
「契約書」という言葉に構えてしまったり、見ただけで抵抗を感じる方も多いでしょう。「お仕事確認書」という切り口は、とてもスマートで親しみやすい印象を与えます。
制作と業務管理
クリエイターとして個人で仕事をされている方には、「数字や書類作成が苦手」と感じる傾向が見られます。苦手なことを無理に…という気持ちもわかりますが、仕事を継続していくためには、制作と業務管理は車の両輪のようにどちらも欠かせないものです。
「事業運営」はスキル
「経営」というと少し大げさに聞こえるので、「事業運営」と表現しましょう。制作が一つのスキルであるように、「事業運営」もまた重要なスキルの一つです。
時間をかけて経験の中で身につけていくこともできますが、書籍やセミナーを活用すればショートカットできます。
特に「契約」はご自分の仕事を守るために、「著作権」はご自分の制作物を守るために不可欠ですが、用語が難解で、理解するのに苦労される方も多いでしょう。
そこで、ここからは、「契約」や「著作権」を含め、事業運営に役立つ書籍やセミナーをご紹介していきます。
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JILLA(日本イラストレーション協会)編集によるハンドブック
イラストレーターに限らず、デザイナー、漫画家、アニメーター、編集者が加入できるJILLA(日本イラストレーション協会)の編集による『フリーランス法対応! クリエイターと取引先のための契約ハンドブック』が発行されました。
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次の内容をカバーした100ページの冊子です。
フリーランス法
契約
著作権
平易な語り口とやわらかいイラストで読みやすい冊子に仕上がっています。
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丸ごとPDFでダウンロードも可能です。
〈契約ハンドブックの付録〉
次の書式などを付録としてダウンロードできます。
外注取引基本契約書ひな型
取引条件確認書ひな型(簡易な契約書)
見積書ひな型
発注書ひな型
〈対面型研修会、オンライン型研修会〉
2025年2月、3月にはオンライン、および、広島、福岡、沖縄、岩手、北海道で対面型の研修会も予定されています。
ただ、ハンドブックを読むよりも、ずっと深く理解できることでしょう。
なお、オンライン型研修会はアーカイブが残るようです。
書籍三選
昨年(2024年)の10-12月に集中してリリースされた3冊を紹介します。
いずれも「イラストレーター」という切り口ですが、それ以外の職種の方、および、発注側にもオススメです!
1 | サタケシュンスケさんの書籍『イラストレーターのためのお金の話』
イラストレーターであるサタケシュンスケさんが『イラストレーターのためのお金の話』という書籍を2024年12月に発売されました。
この分野で、この手のものはなかったと評判で、早々に増刷がかかっています。
2 | 白ふくろう舎さんの書籍『絵で食べていきたい!-センスと才能に頼らない、イラストレーターの生き残り術』
「30歳で会社員からフリーランスのイラストレーターに転身」されたイラストレーター白ふくろう舎さんのキャリアや仕事術に関しての書籍。
赤裸々に書かれていて、没入してしまいます。
オンラインメディア「CORECOLOR〜コレカラ」での連載が書籍化されたものですので、どのような切り口で書かれているか、事前に確認できます。
3 | トラノスケさんの書籍『イラストを仕事にする方法 ストックイラスト&クライアントワークで稼ぐ70のコツ』
イラストやマンガ、図解が多く、とにかく読みやすい。
「お金を残す」ことは、また別のスキル
個人でも会社でも、事業を継続することは決して簡単ではありません。さらに、「お金を残す」という視点を加えると、事業運営や経営とは異なるスキルが求められます。
近年、「投資」への関心が高まっていますが、それ以前に、資金繰り(キャッシュフロー)の管理や税金との向き合い方が、事業や個人としてお金を残せるかどうかを大きく左右します。
小規模企業共済
「小規模企業共済」は、中小企業や個人事業主のための退職金制度として知られています。税制優遇を受けながら退職金を積み立てられる優れた制度です。
1,000円~7万円の範囲内で設定可能
掛金が全額、所得控除の対象になる
→ 年末調整や確定申告で所得を減らせるため、節税効果が高い貸付制度(事業資金や生活資金として貸付を受けることができる)
おつきあいのある税理士や、近くの信用金庫などが窓口になっていますので相談してみてください。