武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論2 第2回 小川悠 氏

20200525 小川 悠 氏

一般社団法人i.club代表理事 / 東京大学 i.school アシスタント・ディレクター1988年横浜生まれ。2013年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。東日本大震災をきっかけに、地域における若者の地域離れを実感。その解決のための新たな仕組みづくりを教育と産業創出の掛け合わせを通じて目指すi.clubを2012年(2015年に一般社団法人化)に立ち上げ、統括する。2014年からは自身も修了した東京大学 i.schoolに教職員として携わるなど、高等教育と大学教育の両方から若者へのイノベーション教育の普及に従事する。(i.club公式ホームページよりhttp://innovationclub.jp/about/

1 i.clubとは

「地域の高校生にイノベーション教育を、地域の大人にイノベーションを。」をコンセプトに、2012年、小川氏が東日本大震災をきっかけに設立した。高校生へのイノベーション教育と、そこから生まれたアイデアの事業創出を大人と目指すことによって、地域がイノベーションを起こすキッカケをつくることを目指している。

地域の高校生や大人が、地域資源を活用したアイデアを生み出す力と地域への愛着、新しい価値を作るキッカケをつくることで、現在多くの地域の課題になっている「若者の地域離れ」と「地域産業の衰退」の解決を狙っている。例えば、地域の高校生が地域資源を活かした新たなアイデアを提案する教育プログラムを提供し、そのアイデアをキッカケに地域の大人と連携し、商品ブランドとして実現化させる。このような高校生からはじまる地域のイノベーションを支援している一般社団法人である。


2 「イノベーション」とは

小川氏は、イノベーションとは一言で言うと「未来をつくるアイデア」のことだと語る。具体的には、「人々の行動・習慣・価値観を変化させる新しいアイデアを生み出し、普及させ、新しい未来をつくること」である。

例として、「ジョセササイズ」というものを紹介してくれた。「ジョセササイズ」は、「除雪」×「エクササイズ」のことで、辛くてコストがかかる労働としての「除雪」を楽しく運動できる「エクササイズ」と捉えたもの。現在は、日本ジョセササイズ協会が誕生し、除雪が「辛い」ものから「楽しい」ものへ習慣・価値観を変化させた。


3 これからの時代に必要な力

小川氏は、「好きなことで生きていく」という言葉をあげた。言い換えると、「自分の旗を立てられる」ことである。そのためには、自分の“好き”から生まれる問いを立てられる「自分の旗をもつ力」と、自分がイノベーションを創造するという「だれもまだ立てていない場所に旗を立てる力」が必要だと言う。

「好きなことで生きる」と高校生に言うと、「できればそうしたいけど、それができるのは一部の人。自分にはできない。」という言葉が出るそうだ。自分自身も高校生時代にそう思っていたし、多くの大人もそう思ったことがあると思う。だが、その言葉の裏にある「できればそうしたい。」という気持ちに本気にアプローチしていくことがこれから必要な力であり、i.clubが追及していることである。


まとめ

小学校教員として働きながら、この大学院で学んでいる私にとって、ピンポイントなテーマであり、大変参考になった。特に印象に残ったのは、イノベーションの創出には、前提として「自己肯定感」が必要という言葉である。教職に関わる者は、日本の児童・生徒は諸外国に比べても自己肯定感が低いことが課題であり、自己肯定感を上げる為の取り組みを研究している人も多いと思う。スタートアップが活性化しない社会の背景には、起業家教育が未熟であることだけでなく、自己肯定感の低さも関連しているのかと、「教育」の課題と「イノベーション」の課題が繋がった。小川氏は、自身を「教育デザイナー」と称していたが、私も高校生の時に「未来教育クリエイター」というものを妄想したことがある。日本型の次世代の教育のビジョンを自分が語れるよう、私も自分自身の自己肯定感を向上させることにしたい。笑


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