武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論2 第4回 川上元美 氏
20200608 川上元美 氏
1940年兵庫県生まれ。1966年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。1966年〜69年アンジェロ・マンジャロッティ建築事務所(ミラノ)勤務。1971年川上デザインルーム設立、現在に至る。
日常ワークとして、クラフト、プロダクト・デザイン、家具、空間、環境デザインなどの仕事を手がけている。また、各地方産業や人材の育成にも従事している。東京藝術大学、金沢美術工芸大学、多摩美術大学、神戸芸術工科大学等、客員教授歴任。
日本インテリア・デザイナー協会賞、アメリカ建築家協会(AIA)主催チェア・デザインコンペ1席、毎日デザイン賞、国井喜太郎産業工芸賞、土木学会・田中賞、IF賞、日本パッケージデザイン大賞、Gマーク金賞など受賞。(https://japan-designers.jp/profile/613/より)
1 作品の数々
講義の最初は、川上氏が今までに手掛けてきた作品の数々を紹介していただいた。作品は、食器などの日用品から椅子などの家具、大きなものだと橋など多岐に及んでいた。どれも見た目が美しいだけでなく、そのモノを中心とした空間がどうなるのかも意識してデザインされており、使う人や周りの環境などそのモノと関わるモノ全てを意識したデザインになっていた。また、時代が求めているニーズや最新の技術も取り入れられていた。
2 デザインへの哲学
とても美しい造形を生み出している川上氏のデザインであるが、講義の中で印象に残ったことがある。それは、「全部デザインの対象」と考えられていることだ。デザインの対象を限定せず、ものづくりから仕組み作りまで全てをデザインの対象と考えて作品を生み出す。徹底したデザインへのこだわり、デザインへの哲学が、作品に宿っている。デザインの対象が多岐にわたっている今日において、「全部デザインの対象」と考える視点はとても重要なものである。さまざまな立場、バックグラウンドをもっている人たちが集っているこの大学院の理念にも繋がるものだ。
3 まとめ・発想の源
素晴らしいデザインを生み出す川上氏の発想の源は、「いつも考えている」ことだと言う。そして、常に考え続けるだけでなく、「さまざまなことに興味をもち、自分の引き出しにチャージしていくこと」だと言う。好奇心をもって面白いものを貪欲に探し続ける。一種の遊び心やチャレンジ精神といったものも感じる。特に、学生時代に経験したさまざまなことが今のアイデアの糧になっているそうだ。一見、遠回りのようなものや関係のないようなものが芋づる式に繋がり、アイデアが閃くことがあるそうだ。ある意味、子どものように常に「なぜ?」と興味をもってやってみる精神が大切なのである。
このようなマインドは、教育の場でも共通することだ。さまざまなバックグラウンドをもち、個性が違う子どもたちに対して、不易と流行を見極めて、さまざまな方法をトライしていく。デザインの哲学と教育の哲学には、親和性があると感じているが、それを改めて実感する話であった。私自身も、いろいろなことに首を突っ込むことが好きで、意識的に仕事と関係ないことをやっていこうとしているが、忙しいとそういう余裕を無くし、常に近道を探してしまうことがある。そういったことが、自分のアイデアの体力を知らず知らずのうちに奪っていくことに繋がることを忘れないようにしたい。