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「20201115のこと」 (成田舞)

この日は産後初めてのゴミコロリの撮影だった。2ヶ月の赤子は佐武郎くんと家で過ごしてもらい、わたしの方に上の娘を配置したフォーメーションでやってみる。
はっきり言って頭の中は暗雲が立ち込めている。4歳の娘は公園や落ち葉に気を取られるだろう、大人と子供の体格差で1時間半くらい嫌がらず歩き回れるのか。車や自転車にぶつからないか気にしながら撮影に集中できるのか。うまく行く気がまったくしない。シャッターチャンスを逃しまくるかもしれない。でも実験だ。同じやり方でいつまでも写真を撮っていこうなんて無理なんだから色々試してみようと思う。


集合に少し遅れてE9に到着するとゴミブルーたちが楽屋にいた。スウィングの皆さんは娘に優しく話しかけてくれる。娘はすこし照れてモジモジしている。子供用の軍手を買う時間がなかったせいで、娘はゴミを見つける度に素手でガンガン拾っていく。それを見た沼田ブルーが「ああー!教えてくれればひろうからね〜!」と言ってくれるも、娘の拾い欲が止まらないので、ウンコ以外は仕方ないと腹を決めて拾う手を制止するのをやめる。タバコのフィルター(これがめちゃくちゃ落ちている)を拾った時には、「その手で目や口を触らないんだよ」と注意し「もうあとでめちゃくちゃ手を洗って消毒するしかない…」と心の中で不甲斐なく思う。

2時間近く歩き回りなんとか無事ゴミコロリが終わった…。汗をかくくらいいい天気で、外に飲み物を買いに行く沼田さんと増田さんに続いて娘のりんごジュースを買う。釣銭ランプが光っていて小銭を大量に投入する。あの小銭は私の後に買っていた沼田さんと増田さんの財布へと回っていったかもしれない。

午後からヤンさん(Books×Coffee Sol.)が行うゲリラ農業「耕す計画」の収穫祭にお邪魔する。ヤンさんと学生さんたちの手から育った芋を、何にもしていない私が娘まで連れてちゃっかりといただいていいのだろうか。娘と一緒に焼き芋が焼かれている様子を眺めながら思う。
子供が一人だけしかいないこの状況で、娘は動画と写真の両方のカメラマンから撮影されていた。撮影する人の気持ちも何となく想像できるので、娘には写真に写っていることが嫌じゃないかやんわり聞いてみる、大丈夫そう。それにしてもと我が身を振り返り、撮影っていうのはたとえ誰しもに許されていても写っている人やものから掠め取る行為だなとあらためて感じる。自分がしていることもいつもそうなんだ、と少し嫌気が差す。

ハルバンのお店の中で豚汁と焼き芋をいただく。ヤンさんのこの「耕す計画」では東九条のいくつかの空いている地面で作物を育てている。今食べている焼き芋は一体どこの地面で育ったんだろう。土と水と日光で食べられるものができて、しかもそれが美味しくて栄養があるなんて本当に奇妙で仕方がない。娘にうまいうまいと食べられて、わたしには少しだけ回ってくる芋よ、お世話になります。

近くで休憩している増田さんが「ゴミブルーの時はお酒は飲まない」と言う。仮面で覆われることが引き金になって、その人でありながら潜んでいた別の立ち位置の自分がひょっこり顔を出す。着ぐるみを着ると急にオープンマインドになる不思議な現象のことを思い出す。催眠術みたいだな。

2020年12月8日
成田舞

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