武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第9回 吉泉聡 氏
20190904 吉泉聡氏
TAKT PROJECT株式会社代表。1981年山形県生まれ。東北大学工学部機械知能工学科卒業。エンジニアリングを学ぶ。桑沢デザイン研究所を経て、
2005年より2008年までデザインオフィスnendoに在籍。
2008年より2013年までヤマハ株式会社デザイン研究所に在籍
オーディオデザイングループにて、ゼネラルオーディオ、音楽制作機器等のデザインを担当
アドバンストデザイングループにて、アドバンストデザイン開発、2013年サンテティエンヌ国際デザインビエンナーレ等を担当
2013年TAKT PROJECT株式会社共同設立
2015年より愛知県立芸術大学 / 女子美術大学非常勤講師(〜2016年まで)
2016年より法政大学非常勤講師(〜2018年まで)
2018年よりグッドデザイン賞審査委員
(TAKT PROJECT公式HP http://www.taktproject.com/whoweareより引用)
1 TAKT PROJECT
吉泉氏が代表を務める「TAKT PROJECT」は、「想いを描き、想いをカタチに。」をテーマに、DESIGN THINK+DO TANKを大切にしています。
THINK=問題解決を超え、魅力的な提案を創造すること。DO=計画を超え、実現するための行動を大切にすること。を指し、デザインで想いを描き、デザインで想いを実現しています。(TAKT PROJECT 公式HPを参考)
2 「Design is to Cultivate」
吉泉氏の話のテーマは、「Design is to Cultivate」。まだ「言語化/定量化」できていない、弱い価値の可能性を、どう現代社会の中で強い価値と対等なものとして扱っていけるか?その方法がデザインだと考え、サポートではなくドライブするものとしてのデザインと考えている。
つまり、今までにない新たな価値は、まだ言語化できていなかったり、本当に価値があるものか定量化できていなかったりするもので、そんな「弱いもの」に「価値」があると認めなくては、新しい価値は生まれてこないということだ。社会では、最適設計からデザインへと考えられがちだが、この「弱い価値」を前提とした社会をつくることが大切であるという。
「弱い価値」が認めれると新しい価値軸がたくさんでき、多くの概念から価値を絞っていくことになり、その考え方がイノベーションになる。(100,000,000,000,000…から1を見つけるようなこと)
「直感」(おもしろいと思える気持ち)が定量的なものと同じ価値にすることで、「未来を耕すデザイン」が生まれるという。
3 CRAFTとMASS
吉泉氏は、「弱い価値」社会に提案するさまざまなプロジェクトを行っている。例えば、CRAFT(手作り)とMASS(大量生産)との間を埋めるようなものがないかと考え、水分を吸収するプラスチックを「MASS」、染色を「CRAFT」と捉え、水で染まるプラスチックで椅子(MASS)を作り、色水を自然に吸わせて(CRAFT)工芸感を表現した「Dye It Yourself+」というプロジェクトを行った。
これは、できたもの(完成形)をデザインしがちなプロダクトデザインを、「製品のあり方を提案する」ということを可視化させるデザインである。その他にも、素材と製品の境界を探る「コンポジションプロジェクト」や、人工と自然の境界を探る「glow=growプロジェクト」などが紹介された。
自然と対話する感覚で人工物を作れないか、制御する人工から自然と対話する人工へ。
人工⇆自然、均質⇆個性、制御⇆自立、完成⇆未完といったものの間を概念を変えていくことで見つける活動をされている。
まとめ
吉泉氏の話は、長谷川氏の「スペキュラティブデザイン」の要素があったり、グッドパッチの土屋氏の「逆張り」や、カヤックの柳澤氏の「文化をズラす」という考えに共通するエッセンスがあったように思った。
吉泉氏は、「直感に基づく混沌のマネージメント」の話で、子供のように遊んでみたり、いじってみたりする中で、「こんなおもしろいことができる!」という発見があると語っていた。
クリエイティブと教育について考えている私にとって、子ども時代にたくさんもっているクリエイティブな直感を大人になってもキープしていく方法はどうすればいいのだろうか、ということにも気になっていくお話だった。